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( ^ω^)ヴィップワースのようです 第0話(4) 「誰が為の祈り」

121以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:10:18 ID:cEOPo.UM0

この広大な大陸中、至る所で”聖ラウンジ”の教えが伝え広められている。
200年以上もの長きに渡り、依然として最大の宗教派閥として君臨する彼らは、
特別外界の宗教とは交流を持たず、ただただ来る日も来る日もラウンジの神に祈りを捧げ続ける。

いつ報われるとも解らない信仰を持ち続け、やがて神に見初められた者だけが、
聖ラウンジの秘術、飽くなき信仰がもたらす、善なる精神に宿った奇跡の数々を起こすと言われる。

数ある聖ラウンジ教会の建物の中でも一際大きなものは、ここ聖教都市ラウンジの街にあった。
ラウンジ大聖堂。身寄りの無い子供や、身体の不自由な老人などが多く訪れる。

この大聖堂にあって、今は修道女として聖ラウンジの神に仕える子羊である
”ツン=デ=レイン”は、今日も決まった時間、決められた動作で、神に祈りを捧げていた。

ξ-⊿-)ξ 「(聖ラウンジの神よ…我が声に耳を傾け、御言葉をお聞かせ下さい……)」

122以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:11:06 ID:cEOPo.UM0

「神よ…どうか、この地で苦しむ全ての人々を救いたまえ…」

「我らが信仰をその御力と為し、奇跡を…どうか…」

ツン=デレインの周りでは、彼女と同じように祈りを捧げる一般人の姿も多数ある。
修道士達も同様に、皆、本当に神の存在を心から信じ、口々に教典通りの言葉を囁く。
未だ、誰もその御姿を見た者はいないというのに。

ξ゚⊿゚)ξ「(はぁ…本当に、こんな自分が嫌になる)」

それは、ツン=デ=レインも同様だった。
赤子であった自分が当時の司祭に拾われ、それから今に至るまで、およそ20年の歳月が流れていた。
やがて司教となった育ての親は、結局神の姿を見る事も無くツンが18になると同時にこの世を去る。

棺に収まった司教の姿を見た時には、ツンの目からは確かに涙も流れた。

123以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:12:22 ID:cEOPo.UM0

「全ての人々には、等しく神の寵愛を受ける権利があるんだよ」

司教が常日頃から言っていたのは、自分を育ててくれたのは、そんな理由。
今にして考えれば恩着せがましいとさえ、ここ最近は思うようになっていた。

そんな邪な考えが邪魔をしているのか。はたまた、父であった司教が
この世を去った事が影響しているというのもあるかも知れない。

彼女の日々が変わる事は何一つ無い、きっと、このまま変化が訪れる事も無いのだろう。
外の世界を知らない彼女にとって、聖堂に訪れる街の人々と話す事が唯一の楽しみだった。

ξ;-⊿-)ξ「(おっと…いけない。仮にも私は聖ラウンジの信徒として
        神に使える身なんだからね。今のはナシ…今のはナシ…)」

ふと、後ろの方からひそひそと話し声が漏れてくる。
祈りの最中だというのに、こちらへ聞こえるのもお構いなしだ。

「ねぇ、ツン様の話…聞いた?」

「えぇ…司教様の遺言では、今年に次期司祭として賜るって話ね」

「ふん…あんな小娘が。捨て子だったくせに」

「ちょ、ちょっと、聞こえるわよ」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

125以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:14:00 ID:cEOPo.UM0

一通りの礼拝を済ませた後、すぐに二階の父が使っていた部屋へと上がっていった。
今日は一般の礼拝も無い日で、外の世界の話を人々から聞ける楽しみも無かった。

──いつからだろう、祈る事が、こんなにも嫌になってしまったのは。

──どうしてだろう、同じ神を信じる人たちが、こんなにもいがみ合うのは。

窓から外の風景を眺めながら、時間が空いた時にはこうした物思いに耽るようになった。
育ての父を失った事や、時折親の七光りを指差す人々のそうした視線に耐え切れず、
最近では礼拝自体にも嫌気がさす事さえあった。

聖職者として、あってはならない事だ。だが、それでも
いつしか外の世界に飛び出したいという気持ちは、否応無しに膨らんでいった。

司祭の座なんて、本当はツン自身どうだっていい事だ。
祈りを捧げていくだけの毎日、それが、この先の自分に何をもたらすというのか。
いるかどうかもわからない神の御姿を拝見するためか、はたまた、奇跡に触れるためか。

