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( ^ω^)ヴィップワースのようです 第0話(2) 「怒りを胸に刻んで」

33以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:29:34 ID:8708vJ0A0

   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

           第0話(2)

         「怒りを胸に刻んで」

34以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:30:38 ID:8708vJ0A0

光あれば、闇もまた然り。

聖ラウンジの奇跡とは対極の存在として、常日頃研究されつづけているものがある。

─────それが、”魔術”

名の通り、一つ使い方を間違えれば、魔に取り憑かれ己の身を滅ぼす事さえある。
弱き者を救う術として存在している聖ラウンジの秘術とは違い、これは弱者が強者に対抗する術なのだ。

その為、魔術師たちが用いる術は、他人を呪うもの、対象を焼き焦がす炎を発現するものなど様々。
様々な術をこなせる半面、魔を究めようと、それに魅入られた者も多い。

その中でも、大陸全土において絶対の禁忌とされ大多数の魔術師から忌み嫌われるのが”死霊術”

命を失った肉体や朽ち果てた亡骸を蘇らせ、己の意のままに操る事さえできる。
多くの人間の死が必要で、またその亡骸を弄ぶという事で、もし発覚すればその場所場所に
よっては、拘束され、処断される事さえあり得るのだ。

高等魔術に位置する死霊術の研究だが、それゆえ魔術の道に魅入られた者達の中にも
人々の目を欺きながら研鑽を積み、研究に没頭している者も存在する。

人は、禁忌というものが自分の目の前にあると、触れずにはいられない生物なのだから。

35以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:32:35 ID:8708vJ0A0

(´・ω・`) 「ふぅ…全く、聞いた話とはえらい違いだ」

全ての魔術師たちが志す場所があった。その名は、”賢者の塔”

その名の通り、魔術の道を求道して研鑽を積み続けた者たちが立ち入れる場所だ。
幾多の術を用いる名のある魔術師や、大きな発見で魔術研究に貢献した者など、
ここにはそんな魔術師のエリートばかりがひしめいている。

一定の成果を上げられない人間は、研究途中であろうと塔を追われる事さえある。
逆に、見込みのある研究成果を上げられる術者たちには快適な研究環境があてがわれ、
じっくりと自分の研究に没頭できるという訳だ。

青年は、沢山の魔道書を両手一杯に抱えながら、陽光の差す渡り廊下の窓から外を眺めていた。

”ショボン=アーリータイムズ”──────

生まれた時の名であるストレートバーボンの名を捨て、魔術師としての現在の彼の名前だ。

36以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:36:21 ID:8708vJ0A0

南の名家、”ストレートバーボン家”の次期当主となるはずだったショボンは、
物心つく前から既に魔術へとのめり込んでいた。

8歳の時には、老齢の魔術師であっても習得が困難とされる移送方陣を独学にて完成させると、
12歳の頃には、森で遊んでいた際に襲い掛かってきたオーガを、炎の球で撃退したりもした。

気品に溢れ、知に富んだショボンが領主としてその手腕を発揮するのを、
ストレートバーボン家の人間のみならず、領民達も待ち望んでいたほどだという。

だが、20になったショボンは、父であるシャキン=ストレートバーボンの制止を振り切り、
僅かな手荷物だけをもって生家を後にしたのだ。広大な敷地と大きな富を有する領主の地位を放って。

その後は大陸各地を転々としながらも魔術の研鑽を積み、やがてその才覚がこの賢者の塔の
アークメイジの目に留まり、こうして今この場に呼び寄せられているのだ。

だが、どういうわけかこの頃は研究の合間に、雑用ばかりを余儀なくされていた。

(´・ω・`) 「(使用人にご機嫌伺いをされるのも懲り懲りだが、こう雑用ばかり頼まれるのもな…)」

37以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:38:45 ID:8708vJ0A0

常人の数倍の速度で知識を吸収してゆくショボンに、賢者の塔の魔術師達も舌を巻いていた。

ついこないだも、ショボンの倍以上も生きている老魔術師が、
転移方陣によって自分の身を遠方へと転送する事に成功したと言う。

喜びを露にしてそれをショボンに伝えてきた老魔術師だったが、
そこへ彼が言い放った言葉がいけなかったのかも知れない。

(´・ω・`) 『それはそれは、おめでとうございます。苦労なされたでしょうね……
       ちなみに私は、それを15の時には既に独学で習得していましたが』

事実、今の段階でショボンに比肩する叡智を持つ魔術師は、指折り数えるほどしか存在しないのだ。

しかし、いかに有能といえど賢者の塔にはきちんと術者同士の上下関係というものもある。
才覚ではショボンに劣る者もいるが、これまでの下積みによって魔術の研究に大きく貢献してきた者達なのだから。

