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( ^ω^)ヴィップワースのようです 幕間 「語り継ぐもの(1)」

943名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:08:28 ID:mdK0uiGI0


薬草に、毒消しのコカの葉。

一際効果の高い急場を凌ぐためのカタンで取れた高級薬草、こいつはとっておきだ。
衝撃を与えないよう気を遣って、小瓶の中で冷却水に沈めた火晶石も持って行く。

それら冒険に必要な道具を手馴れた手付きで選別しながら詰めていくと、すぐに大きな麻袋は満たされた。


( ФωФ)「ふむ、こんなもんであろう」


それはまだ、ブーンがこの世に生を受けるよりも前の話だった。


流浪の冒険者、”ロマネスク=フリオニール”
一部の人々からは未だに英雄との呼び声高い彼の、人には知られぬ物語────

944名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:11:47 ID:mdK0uiGI0




   ( ^ω^)ヴィップワースのようです
          累計20話記念

             幕間

         「語り継ぐもの(1)」


.

945名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:12:54 ID:mdK0uiGI0

( ФωФ)「長い旅になるかも知れないのである」

「えぇ、その頃には───」


身支度を整えた彼は、共に連れ立ってやれない妻の腹を優しくさすりながら言った。


( ФωФ)「息子がもうじき生まれるというのに、不甲斐ない父親よな……」

「ううん、そんな事ないわ……だって」

( ФωФ)「?」

「もうこの子ったら、お腹の中で暴れてるのよ───あなたと一緒に冒険に出たいって、言ってるみたい」


妻が口にするのは、男である彼には決して共有できない感覚。
両親共が居ないのであれば不憫な事だが、しかし母親さえ傍らにいればいい、と思った。

946名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:14:39 ID:mdK0uiGI0

必ず我が子の顔を見に帰って来る。
そうして約束の口づけを軽く交わした後に、去り際を名残惜しそうに振り返った。


( ФωФ)「………どうか、身体に障る事だけはするのでないぞ」

「……えぇ。あなたも、お気をつけて」

( ФωФ)「じゃあ、行ってくるのである」

「いってらっしゃい、あなた」


大陸西部、その山あいの奥まった場所でひっそりと暮らす人々。
サルダの村───それが、素朴な冒険者”ロマネスク=フリオニール”の生まれ故郷でもあった。

彼は村人の誰に対しても優しく労わり、だが一方では、不正や悪を許さない───そんな正義感を宿す人柄。

947名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:17:27 ID:mdK0uiGI0

村人は皆同い年であっても包容力や決断力のあるロマネスクを誰よりも頼りとし、彼に言い寄る娘も多かった。

だが、彼は幼い頃から向かいの家に住んでいた、一つだけ年上の女性に惹かれた。
外の椅子に腰掛けては、いつも決まった時間に本を読む彼女の表情。

その穏やかな横顔に見入っていたロマネスクに、彼女はいつもにこやかな笑みを返してくれた。
ある日思い立って彼女に想いを告げると───やがて二人は、恋仲へと落ちたのだ。

直に、息子も生まれる。
今彼女のお腹は、目にも分かる程大きくなっていた。

だがそんな妻と息子を置いてまで、ロマネスクはこうして旅立たなければいけなかった。

純朴な生活を送っていた彼に取って、選ぶ依頼はどれも高額なものはないが、生活にはなんら問題ない。
手際の良さだけでなく、時に外敵と対峙した時にも恵まれた体格から、それら万難を難無く排した。

派手さは無いが、無欲ゆえに知られていなかった彼の力だが、この時はある人物からそれが必要とされていたのだった。

948名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:18:37 ID:mdK0uiGI0


ロマネスクがサルダを出立して、それからおおよそ六日が過ぎた。


──交易都市ヴィップ──


豪壮な造りの中庭を抜けて、厳粛な雰囲気が漂う円卓騎士団本営の会議室へと通される。
その名の通り、広大な部屋の中には団員数十名が腰掛けられるだけの、大きな円卓が鎮座していた。

