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( ^ω^)ヴィップワースのようです 第0話(1) 「出会いの酒場」

14以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:26:56 ID:iULO39J.0

   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

           第0話(1)

          「出会いの酒場」

15以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:27:39 ID:iULO39J.0

ここでは、”聖ラウンジ”の教えが広まり、その統治下に置かれている。
呼び名を交易都市”ヴィップ”、近年急速に拡大してきた新興都市だ。

多くの商業施設では、冒険者や魔術師達に、果ては、聖ラウンジお抱えの騎士団の姿も見られる。

それというのも、同じ職を生業とする者達で助け合いながら、
仕事を斡旋する共同体、”ギルド”が多種多様に存在しているのが理由だ。

魔術師達にとっては己の研究を広め、研鑽を積むもの同士で情報を共有しあう場。
その一方では、主に戦ごとに用いられる傭兵斡旋所や、盗賊ギルドなどもあり、
表だってこそないが、やはり街が大きいほどに、日陰に生きる者も多分に存在する。

だが、大陸の中心に位置し、貧民層から富裕層までの多くの人々が住み暮らす
この街は、今や行き交う商人達にとっても決して素通り出来ない場所だ。

その広大な敷地を誇る街の入り口の立て看板の前で、青年は一人、肩を落としていた。

(   ω )「はぁ…なけなしの50spを落とすとは、ツイてないお…」

ずた袋を背負い、決して傍目からは小奇麗とは言いがたい服装。
とぼとぼと歩く後姿には哀愁を誘うものがあった。

ただ、その背中に背負う一振りの長剣だけは光り輝いて見える。
業物の装飾を施した鞘に納まり、彼自身とは見合わぬ程だ。

16以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:28:11 ID:iULO39J.0

みすぼらしい服装や、生々しい擦り傷の数々。周囲の人々には
かなりの長旅を経てこの場所へ辿り着いたのだと思わせる事だろう。

だが、肩を落としながらでも彼の足取りは一歩一歩が力強く、
疲れなど感じさせない。その一挙手一足は、それなりの場数を
踏み越えてきたであろう、戦士としてのものによく似ていた。

この大陸では、貴族や商人などといった身分の住み分けこそあれど、
それぞれの人々は安定した暮らしを築く為、日々を精一杯仕事に打ち込んでいる。

だが、自由の風に吹かれて生きる事を目標とする者は、非常に多い。

────それが、彼のような冒険者という人種。

冒険者というのは、取るにも足らない雑用から、揉め事の仲介、遺失物の探索など、
それら”冒険者宿”で張り出されている依頼を受け、日銭を稼ぐ人々の事。

腕利きの冒険者ならば、時に騎士団や領主直々に破格の報酬を与えられることもある。

だが、高額の依頼になれば当然、危険な依頼も多い。
そんな中で金や名誉を急く、経験の浅い駆け出しの若者達の大半は、
志半ばで命を落とす人間ばかりといっても過言ではないだろう。

17以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:28:36 ID:iULO39J.0

彼らの中での冒険の目標は、この大陸の未開の地が踏破される度、常に移り変わる。

ある者は、伝説と語り継がれる秘宝を手に入れ、莫大な富をその手にした識者。
また、ある者は精鋭の騎士団を幾度駆り出して討伐しようとも倒せなかった魔物を、
たった一人で倒したという猛者。

冒険者達は、そうして聞こえてくる風の噂に、一抹の思いを馳せる。
ある者は名誉のため、またある者は、知識の探求に明け暮れて。

大陸全土において、日々冒険者を志して行動し始める者は後を絶たないのである。

やがて、一軒の宿の前で、彼の足は止まった。
木製の看板には、書き殴ったような筆記体でこう書かれていた。

─────「”失われた楽園亭”」─────

酒や食事を提供し、各地方からの依頼ごと扱う、いわゆる”冒険者宿”だ。

このヴィップの街がまだ今のように栄える前から、この場所に建てられた。
一見して作りは小汚いが、ヴィップでは腕利きの冒険者達がよく立ち寄ると評判の、
良質な冒険者宿として繁盛している。