(´・ω・`) 「(妬み、か………だが、収穫もあった)」

そうして冷静に自分へと向けられている周囲の感情を分析しながら、
窓の外の風景を眺めていたところだった。廊下ですれ違う人間と、ふと目があう。

( ・∀・)

”モララー=マクベイン”。彼もまた北の名家、ローゼンマイヤーの名を捨てたという話だ。
ショボンを上回る程の才覚を持ち、また独自の魔術の研究にも余念が無い。

38以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:40:22 ID:8708vJ0A0

光の屈折率を捻じ曲げ、己の姿を不可視にするという魔術は、未だ彼以外に大陸中で習得した者は居なかった。

どこか同じ雰囲気を持つ二人、だが、どちらからも話かける事はなかった。
互いの研究が忙しいというのもあるのだろうが、相容れない、ショボンはそんな印象を彼に持っていた。

(´・ω・`)「どうも」

( ・∀・)「あぁ、どうも」

会釈をしたままその背中を見送るショボンは、視線を落とした際に、一つある事に気づいた。

(´・ω・`)「(………血?)」

( ・∀・)「………では」

大きめの黒い道衣に身を包むモララーの手首に、血を拭ったような痕跡が僅かに見受けられた。
だが、モララーは別段視線も合わせず、ゆっくりと歩を進めて廊下の奥へと消えていった。

たったそれだけ、普通の人間ならば気に留める事もないようなそんな事が、
この時は何故か、やけにショボンの好奇心を煽った。

(´・ω・`)「(尾けて……みるか?)」

モララーの背中が見えなくなったのを確認して、抱えていた魔道書を傍らへと置き、静かに歩き出す。

39以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:42:35 ID:8708vJ0A0

モララーの背中が見えなくなったのを確認して、抱えていた魔道書を傍らへと置き、静かに歩き出す。

一度興味が沸くと確かめるまでは抑える事が出来ない性分だとは、彼自身も解っていた。
それだけにその好奇心こそが、今日までの彼を形作ったのかも知れない。

決して尾けているとは気取られぬ程度に、一定の歩調で彼の後を追う。
専用の研究室まで与えられているモララーという魔術師の存在は、以前から気にはなっていた。

自分が魔術研究者として招き入れられるよりも以前から、彼は既に大陸全土の魔術師ギルドから
一目を置かれている存在であったからだ。自分とさほど変わらぬ若輩が、だ。

確かに、自分は常人が数年頑張っても習得できない高等魔術を、難なくこなすことができる。
だだ、それらは決して自分一人の研究によって得られた成果ではないのだ。

尤も成功の可能性が高いその道を模倣し、必要とあらばそれらの修正点を洗い出す。
それが出来れば、後は自分なりの解釈を添えて必要であろう行動をこなすだけ。

たったそれだけの事で、自分より遥かに長く魔術に携わる人間達の頭上を、何度も越えてきた。
これまでの間、大きな壁にぶつかったことすらなかった。

決して自分の口から周囲へと放つ事はない、が、恐らくは自分が魔術師として
一流の部類に入る人間なのであろうという事も、自覚している。

40以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:48:22 ID:8708vJ0A0

当然そこらの貴族が抱えているような、プライドだけは一人前といった、
半人前未満の魔術師たちと比較すればなおさらの事だ。

有事においての判断力、集中力、蓄える知識の量も、センスも。
己への糧とする為に魔道に打ち込んできた時間が、絶対的に違うのだ。

名ばかり売り込む事に躍起になってきた者達は、遅かれ早かれいつか必ず
大きな壁にぶつかり、己の才能の無さを言い訳に道を違えて行く。

今日の自分を形成するものは、飽くなき探究心と、効率の良い努力で裏打ちされた自信。
それにより、今まで他人を羨んだりした事もなかった。

だが、それも────モララーという男が、自分の先を行く男が居ると、知る時までは。

初めて自分の興をそそられる人物と出会った。
だからこそ、少しばかりの事に、敏感に反応してしまっているのだろうか。

(´・ω・`)「(僕が……彼を羨んで?)」

(´・ω・`)「(………いや)」

それは違う、ただのいつもの悪い癖だ。そうやって自分を納得させながらも、
自分の足跡はモララーを辿ると、やがて彼の研究室がある辺りまでたどり着いた。

41以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:51:57 ID:8708vJ0A0

簡素で、何の飾り気も無い研究室の扉。
その前に立ち、そっと指先で扉の取っ手に触れてみた。

ぽぅっと、ほのかに黄色く発光する指先。
物体に遮られた場所の様子などを調べる為の”探知魔術”だ。

目を瞑り、扉の向こうの様子を探ろうとした所ではっと我に返り、その手を離した。

(´・ω・`)「………全く、僕は何をしているんだ」

ただ単に興味を惹かれた、遊び半分の気持ち。

たったそれだけの事で、同じ屋根の下で寝食を共にしている身内に対して、
侵してはならない領域を、あともう少しで侵してしまうところだった。

一旦冷静になると、自分への嫌悪感さえ押し寄せて来た。
それらを噛み殺しながら、一人自嘲気味に呟く。

(´・ω・`)「本当に、この癖は治さなければね……」

短時間の探知魔術で把握できたのは、モララーは研究室には戻っていないという事だけだ。

手首に血の跡?それが何だ、研究道具か何かで引っかいたり、自分自身の血液を媒体とする術式だってある。
下らない事に頭を突っ込むよりも、いち早く完全なる自分だけの魔術を完成させなければ。