('_L')「団長共々、お待ちしておりました」

( ФωФ)「倅か……」

「よく来てくれたな、ロマネスク」

( ФωФ)「お前の頼みでなければ、来なかったである」

「……無茶を言って、すまなかったな」

949名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:19:42 ID:mdK0uiGI0

”セシル=エルメネジルド”

時の円卓騎士団長である彼にこうして対等に口を利ける男は、当時の領主にしても数少ない。
それほどの輝かしい功績をこの交易都市にもたらしてきた彼は、ロマネスクとは旧知の仲にあった。

旅の途中突然の病魔に蝕まれたセシルを、ロマネスクが一晩を背負って近隣の街医者へと送り届けた、というのが縁らしい。
だが、素朴な冒険者であるはずの彼がこうして一目を置かれるのは、それだけが理由ではなかった。

決して高名という訳ではない───だが彼の助言、そして行動は、
時として困難に直面するこの円卓騎士団の中に、これまでの間確かな実績を残してきたのだ。

それゆえ団員の間では、”謎の実力者”、”西の冒険者”などと二つ名に囁かれる事もあった。


そうして、今回もセシルら円卓騎士団が抱えた問題が、ロマネスクにも伝えられる。

950名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:20:53 ID:mdK0uiGI0


( ФωФ)「────若竜」


「そう、どうやらヒガン鍾乳洞のどこかに巣食っているらしいのだ」


龍と言えば、翼を持ち、火を噴く。
伝説の中に生きる存在とまで称えられる力を持つ、悠久の存在。

セシルの話によれば、齢数十程度のその若龍が北方のヒガン洞穴を抜けた先の地下鍾乳洞から、
度々飛び立つ姿があったという目撃証言があり、それが近隣の村人達から寄せられていたらしい。


( '_L')「ならば、すぐに討伐隊を編成しましょう!父上、私も出ます!」

「急くなフィレンクト───そしてここでは、団長と呼べと言ったはずだ」

951名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:21:40 ID:mdK0uiGI0

(;'_L')「あ……はッ、申し訳ございません!ですが……」

再び息子を叱りつけようとしたセシルを遮って、ロマネスクが代わりに彼を諭した。

( ФωФ)「勇むのは良いがな……倅よ」

(;'_L')「はっ!」

( ФωФ)「龍との戦いは、国を挙げての戦争となんら変わらぬ規模のものになる」

( ФωФ)「それに一体……どれほどの犠牲を伴うか、想像は付くのであるか?」

( '_L')「!……それは……恐らく、計り知れないと思います……」

( ФωФ)「そう───龍との戦いに命を落とせば、残された家族とて悲しむのであるぞ?」

( _L )「!」

952名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:22:34 ID:mdK0uiGI0

('_L')「……軽率にして、出すぎた発言───心より、恥じるべきものとします」

( ФωФ)「ふふん。良いのである、その歳にしてそんな言葉を口に出来る辺り
       ───将来はセシルが隠居しても安心であるな?」


「……すまんな、ロマネスク」


内心には、セシルの息子フィレンクトの出来の良さに、ロマネスクも驚きを隠せなかった。
齢10やそこらの子供が国を想うが故に勇み、そして親しい誰かを失う事への痛みも重々理解出来ている。

”ブーン”と名付ける予定のまだ顔も分からない我が子は、これほどまでに立派に育ってくれるだろうかと、
もしくれなかったら、その時成長したフィレンクトに会わせる顔がないな、などと思いながら、頭をぽりぽりと掻いた。