だが、そんな事も知らない若者は、看板を見ながら一人呟く。

(   ω )「何とも、キザったらしい名前だおね…」

使い込まれた木扉を押して中に入ると、その瞬間に活気が溢れて来た。
まだ日も高い内から、それぞれの卓では酒盛りがなされ、賑わっている。

18以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:28:56 ID:iULO39J.0

(’e’)「───いらっしゃい」

マスターが一瞬入り口の方を一瞥する。

彼が一見の客である事、それに、風貌から冒険者である事。
それらの確認をまばたき数度の内に終えると、また少し俯き加減に
エールグラスを磨きながら、酒盛りをしている冒険者達と談笑に戻った。

マスター同様に、店の娘も一瞬だけマスターの方をちらりと見たが、
彼が談笑に戻ったのを見て、若者の元へと駆け寄ると、注文を尋ねる。

ζ(゚ー゚*ζ「いらっしゃいませ!…ご注文は?」

そんなやりとりに気づく節も無く、若者はただ壁面に
びっしりと散りばめられた、様々な依頼の文字を追っていた所だ。

そこへ突然後ろから注文を聞かれると、驚き、振り返った。


( ;^ω^)「あ───申し訳ないんだお、その……」

「今日は持ち合わせがないので……依頼だけ……」

ζ(゚ー゚ ;ζ「え?」

その言葉に、周りに居た冒険者と思しき人間達は、
彼らの方へと振り返った。突然多数の視線に晒されて、
若者は少しばかり目が泳いでしまっている。

19以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:32:26 ID:iULO39J.0

こういった冒険者宿では、張り出した依頼を閲覧する際に、
飲み物の一杯も頼むのが冒険者同士では暗黙の掟というものなのだ。

もちろん、気恥ずかしそうにするその態度から、彼がこういった
”常識”を疎んじていたという訳でも、なさそうだったが。

店の娘も困惑気味だったが、気まずい空気は一人の男性客によって破られる。
  _
( ゚∀゚)「小僧」

エールグラス片手にカウンターでマスターと談笑を続けていた男。
その彼が、突然若者の方を振り向いて一言漏らした。

彼の物と思しき灼熱色の軽甲冑は傍らに脱ぎ捨てられ、
浅黒い肌に映える爛々と輝く青い瞳は、真っ直ぐに彼の瞳を射抜く。

自分よりふたまわりも年長者である雰囲気だが、その顔立ちは端正に整ったものだった。

(;^ω^)「?」
  _
( ゚∀゚)「俺のオゴリだ。そこに座って、一杯飲み干してからじっくりと選びな」

そう言って身の丈ほどの大剣を背にした小柄な男は、言われた通り席に腰掛けた彼の前へ、
なみなみと注がれた一杯のエールを滑らせた───ピタリと、彼の目の前で止まる。

20以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:33:11 ID:iULO39J.0

「ははッ、ジョルジュの旦那らしいぜ」

「まぁ……俺らもあいつくらいの時分にゃよぉ……」

お辞儀をしてカウンターの奥へと去ってゆく店娘の背中を見送ると、
目の前のエールグラスを手に取り、ちびり、とグラスの端を口につけた。

(  ^ω^)「あの……」
  _
( ゚∀゚)「礼ならいらねぇ、高々銀貨1枚の酒だ」

(  ^ω^)「……いや、ありがとうございますお」
 _
( ゚∀゚)「お前、冒険者か?」

(  ^ω^)「まだ駆け出しですが、お……自分は」

名乗ろうとした矢先、彼はは手でそれを跳ね除けるようにして、紡ごうとした言葉を振り払う。
どうでもいい、とばかりに苦々しい表情で。
 _
( ゚∀゚)「名前なんか聞きたくもねぇよ……駆け出しの名前なんか聞いても、
     季節が移り変わる頃には、どうせ土の下で眠ってる奴ばっかりだからな」

( ;^ω^)「お…」
 _
( ゚∀゚)「俺と酒を酌み交わした帰り道の数刻後…ってやつもいたさ。
    酔っ払ってたばかりに夜盗どもに襲われて、ぽっくりとな」

( ;^ω^)「はぁ……ですお」
  _
( ゚∀゚)「んで、お前はどっから来た?」

21以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:34:08 ID:iULO39J.0

(  ^ω^)「……ここからずっとずっと西の、田舎の農村ですお。
      多分名前を言っても誰も思い当たらないほどの」
 _
( ゚∀゚)「サルダか……あそこは僻地だが、のどかで人も良かった」

(  ^ω^)「行った事があるんですかおっ?」
 _
( ゚∀゚)「まだまだ大陸も未開の地は多いが、お前なんかより
    万里はあっちこっち旅してるさ。なめんじゃねぇ」