42以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 18:58:29 ID:8708vJ0A0

踵を返して、研究室の扉の前から立ち退く。
モララー=マクベインといういち魔術師に対し、申し訳ないと思う気持ちさえ沸いてきた。

だが─────その時。

そこで、ショボンを再び疑念へと駆り立てる要素が芽生える。

(´・ω・`)「(……ッ!?)」

日ごろから頭を使う事ばかりしているせいか、俗世の人間達が好む珍味などの味覚にも疎く、
魔道書の活字ばかり追っている眼は、最近では近づきすぎるとぼやけてはっきりと見えなくなってきた。

だが、自然に群生した葉などを調合したりもする実験柄、嗅覚というものは大事な五感の一つだ。
間違える筈はない。

本当に微かながら、自分の鼻腔を突いたのは─────僅かな、死臭。

(´・ω・`)「(これは……)」

今度は躊躇わなかった。再びの探知魔術によって、扉の向こうに誰も居ないのを
しっかりと確認した後、取っ手をしっかりと掴み、押し開けようと試みた。

だが、扉はうんともすんとも言わない、それどころか、手から伝わってくる感覚に違和感を覚えた。
しっかりと力を加えているはずなのに、少しのあそびもない扉からは、きしむ音すら聞こえない。

43以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:01:37 ID:8708vJ0A0

(´・ω・`)「(鍵じゃ、ないな……魔術による錠の感じでもない)」

(´・ω・`)「(だとすれば、結界か?)」

(´・ω・`)「(ますます気になるな)」

大きく一歩を後ずさった後、ゆっくりと掌を扉へと向けると、詠唱した。

(´・ω・`) 【 行く手を阻みし魔の効力────打ち消えろ 】

その一言を言い終えると、固く閉じられていたはずの木製の扉は、軽く押すだけで呆気なく開いた。
”解呪の法”、簡潔な呪いの類や、魔術によって張られた障壁などの魔力を中和する魔法だ。

結界によって隔てられていた空間と空間。それが破られると、扉の向こうからは
重苦しいような、息苦しいような、そんな違和感が流れ込んでくるのを、ショボンは肌で感じ取った。

(´・ω・`)「随分と、小奇麗なものだ」

研究室の中へと一歩踏み入っただけで、感じていた重圧がより一層強いものに増した気がした。

同時に、鼻を突く死の臭いも、だ。

きょろきょろと部屋の中を見渡し、私物や研究成果をしたためた書物などに目を配る。
そこで、ギクリとするような題名のある一冊の書物を見つけて、急ぎ手に取った。

(;´・ω・`)「まさか……これは」

44以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:05:17 ID:8708vJ0A0

”死をくぐる門”

古ぼけた魔道書の題名には、そうあった。
この著書には、多数の人間の死が密接に関わっていると及び聞いている。

今より数十年も昔、ある村で全ての住民が忽然と姿を消してしまうという事件が起こった。
幾度も近隣の騎士団は捜索を試みたが、村中、果ては森狩りをしてまで原因を追究したが、
いくら月日が流れても、手がかりを発見するに事さえ至らなかった。

種明かしをしてしまえば、犯人はこの魔道書を書き綴った人物というのが、三年後に発覚した事実だ。

村の離れにぽつんと建っていたあばら家の地下で、この著者の亡骸と、
村人達の者と思しき異常なほどの量の人骨が発見されたのだという。

一人の魔術師が、夜な夜な”実験材料”として村の人間達を捕らえ、
その命を奪っていたらしい、というのが事の顛末である。

”死霊術の実験”としての大量虐殺、後に騎士団はそう断定した。

だが、実際にはそれを一歩進めた外道にも劣る儀式を行っていたのだという。
その惨い過程を書き綴ったこの著書から明らかとなったのが、5年ほど前だったか。

この世で唯一、死神と同一視さえされる程に強力極まりない悪霊、”レイス”
その霊体を、自らの肉体と数多の人間の死を媒体として、降霊させようとしたのだ。

魔術の道を志す者達には、絶対に破ってはならないタブー。”禁呪”として伝え広められる死霊術。
果たしてレイスを呼び出す事に成功したのか、そのまま取り殺されたのかは誰も知らない。