953名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:23:44 ID:mdK0uiGI0

( ФωФ)「さて───討伐隊を編成するのも反対ではないのであるが……」

「あぁ。若竜の生息数が分からなければ、それに対する手を打つのも難しい」

( '_L')「まずは、調査が必要という訳ですね?」

( ФωФ)「その通り……それに何名を割くのか、誰を送るのか、の二つが次の議題であるな」

「若竜が何度も飛び立っているとなれば、恐らくはそこを巣としていると考えるのが妥当だが……」

( ФωФ)「繁殖期───などといった事も、考えられる事は出来るのではないか?」

(;'_L')「繁殖するのですか……!我々の街からほど近い、あの北方の鍾乳洞で……」

( ФωФ)「ま、まだそうと決まった訳ではないのであるが────どうする?」

「む………」

いつの間にか会議の流れを、その主導権を握っていたロマネスクが、セシルに問うた。
恐らく彼が、ロマネスク一人に対してその大役を預けるであろうという事も見据えた上で。

954名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:24:45 ID:mdK0uiGI0

( '_L')「団長……ここはやはり少数の精鋭を……!」

( ФωФ)(やはり倅は好判断であるな)

「それならば───一人適役が居る」

( '_L')「それは、誰です?」

「ロマネスク、頼めるか?」

( ФωФ)「ま、頼まれてやるのである」

(;'_L')「ロ、ロマネスク殿一人をそんな危険な目に遭わせるなどと、父上!」

「………」

(;'_L')「あ、す、すいません……団長」

父の厳しい視線が冷たくフィレンクトを打ち据える中、ロマネスクはあっけらかんとしたものだ。

955名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:25:33 ID:mdK0uiGI0

( ФωФ)「ま、倅よ。その気持ちだけ、ありがたく受け取っておくのである」

「ロマネスクの実力を見くびるな───彼の資質は、今の騎士団の中でも誰より秀でている」

(;ФωФ)「それは買い被りであるぞ」

「彼を目標としろ───フィレンクト」

('_L')「……ハッ!団長!」


父であるセシルの言葉に身を身を固くしたフィレンクトが見つめる視線を、
ロマネスクは照れくさそうに受け流しながら、またぽりぽりと顎を掻いていた。

─────

──────────


───────────────





──冒険者宿 失われた楽園亭───

956名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:31:25 ID:mdK0uiGI0

( ФωФ)「邪魔するのである」

( ゚∋゚)「………」


ロマネスク自身、幼い頃から何度か父に連れられてこの交易都市に来た事はある。
その頃にはまだこれほど栄えては居なかったが、まだまだこの場所には沢山の人が集まってくるだろうと思う。

何故ならば大陸の中央部に位置し、道行く者たちにとっては非常に利便性の高い街だからだ。
そのヴィップの中でも、古参の冒険者が集まるこの宿の店主はとても人当たりが良く、繁盛している。

今日宿の店番を任されているのは、まだ若い息子のようだ。
父親とは対照的にとても寡黙な青年ではあるが、年齢に見合わぬ実に良い体格をしている。

席に着くなり、まずは一杯のエールが振舞われた。


( ФωФ)(龍───か)

957名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:32:47 ID:mdK0uiGI0

子供の頃は、その孤高の存在に憧れたものだ。
学者たちによれば、この大陸で生まれて成竜にまでなれるのは、年に一やニとも囁かれている。

それゆえ絶滅の危機に瀕していると聞いた事はあったが、所詮は人間の勝手な解釈だ。

”竜”は今もどこかでひっそりと人間には知られる事も無く生まれては───
やがて人の力など及ばぬ存在、”龍”へと成長していくのだと思う。

ロマネスクは、そんな龍というものの存在が今でも嫌いでは無かった。


不意に、声がする。

「おう、チビ!そんな粗末なもんブラ下げてどこ行こうってんだ?」

( ФωФ)「……?」


振り返れば「がはは」と指を刺して笑う冒険者の前に、青年というには未だ幼い子供が居た。

958名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:37:23 ID:mdK0uiGI0

(#゚∀゚)「うるせぇな、俺はチビじゃねぇ!」


髭を蓄えた荒くれ者の冒険者の前であっても、少年は怯む事なく言葉を返す。

綺麗とはいえない身なりに背負っているのは、太い木の枝を切り出したかのような、木剣だろうか。
依頼が張り出された壁の前に立つ少年の視界を遮りながら、酒の入った冒険者は彼の額を軽く小突いた。