(  ^ω^)「……ですお」
 _
( ゚∀゚)「俺は、いつかある竜を仕留める為に旅を続けてる」

( ;^ω^)「ドラゴン…ですかお?あれは、人の手に負えるものじゃ…」

ほんのりと酒が回ってきたのか、はたまた、ただの気まぐれなのか。
ジョルジュと呼ばれた男は、また新たに運ばれてきたエールグラスを呷りながら、
一人語知るように語り始めた。

22以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:35:36 ID:iULO39J.0
 _
( ゚∀゚)「…まぁ、こいつはただの昔話なんだがな。かれこれ、15年も前の話になるか…
    奴がねぐらにしていた山の、とある麓の村が襲われたんだ」

 _
( ゚∀゚)「当時その地を治めていた坊ちゃん領主が、手柄を立てたいと思ったんだろうよ。
    突ついちゃいけねぇ奴の腹元を突いて、逆鱗に触れちまったのさ」
 _
( ゚∀゚)「50人以上からなる騎士団は壊滅…命からがら帰って来たのは、
    気が狂った奴か、もう生きてる方が辛い風体の奴ばかりだった」
 _
( ゚∀゚)「その翌日だよ。腹の虫が収まらなかったそいつが、麓の村の人間を皆殺しにしたのは」

(  ^ω^)「………」
 _
( ゚∀゚)「女、子供、老人…皆食い散らかされるか、奴のブレスで焼き殺されたさ」
  _
( ゚∀゚)「───今はねぐらを変えて、どこに身を潜めてるんだかな……」

そう言って、遠くを眺めるような瞳で、ジョルジュという男はエールグラスの底に残った
琥珀色の液体を揺らしながら眺めていた。押し黙りその様子を見ていた若者は、そっと尋ねる。

(  ^ω^)「ジョルジュさんは………ご家族をそいつに?」

23以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:36:45 ID:iULO39J.0

若者の方を振り向くともせず、エールを一気にあおり、グラスをそっと置いた。
相当量の酒を飲んでいるであろう事は窺えるが、その横顔は、酒に呑まれている様子はない。
  _
( ゚∀゚)「…ま、昔の話よ。期待したほど面白くもねぇだろ」

(  ^ω^)「………いや」
  _
( ゚∀゚)「”邪龍ファフニール”…500年以上も生きてるっつぅ、怪物よ」

( ;^ω^)「!…ファフニールと言えば自分の住んでた片田舎でも、噂くらいは聞いた事がありますお」
  _
( ゚∀゚)「どんなだ?」

(  ^ω^)「生きる伝説。数百年を生きる竜は、人語すら理解する知恵を持って…」
  _
( ゚∀゚)「……ハハハッ!」

若者が言葉を続けようとしたところで、それを聞いたジョルジュはカウンターを
ばんばんと叩きながら、どこか自嘲気味に笑うかのような仕草を見せた。
  _
( ゚∀゚)「どいつもこいつも、”ドラゴン”ってバケモンがよっぽど高尚で、お上品な存在だと口を揃えやがる」

24以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:37:40 ID:iULO39J.0

(  ^ω^)「確かに、数百年を永らえる知恵とその力から、龍たちは絶対的強者ですお」
  _
( ゚∀゚)「絶対的強者ねぇ……そいつぁいいや」
  _
( ゚∀゚)「いいか、若造……俺はな。俺の身内を、何の感情も無く旨そうに喰らってやがるあいつの姿を見た。
    その時はまだフヌケたガキだった俺は、小便も大便も漏らして、ただ震えていたさ」

(  ^ω^)「………」
  _
( ゚∀゚)「人間を食い散らかし、本能のままに殺す必要の無い命を奪っていきやがった。
    俺から言わせれば、奴らも、ゴブリンも、豚オーク共も」