45以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:07:19 ID:8708vJ0A0

頁をめくる度に犠牲となった人間の悲鳴すら聞こえてきそうな、この外法の魔術書に数えられる一冊。

今重要なのは────それが、何故この場にあるのかという事だ。

(;´・ω・`)「(何という物を見つけてしまったんだ……しかも、これは)」

死霊術において、死者の魂を捕縛するための道具である、”黒魂石”が傍らに置かれていた。

混じり気のない黒曜石を削りだし、様々な材料を塗した上で7夜を満月の光で照らし続ける。
確か、昔何の気無しに目を通した書物にはそう書いてあった。恐らくこれは、その手順にも忠実だ。

それらが何を示しているのかは、たとえショボン以外の術者であっても、簡単に理解が出来る。

(;´・ω・`)「(バカな………死霊術だと?)」

(;´・ω・`)「(この賢者の塔に出入りする魔術師が、そんな外法を研究していたなど知れれば…)」

肩をわなわなと震わせ、ショボンの心中には様々な感情が交錯していた。
こんな事実が外部に発覚すれば、魔術師ギルド全体、はたまた大陸中の魔術師一人一人の沽券に関わる。

何より、大陸でも指折りの優れた能力を持ちながら、死者を冒涜して人間の尊厳を貶める、
死霊術などという外法に手を染めているのが、一緒に魔術の発展に貢献していこうとしていた筈の
身内に存在している事実に、ショボンは背筋の冷たくなる思いをしていた。

「……おや、そこで何を?」

46以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:09:51 ID:8708vJ0A0

(´・ω・`)「ッ!!」

瞬時に振り返り、向き直る。

( ・∀・)

いつからそこに居たのか、気づく事が出来なかった。

静かな微笑を浮かべていつの間にか背後に佇んでいたのは、
この研究室を預かる、モララー=マクベイン本人。

今となってはその口元の緩みに、不気味さしか感じる事が出来ない。
この魔道書を持つ理由を聞き出す為、ここは毅然とした態度で振舞わなければならない。

(´・ω・`)「留守中の勝手な入室、非礼をお詫びします………ですが、
      先ほど、袖口のあたりに血の様な痕をつけておられたもので」

( ・∀・)「ふむ……あぁ、これかい?」

(´・ω・`)「えぇ、それが気になりまして」

( ・∀・)「で……たったそれだけの事でわざわざこの僕を追いかけ、
      僕が扉に張っておいた結界まで”たまたま”解呪し、今この場にいるというワケだ?」

(´・ω・`)「………」

( ・∀・)「ハハッ!実に心配性だね、ショボン……ストレートバーボン君、だったか?」

(´・ω・`)「今は、ショボン=アーリータイムズを名乗っています」

47以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:12:18 ID:8708vJ0A0

( ・∀・)「そうそう…そうだったね、ショボン君」

( ・∀・)「僕の身を案じてくれるのは有難いが、何の事はない、
      ちょっとした実験で手元に跳ねてしまっただけのものさ」

(´・ω・`)「それは、死の臭いを撒き散らす、このような実験ではないのですね?」

( ・∀・)「………」

突きつけた。下手をすれば異端審問は免れられぬ、動かぬ証拠となるであろう一冊の魔道書を。
それと同時に、今まで薄ら笑いを浮かべていたモララーの表情から、口元の笑みはさっと失せる。

互いに目線を逸らすことなく、永きに渡る沈黙がその場を支配した。
ただでさえ息苦しさを感じるこの室内の重圧が、さらに一段増したように感ぜられた。

どれほど無言で見詰め合っていたのか、沈黙は、やがてモララーの方から破られる。

( ・∀・)「………く、くく、プフッ」

(´・ω・`)「何が、面白いのです?」

( ・∀・)「いやいや…失礼ながら、随分と煮詰まっているようだね。ショボン君」

( ・∀・)「他の人間の研究成果を盗み見るなんて、
      同じ魔道を求道する者として恥ずべき行為だ……違うかい?」

(´・ω・`)「(ふん)」

48以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:12:49 ID:8708vJ0A0

ショボンには、この会話を経て初めて気づいた事がある。

これまで魔術の研究に明け暮れてきた、モララー=マクベインという男の、もう一つの顔。
この上なく残虐で下劣な禁忌の魔術を、この男なら行いかねないという確信に触れた気がした。

(´・ω・`)「一体………なぜです」

( ・∀・)「なぜって、何がだい?」

(#´・ω・`)「質問に答えろッ、モララー=マクベインッ!」

( ・∀・)「………」

柄にも無くショボンは怒気を荒げ、不敵な笑みを浮かべ続けるモララーをキッと睨みつける。
当のモララーは、その言葉に対して返す言葉を考えているのか、虚空の塵を眺めるかのように天井を見上げた。