「ここはお前みてぇなガキが来るとこじゃねぇ。酒も頼めないんなら大人しく家に帰ぇんな、小僧」

(#゚∀゚)「ガキでもねぇ! それに────」

( ФωФ)「………」

視線を送っていたロマネスクが、酒に顔を赤くしたその男を止めようか、
そう思案して席を立とうとしていた時に、少年が叫んだ。

(# ∀ )「……家なんか、ねぇよ!」

また大声で笑おうとした冒険者の表情が、少年の言葉にぴたりと動きを止めた。

959名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:38:33 ID:mdK0uiGI0

「あぁ、そうかい」

なら好きにしな、とでも言うように、山子のような冒険者は彼をからかうのを止め、
2階の寝室へと階段を軋ませながら上がって行った。

(  ∀ )「……くっ、ちくしょうっ」

( ゚∋゚)「………」

店主の息子は少しだけ不憫そうに、肩を落としてその場に悔し涙を零した少年へと視線を送っていた。


( ФωФ)「葡萄酒を、一杯」

戦災孤児か、はたまた両親共が山賊にでも襲われたか。
今の世ではそう珍しい事ではないが───彼のようにたった一人で生きていこうとするのは、至難の業だろう。

人は”龍”のように誰にも頼らず生きていける程、孤独に強い生き物ではないのだから。

960名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:39:58 ID:mdK0uiGI0

( ゚∋゚)「………」

マスターがグラスに注いでくれた紫草の根の色に似た液体。
それを受け取ると、ロマネスクはそのグラスをカウンターの縁へとつぅっと滑らせた。

目元を拭っていた少年に、声を掛ける。

( ФωФ)「飲め、坊主」

(;゚∀゚)「……?」

( ФωФ)「こういう所ではな、まずは依頼を選ぶ前に酒を注文するのが慣わしだ」

( ゚∀゚)「そう、なのか……」

住める家も無く、恐らくは頼れる人もいない中を、少年は一人で必死に生きようとしているのだろう。
ロマネスク自身も誰かの人生を背負ってやれる程に広い懐ではないが、こうして手助けぐらいはしてやろうと思った。

冒険者を志そうとしている、その道ではまだ新緑の若葉のような少年に対して。

961名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:41:43 ID:mdK0uiGI0

( ゚∀゚)「でも俺……金はない」

( ФωФ)「ふんっ、見くびるな。坊主に奢ってやれるぐらいの蓄えはあるのである」

そういうと、小汚い身なりの少年はおずおずとカウンターに着くと、グラスの端に口を付ける。
見れば、セシルの倅のフィレンクトとさほど歳も変わらぬような横顔だった。

彼が置かれた境遇は、誰かの庇護を受けるそれと比べては、非常に酷なものなのだろうが。

( ФωФ)「やってみろ。まろやかな口当たりで、坊主にも飲みやすいはずであるぞ?」

( ゚∀゚)「………ふーん」

ふんふん、と匂いを嗅いだ後。
少年は思い切ってそれを一気に口の中に流し込んだ。


(;ФωФ)「あっ、こら……」

ごっきゅっごっきゅっ

962名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:43:05 ID:mdK0uiGI0

”たんっ”