「何の変わりはねぇ、ただの化けもんだ」

そういって、何口目かでグラスを満たしていたエールは底を突いた。
一つ大きなため息をついてから、ジョルジュという男は甲冑を着込み、身支度を始める。

(’e’)「今夜は、泊まっていかないのかい?」
  _
( ゚∀゚)「悪ぃなマスター。次の依頼がまたでかいヤマでな…その下準備があるのさ」

(’e’)「それなら……次は、上等な酒を用意して待ってるさ」

実に手馴れた動作で、甲冑を着込み、使い込んだ手甲の紐を歯を使い器用に縛る。
その一連の動作を終え、男が宿を後にしようとしたところで、若者はその背中に声を掛けた。

25以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:38:52 ID:iULO39J.0

(  ^ω^)「あのっ」
  _
( ゚∀゚)「あ?」

(  ^ω^)「エール、本当にありがとうございましたお」
  _
( ゚∀゚)「…チッ、調子狂うぜ」

家族をドラゴンに殺され、その仇討ちをするために旅をする冒険者。
その去り行く背中を最後まで見送ると、若者もまた席を立った。

壁面を飾る依頼状へ、再びじっくりと目を走らせる。

(  ^ω^) 「依頼は……この辺がいいかおね」

そこから剥ぎ取った依頼書を手に、おずおずとマスターの元へと差し出した。
そこに書かれていた依頼は”ゴブリン退治”というものだ。

(’e’)「おっ、依頼かい。どれどれ……」

差し出された依頼書の内容を確認しながら、それを差し出してきた駆け出しの姿をちらりと見る。

(’e’)「……ゴブリンといえど、油断はできんぞ。
    ましてや、それが駆け出しならよっぽどな」

26以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:39:49 ID:iULO39J.0

(  ^ω^) 「わかってますお。僕も、死ぬつもりはないですからお」

言って、背中の鞘へと収まった長剣の刀身を少しだけ抜き出すと、
半身になってマスターへと見せた。すぐにぱちんと鞘へと収めたが、
朝露さえも断ち切れそうな程の切れ味は、輝きからも見て取れる。

(’e’)「冒険者としてはどうだか知らないが、そっちの方は達者そうだな」

(  ^ω^)「ありがたいけど、ご心配には及ばないと思いますお」

「────ま、悪くないか」

冒険者宿を切り盛りするマスターともなれば、駆け出しから熟練まで
多数の冒険者達の顔を嫌でも覚えてしまうものだ。

しかし、長く付き合いを続けていける人間など、その一握りに満たない。

多くの人間は命を落としたり、怪我や病気で足を洗う人間などが大多数なのだ。
そんな中で、この”失われた楽園亭”のマスターは、依頼を受諾しようとする
冒険者の力量を判断し、相応しくないと判断した場合には断る事もある。

一部からは”融通の利かない偏屈親父”として有名だった。

が、それというのもかつて冒険者を志して旅に出たという息子が、
若くして命を落としたという事実から来ているのだろう。

27以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:40:25 ID:iULO39J.0

その人柄の良さと料理の旨さ、また、店娘の愛嬌もあいまって、
この冒険者宿は日々繁盛しているのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「はーい!ただいまお持ちしますからね~!」

慌しく働く店の娘を見やりながら、依頼書に自分のサインを記すと、
マスターはそれを再びこちらへと返し渡そうとした。

(’e’)「…そういや、お前さんの名前が要るな。教えてくれるか?」

(  ^ω^)「ブーン、”ブーン=フリオニール”ですお」

(’e’)(フリオニールという名……はて、どこかで……)

(’e’)「ま、いいか……明日の朝ここを出て、東のリュメで依頼人に会うんだ」

( ^ω^)「分かりましたお」

(’e’)「そのナリじゃ、どうせ無一文だろう?お代はツケといてやるから、
    今日は2階の空いてる部屋を寝床に使いな。ベッドはないがな」

(  ^ω^)「!……ありがとうござい───あ」

(’e’)「ん?他に情報が必要か?」

28以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:41:52 ID:iULO39J.0

( ;^ω^)「ば……晩メシの方は……お召し上がれますかお……?」

(’e’)「……ハハッ、何かと思えばそんな事かい。
    心配すんな、今晩も明日の朝も、腕によりをかけてやるさ」

( *^ω^)「あ……ありがとうございますだおぉッ!」

腹の虫を大きく鳴らせながら、今晩の食事に思いを馳せ、喜びを露わにする。
これから歩む、冒険者としての道────その、第一歩を踏み出した。

”ブーン=フリオニール”、彼が何故旅をするのか、今はまだ誰も知らない。

(  ^ω^)「(一先ずはこれが───最初の一歩、だおね)」

その理由は、いずれ彼自身の口から語られる時が来るかも知れない。

29以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 01:44:04 ID:iULO39J.0

   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

            第0話(1)

          「出会いの酒場」


             ─了─


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