( ・∀・)「………”なぜ?”それはこの僕が、あの禁じられている
      死霊術に手を染めている、という事実に対してかい?」

(#´・ω・`)「やっぱり、そうなのか……あんたはッ!」

( ・∀・)「なぜなのか…そんな事、これまで考えた事もなかった。
      何せ、一度のめり込んだら止まらない性分なんでね」

( ・∀・)「ショボン=アーリータイムズ君。君だって、そうなんだろう?」

(#´・ω・`)「あなたなんかと同類にされるのは、御免だ」

49以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:15:08 ID:8708vJ0A0

裏の顔を知ってしまった今、目の前のこの男に対して、ショボンには少なからず畏怖の感情があった。

だが、それにも増して沸いてくるのは、この激情。密かに越えるべきライバルとしてあって欲しかった身内に
魔術師としてあってはならない、このような最悪の形で裏切られた為なのかも知れない。

(´・ω・`)「あなたを…告発します」

( ・∀・)「ほう?」

(´・ω・`)「それでたとえ、この賢者の塔で先人達が積み上げてきた名声が、
      地の底まで落ちようとも───あなたのような膿は、出し切らなければならない」

( ・∀・)「膿……?この、僕が?……クッ、プハハッ!」

(  ∀ )「アハッ、アッハッハ、ハハハハハハハハハハハハハハッ」

( ・∀・)「ハハッ………あ~、笑った」

堪える事ができない、とばかりに頭に手を当てて、大声で狂ったように笑い声を張り上げるモララー。
対して、ショボンは爪が掌に食い込み皮膚を裂かんばかりに拳を握りこみ、その姿に憎悪を露わにした。

(#´・ω・`)「何が可笑しい?」

ひとしきり笑い終えた後、頭を垂れて俯いていたモララーが再びこちらへと向き直った時、
瞳の奥から冷気さえ感じそうな程に、どこまでも暗く冷たい瞳が、ショボンを戦慄させた。

50以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:17:34 ID:8708vJ0A0
( ・∀・)「正義漢ぶりやがって………殺してやろうか」

(;´・ω・`)(────ッ!)

先手を打つべきなのか、そう思案に暮れていた時、すでにモララーは動いていた。
こちらへ向けて、両の手で三角形を模ると、なんらかの詠唱を始めた。

( ・∀・) 【 この者の身に宿りて 蝕み 食らい尽くせ 】

( ・∀・) 【 その命の灯火を 絶やす時まで 】

(;´・ω・`)(……まずい)

人目もはばからず、自分を口封じの為にこの場で葬る気か。

目の前で集束してゆく光の束が、今にもこちらへ放たれようと集束してゆく。
だが、身構えるのが少しばかり遅過ぎた。

奇妙な烙印が、束ねられた光弾と共に自分の胸へと直撃した。

(;´・ω・`)「……ぐぅッ!?」

胸を穿たれたのか、一瞬そう錯覚する程に感じてしまった、鈍い衝撃。

思わずその場で片膝を付いてしまった。身に起きた異変に気づき、胸元のあたりに手をやる。
そこには、先ほど目にした烙印がそのまま焼き付けられたかのように衣服を貫通し、胸板へ刻まれていた。

51以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:23:06 ID:8708vJ0A0

それを見てすぐに立ち上がり、半ば無意識に反撃の魔法を打ち込むべく、その口は呪文を唱えていた。

(;´・ω・`)「くッ……【 我が前に立ち塞がる敵を 焼き払え 】」

(;´・ω・`) 【 炎の球よ 顕現し─── 】

( ・∀・)「……ふふん」

人一人など簡単に焼き殺せる程の魔法を目の前で詠唱されているにも関わらず、
モララーはこちらを見て鼻を鳴らすほどの余裕さえ見せている。

(;´・ω・`)(何故だ………?)

そんな事を考えている内に、詠唱は突如中断される。

突如として、全身を恐るべき苦痛が這い回ったからだ。

(;´ ω `)「な……ッうぐ!? ぐぁぁッ!」

(;´ ω `)「ガハァッ……ぐ、ぐおぉぉぉぁぁーッ!?」

先ほどモララーによって放たれた魔法、それにつけられた烙印のあたりからだ。
胸を巨大な力で押しつぶされるかの様な苦しみが、体験した事の無いほどの激痛が、
自分の身体を地面でのた打ち回らせる。

(;´-ω・`)「……なんだ、これは。一体、何をした……?」

( ・∀・)「これが───僕なりの解釈で完成をみた、”封魔の法”さ」

52以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:28:00 ID:8708vJ0A0

(;´・ω・`)「(”口封じの法”の…強化術式といった所か?)」

(;´・ω・`)「(くっ……)」

口封じの法とは、魔術に必要である詠唱を行えぬよう、対象の口から一切の言葉を
発するのを阻害してしまう、対術者用の防衛用魔術の一種である。

まだその程度の魔術であれば、自らに付与された効果を打ち消すアンチスペルもあるにはあるのだ。

だが、恐らくモララーが独自に編み出したであろうこの魔法には、
この急場で対応策を練り上げる事など、どう足掻いても不可能である。

( ・∀・)「魔法なんて二度と使いたくなくなる、ぐらいの痛みだろう?」

(;´・ω・`)(……術者の魔力に反応して、この激痛が襲い来るという仕組みなのか?)