( *゚∀゚)「───ぷハァッ!美味い、これ美味いな!」

( ゚∋゚)「……ふっ」

先ほどまでのしょぼくれ具合はどこへやら。
あるいは、長旅に乾いた喉が潤いで満たされたのか。

途端に年の頃にあった反応が返ってきて、マスターの息子がぽつりと笑みを漏らした。

( ФωФ)「さ、お前にあった依頼をそこから選ぶといい」

そう言うと、少年は壁面へと振り返ってから、一度考え込んだ。
やがてゆっくりと口を開いた少年の口から、奇妙な縁が口にされた。

( *゚∀゚)「………俺、龍を倒したい」

( ФωФ)「………ほう」

蛮勇、自らの身の丈を知らず、地位や名誉への欲に駆られるままの冒険者。
そんな風に育っていく者達も多いが、どうやら少年は聡明だった。

963名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:44:42 ID:mdK0uiGI0

( * ∀ )「けど、今の俺じゃ絶対無理なんだ───おっさん。今の俺に出来る依頼って、どんなのかな?」

(;ФωФ)「おっさ……」

( ゚∋゚)「───くくッ」

マスターの息子がまた笑った。
見れば笑いを堪えているようだった。

腑には落ちないが、自分に多少の信頼を寄せて疑問を投げかけた少年に対して言葉を返す。


( ФωФ)「薬草取りの依頼なんかが、良いのであるな」

( * ∀ )「………」


席を立ちながら言ったロマネスクの姿を目で追いながら、少年はまた壁面へと目をやった。

964名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:46:46 ID:mdK0uiGI0

しばらくは日銭を稼ぎながらのその日暮らしが続くであろう。
だが、命の危険を冒すような依頼はまだ早い。

大望を持つならば、しっかりと基本を押さえながら、地道に実力を付けていかなければ。

誰にも手を付けられていなかったのだろうその紙には、薄らと埃が溜まっていた。
”足を悪くして近場の薬草を取りに行けない”という旨の依頼状を、そのまま少年に預ける。


( ФωФ)「名うての冒険者になろうと思えば、近道などないのであるぞ?」

(  ∀ )「………ありがと、おっさん」


その手に依頼状を握り締めると、安堵感からか席から崩れ落ちそうになった少年の身を、はしっと支える。
この楽園亭に辿り着くまでに、相当の疲労で神経も張り詰めていたのだろう。

そこへ来て一気飲みした葡萄酒が、少年を眠りへと誘ったようだ。

965名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:48:44 ID:mdK0uiGI0

ひょい、と少年を抱き上げると、その姿に笑いを堪えるマスターの息子に声を掛ける。

( ФωФ)「明日にでも、良かったら口利きしてやって欲しいのである」

( ゚∋゚)「……いいさ。今客は皆出払ってる───空いてる部屋に寝かせてやりな」

( ФωФ)「……だそうだ。感謝するのであるぞ、坊主」


自分もいささか歳を取ったのだろうか。
はたまた、子を持つ親としての父性というものなのだろうか。

深入りしてしまう自分の性分を反省しながら、まだ幼い寝顔に声を掛けた。


(  ∀ )クー クー


明日、自分はいつものように依頼へと発つ。
少年の寝顔が眼に焼きつき、どうやら今夜は故郷へ残して来た妻の顔が夢にまで出そうだ。

966名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:50:20 ID:mdK0uiGI0

少年に広い背中を貸して2階の宿へ運ぶ最中、少年はうわ言のように呟いた。


「ん……ねぇ、ちゃん……」

( ФωФ)「………」


龍を倒したいという少年の夢は、仇討ちなのであろうか。
常に歴史の影でひっそりと生きてきた龍への想いは、きっと人の数だけあろう。


憎むもの、憧れるもの。
恐怖するもの、称えるもの。


この大陸の長い歴史を語り継げるだけの寿命を宿す彼ら龍族は、
時に神聖な護り手でありながら、時に無慈悲な破壊者でもある。

自分がこれから向かう先で出会う龍はそのどちらだろうかと。


────ロマネスクは、ふと考えていた。

968名も無きAAのようです:2012/06/12(火) 00:52:28 ID:mdK0uiGI0




   ( ^ω^)ヴィップワースのようです
          累計20話記念

             幕間

         「語り継ぐもの(1)」


             -続-


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