(;´-ω-`)(密室で、この男と二人きり……いかにもまずい状況だ)

未だ立ち上がるのも難しい程に、痛みがショボンの身体を蝕んでいる。
自分を睨みつける視線など気にも留めず、モララーはつかつかと歩くと、
机の上に置かれていた小ぶりのナイフの柄を掴み、ショボンへと向き直った。

( ・∀・)「言っておくが叫んでも無駄だよ。先ほど研究室へ入る際、
      再び結界を張っておいたんだ。ここからの声は、外へは漏れない」

(;´-ω-`)(ならば……この場を離れる手段は……)

53以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:32:35 ID:8708vJ0A0

( ・∀・)「所で……君は、実に良い素体となってくれそうだね」

( ・∀・)「ほんの少しでいいんだ、一度見せてくれないか?
      君の……その優秀な頭脳を司る、脳髄をさ」

(;´-ω-`)(……間に合ってくれよ)

ナイフを手に、モララーの足音がゆっくりとこちらへと近づいてくるのが解る。
だが、今は必死に外界からの音を遮断して、目を閉じて集中する事が必要だ。

イメージする、ここではないどこか。人目があれば尚いいが、この術は
一度自分が立ち寄り、しっかりとその風景を心の中で形作れるようなものでなければならない。

どうにかして今この場から、モララーの元から離れる為なら、どこでも良い。
この賢者の塔へと招き入れられる以前に、下界からその高みを見上げていたあの場所を選んだ。

モララーは、恐らく既に自分の目の前に立っている。それも、刃物を手にして。
だが、決してイメージに乱れが生じてはならない。しっかりと平静を保ち続ける。

( ・∀・)「……おや?一体、どこへ行こうとしているんだい?」

(;´-ω-`)(………ッ)

そのモララーの無感情な声に。透き通るような冷たい声に、一瞬ゾクリとさせられた。

54以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:34:50 ID:8708vJ0A0

だが、どうにか間に合ったようだ。
”自己の転移方陣”は────まもなく発動しようとしている。

(;´・ω・`)(───覚えて、いろよ)

心の中で、捨て台詞を吐いた。

( ・∀・)

最後に目を開けた時、ただ黙ってこちらを見下ろしていたモララーと、目が合った。
目の前に異端者が居るというのに逃亡を余儀なくされるこの屈辱を、忘れないよう胸へと刻み込んだ。

やがて、彼自身の肉体と共に、意識は彼方へと飛ばされた───

─────

──────────


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55以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:35:20 ID:8708vJ0A0

たった今までそこにいた筈のショボンの姿は、もはや影も形もない。
あとに研究室に残されたのは、モララーただ一人だ。

( ・∀・)「全く…冗談の通じない男だな」

モララー自身も、彼が転移魔術を発動しようとしていたのは気づいていた。
が、わざわざこの場で事を荒立てるよりも最良の結果をもたらすであろう、
ある筋書きが、彼の頭の中で思い描かれていた。

( ・∀・)「でも、まぁ…これはこれで楽しめそうだ」


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56以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:36:17 ID:8708vJ0A0

(;´・ω・`)「ハァッ…ハァッ…」

たどり着いた場所は、頭の中で思い描いていた場所と寸分の誤差もなかった。
賢者の塔の麓…近くには鬱蒼と緑が生い茂り、森林に囲まれた場所である。

詠唱を行わずとも、転移方陣を精神力だけで自動発動し、あの場から逃れた。

事前に魔力を篭めておく事で、場所を記憶する事が出来る”転移石”を用いた。
最初の手順さえ踏んでおけば、魔術の心得の無い人間でも扱う事の出来る道具だ。

無用の長物だと思っていたそれだが、今回は救われた。
ショボンは手の中の小さな石を眺めながら、安堵のため息を漏らす。

(;´・ω・`)「なんという奴だ……同じ魔術師達の目を欺きながら、あんな研究を……」

最後には自分の口を封じようともしていた、モララー=マクベイン。
奴の企みを、白日の下に曝け出す。そうすれば奴の異端審問は避けられない。
何しろ禁術に定められている死霊術を研究しているのだ、

ふと、先ほどモララーによって胸へと刻まれた烙印の事を思い出し、手で触れてみた。

(;´・ω・`)「……詠唱の必要は無い術だ、問題は……なさそうか?」

自分の身体に直接焼き付けられたその烙印自体に、不思議と痛みは感じない。
だが、安心しかけたのもつかの間。一瞬遅れて、それはやって来た。

思わず、息が止まる程の。

57以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:38:34 ID:8708vJ0A0
(;´ ω `)「!……ぐ、ぐおぉぉぉぉぉッ、あぁぁ、あ、がはッ、かはッ!!」

(;´ ω `)「あ、がぁ、うグぅッ………」

(;´ ω `)(見通しが……甘かった……魔法を使う際の…精神力に感応し…て……!)

爪が肉に食い込み血が出る程の強さで、烙印の刻まれた胸元に指を食い込ませる。
ふらふらと近場の木陰へとたどり着くと、すぐに倒れこみ、そのまま意識を失った。

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彼が再び意識を取り戻した時、あたりはもう暗闇に包まれていた。
いつから気を失っていたのかもわからない、が、倒れた時と同じ状態のまま、目を覚ました。

(´・ω・`)「(どれほど眠っていたんだ…僕は)」

(;´-ω-`)「(……つッ)」

よほど襲いかかる苦痛を紛らわせたかったのだろう、
胸の烙印の周りに、無意識で爪に抉られた場所から所々出血している。

58以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:41:58 ID:8708vJ0A0

(´・ω・`)(確かに、魔法なんて懲り懲りになる程の痛みだ。
       ……下手にもう一度魔法を使えば、本当に死ぬかもな)

この呪いを解呪出来る魔術師が一体賢者の塔に何人いるだろうか、そんな事を考えながら、
少しだけ距離の開いた場所から、賢者の塔の正門入り口へと歩を進める。

荘厳なまでにうず高くそびえる石壁、片手でそれを伝い、逆の手では胸を庇いながら、
やがて正門の前にまで辿り着いた。

日が暮れた今では門は閉ざされ、外部から入るには本来ならば立ち入り許可の羊皮紙が必要だ。
だが、扉の向こうの門兵と言えど自分の顔は覚えている筈だ、それが許可証の代わりになる。

それよりも、この組織の内部に死者の魂を冒涜する輩がいる。
その事実だけは、研究を他の者に任せて普段から日和っているであろうアークメイジを
はじめとしたこの場所の重鎮達に、何が何でも伝えなければならないのだ。

(´・ω・`)「開けて頂けませんか! ……私です、ショボン=アーリータイムズです!」

しばしの沈黙の後、扉の向こうで多数の人間がざわつく気配。
ややあって、扉は開け放たれる。まず自分の前に出てきたのは、法衣に身を包む一人の僧兵。

( ▲)「本当に…ショボン=アーリータイムズだぞ…!」

「本当か!」そう言いながら、彼の背後の僧兵達が浮き足立つのが解る。
怪訝な表情を浮かべながら、疑問を解消するためにショボンは僧兵に尋ねる。

(´・ω・`)「何です?…僕がショボン=アーリータイムズなら、何か問題でも?」

59以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 19:44:30 ID:8708vJ0A0

先ほどの出来事もあり、少しでも時間が惜しかった。
無駄な問答をすぐに終わらせる為、苛立ちを込めて言い放った一言。
ざわつく後ろの人間達を背に、正面の僧兵が歩み寄ってきた。

( ▲)「……いや、何も問題などないさ。まさか、お前の方から来てくれるとは思わなかったがな」

(´・ω・`)「……話が、見えませんが」

ショボンの心中そのものであるその呟きに反応して、背後の僧兵達から怒声が飛ばされる。

( ▲)「はぐらかそうとしても無駄だ!ろくでなしのネクロマンサー野郎!」

( ▲) 「この……魔術師の風上にも置けない外道がッ!口を開くな!」

その怒声が、焦燥に支配されていたショボンの思考を正常な物に取り戻した。
そこで、自分に向けて突き刺さって来ている訝しげな視線の原因へと思い当たる。

確かに、冷静に考えればいつもに比べて正門の見張りにこの僧兵の数は多すぎる。

(´・ω・`)(……何、だと……?)

(´・ω・`)「……そちらの方々につかぬ事をお伺いしますが、今、私の事を……何と?」

そう尋ねた所で、目の前に立つ僧兵が部下に声をかけた。
彼に持って来させた一冊の本を受け取ると、それをショボンの目の前へと掲げる。

60以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 20:02:09 ID:8708vJ0A0

その、煤けた表紙に見覚えのある、一冊の魔道書。
先ほどまでモララー=マクベインの部屋にあったはずの、”死をくぐる門”だ。

( ▲) 「……一体こんな物、どこから手に入れたのだ?まぁ、それはこれから聞き出すとしようか」

(;´・ω・`)(────計られたか)

それを見て、ようやく確信できた。
自分はあのモララーの策謀に陥れられたのだと。

ショボン本人が居合わせないのであれば、いくらでも偽装のしようはあった。
本人の筆跡に真似て、羊皮紙にモララー自身の知るネクロマンシーの知識を書きとめ、
あたかも死霊術においての研究を進めているかのように装う。

その傍らに、あの死者の魂を捕縛する魔石や、この外道がしたためた原書でも置いておけば、
進んで異端者を糾弾したがる、あの働き者の異端審問評議会にとって納得の判断材料にはなるだろう。

そして、その火の無い所に煙を燻らせたのは、十中八九あのモララーという男だ。

( ▲) 「さぁ、我々と共に来てもらおうか。明日には審問団も到着し、お前の処遇が決められる」

(;´・ω・`)「自分はハメられた……と言った所で、届きませんか?」

( ▲) 「届かんな……我々の耳には。そして、それを判断するのは異端審問評議会だ」

(:´・ω・`)(……解っては、いたさ)

61以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 20:03:15 ID:8708vJ0A0

告発により審問が始まる際、確実ではないが処刑が常である程の異端審問において、
”誰かが悪意を持って異端者として陥れようとしている”のでは、という一点だけは
さしもの審問官達も、最初に下調べをするのだという。

そしてその際、必ず魔術師同士の人間関係が洗い出される。
魔術師としての位が低い者からの告発ならば、異端審問評議会も”嫉妬”という部分を疑い、
確たる証拠がなければ処刑されたり、拷問にかけられるような事もない。

だが魔術師の位が高い方の者からの告発ならば、嫌疑にも信憑性も増す。
あとは証拠次第で、名を連ねる場所から除籍されるか、最悪異端認定されるか、だ。

そして、ショボンの今置かれた境遇においては、後者。

確かに期待されて賢者の塔に入ってから半年、まだ新たな魔術を編み出せる気配はない。
兼ねてよりオリジナルの魔術を大陸に広めたい、という思想を比較的親しい同僚には語った事もある。
恐らく、それが今回の異端審問の際において、鍵となるだろう。

自分だけの魔術を駆使する、モララー=マクベインを意識した発言に取られると見て間違いない。
逆に嫉妬してさえいるのは、ショボン=アーリータイムズ本人という事になるはずだ。
「魔術の研究に行き詰まり、その逃げ道として死霊術の研究を行っていた」そんなところか。

多少無茶な理由付けでも、異端審問評議会にとっては認定さえ仕上げられればよいのだ。

(;´・ω・`)(痛くない腹を探られ、臓物まで持っていかれるのは御免だ───!)

62以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 20:05:15 ID:8708vJ0A0

ショボンはちら、と背後を覆う暗闇に包まれた木々たちに目をやる。

体力など全く持ち合わせていない自分だが、この森に紛れれば追走は撒けるだろう、と考える。
モララーのように自己を対象とした隠匿魔術を習得しておくべきだった、と一度舌打ちすると、
くるりと踵を返し、佇む僧兵達をその場に置いて、一目散に駆け出した。

「…なっ!?逃げたぞぉぉぉッー!」

「……追えーッ」

「………逃がしてなるかッ!」

(;´・ω・`)「ハァッ……ハァッ……!」

つぶさに方向転換を行いながら、多少遠回りになってでも確実に追走を断つ。
途中から四方八方に散らばりこちらを探していたようだったが、木々を利用して
姿を隠しながら進み、森の反対側へと抜ける頃には、少しずつその声も遠ざかっていた。

これまで作った事など殆ど無かった生傷の痛みに、気を留める余裕もない。
まずは荒々しく乱れた呼吸を取り戻すのに、ややしばらくの時が必要だった。

自分の考えを、整理する時間も。

63以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 20:06:40 ID:8708vJ0A0

(´・ω・`)(ふぅ……もう少し、この場所で研究を続けていたかったが……)

(´・ω・`)(……モララー=マクベイン……)

(´・ω・`)(奴には、必ず痛い目を見せてやらなければならない)

(´・ω・`)(……だが、その為には、まずはこいつの解呪か)

胸の烙印をさすりながら、月夜だけが照らす暗い森を抜け出た所で振り返る。
様々な魔術実験の光が窓から漏れ、妖しく光る賢者の塔の上層を、最後に睨みつけておいた。
その光の一つの中で、自分を陥れたモララーが嘲っているような気がしていたからだ。

(´・ω・`)「”魔法を使えない死霊術師”────か。全く、お笑い草だ」

再び賢者の塔を背にすると、ショボンは一歩をゆっくりと踏み出してから、
真っ直ぐに前を見据えて、また歩き始めた。

64以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/08(水) 20:07:30 ID:8708vJ0A0
   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

            第0話(2)

         「怒りを胸に刻んで」


             ─了─


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