漠然とした不安を抱えたまま、今日も自分の気持ちに正直になり切れない自分に、辟易する。
思った事をそのまま伝えられたら、行動できたらどれほど楽になれるのだろう。

126以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:14:25 ID:cEOPo.UM0

だが、父が残した十字架の重みは、容赦なく自分の背に圧し掛かってくる。
父のように一生を祈りに捧げていった先──果たして何を得る事が出来るのだろうか。

ξ゚⊿゚)ξ「(……うん?)」

何気なく開いた、木机の引き出しの中から、見慣れない一冊の本が姿を覗かせた。

父が亡くなった時、一度身辺の物は整理したはずだ。
その時には、こんな物はなかった。

あるいは奥の方に入っていた為か、鬱屈していた自分が机の引き出しを
引く動作に、無意識で力がこもっていたのかも知れない。

ぱらぱらと、そのページをめくってみる。

煤けていて、長年に渡って使い込まれた感じの出ているその一冊。
最初の数ページを捲ってみて、すぐに解った。

父親が羊皮紙以外に残した文面は初めて見る。これは、日記だ。

127以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:14:51 ID:cEOPo.UM0

「○月×日 ぎこちないながらも、ツンはようやく様々な作法が解ってきたようだ。
      飲み込みは良い方ではないが、どこか祈りの仕草にも気品を感じる」

ξ゚⊿゚)ξ「これは……お父様の」

「×月△日 教会に訪れる人々も、皆ツンに親しく接してくれているみたいだ。
      また、ツンもそれを楽しみにしている様で、話を聞いている最中は
      目が爛々と輝いているように感じる……退屈な日常を、私は彼女に
      押し付けてしまっているのかも知れない」

その日記には、ツンが司祭に迎え入れられて、この教会で祈りを捧げるようになった
当初の様子、また教会での日常がほぼ毎日に渡って書き綴られていた。

流行病で呆気なくこの世を去ってしまった父は、まだ53歳という若さだった。
日記の最後の日付が2年半前になっている事から、病を得たのはつい最近だった様だ。

「△月○日 どうやら、ツンを快く思っていない修道士達もいるようだ。
      確かにツンはまだ不慣れで、聖典の内容すらまともに覚えてはいないが…

      それでも私は言ってやりたい。幼くして天涯孤独となった子供たちの
      両親に向けて、心からの祈りを捧げている彼女の無垢な横顔を見ても
      まだそんな事を言えるのか、と」

128以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:15:15 ID:cEOPo.UM0

ξ ⊿ )ξ「………これも」


「▲月△日 ツンが病を得てしまった。つきっきりで看病したお陰か、はたまた
      彼女自身の若さゆえの回復力だろうか。どうにか全快してくれて何よりだ。
      だが、今度は私が寝込んでしまっている……年は取りたくないものだ」

文面からだけでも、伝わってくる。
父が、神の名の下という、それだけの感情で自分を育てていたのではないのだと。

父である司教は神の名を借り受けた上で、自分を忠実な信徒に育てようとしていた、
そう誤解していたのだと、今頃になって初めて気付かされた。

「○月凹日 本当に、彼女の祈りは人々の荒んだ心を清らかにしてくれるほどに美しい。
      今日も、父上が天に召された娘子が、彼女が祈る聖母のような姿に感動すら覚えていた。
      ──これなら、いずれツンに司祭を任せてもいいかも知れない」

ξ ⊿ )ξ「本当に…私の事を見ていてくれたんだ…お父様」

そう、最初の気持ちはそうだったのだ。
心からの祈り、亡くしてしまった人達が、この世界に何一つ思い残す事なく旅立てるように、と。
心から、精一杯の祈りを捧げる事、本当は、苦だなんて思った事も無かったはずだ。

やはり、父を亡くした時から、自分は少しずつ最初の気持ちというものを忘れてしまっていたのかも知れない。

129以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:15:34 ID:cEOPo.UM0

失ってしまった今になって到来する、胸をちくりと刺す痛み。
鼻腔の奥がつぅんとしたかと思えば、眼からは自然と、頬へと伝う冷たい雫がこぼれた。

「凹月凸日 どうやら、私は流行病に侵されてしまったようだ。神の忠実なる信徒が、
      その奇跡に触れる事もなくこの世を去ってしまうのは、いかにも恥ずべきか。
      だが、今の私にはそれ以上にツンのこれからの事が気に病んでならない。

      どうか私がこの世を去っても、気を落とさないで欲しいものだ。
      そして人々を思いやる優しい気持ちと、清らかな祈りだけは、忘れないでいて欲しい」

ツンの心中には、この時様々な想いが交錯していた。

たとえ神などいなくても、自分を愛してくれている人がいたという事への、喜び。
そして、父の胸中を理解しようともしなかった自分の愚鈍さへの、後悔。

これから、この自分に出来る事は、一体何なのだろう。
それを考えた時、カーテンを時折はためかせながら自分の顔を撫でるそよ風が、
まるで今初めて体験したものかのように、一層新鮮味のあるものに感じられた。

そして、決断する。

ξ゚⊿゚)ξ「(なんだか、すっきりしたわ)」

130以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:15:58 ID:cEOPo.UM0

ξ゚⊿゚)ξ「(私達がこんな安全な場所で、安穏と祈りを捧げる日々の中で……
      本当に困っている人たちはこのヴィップの外にいくらでも居る)」

ξ゚⊿゚)ξ「(疫病、飢饉で命を落とした人たち、親を亡くした戦災孤児なんて、
      それこそこの乱れた世の中じゃあ計り知れない)」

ξ゚⊿゚)ξ「(それなのに、私達教会の人間は、主に救いを求めるために祈る……?)」

「…馬鹿らしいわね!」

一人窓の外に向かってそう叫んだ彼女は、すぐに持てるだけの荷物を持って、身支度を始めた。

ξ゚⊿゚)ξ「神様なんて、どっかりとあぐらをかいて私達を見下ろしてるばかり」

ξ゚⊿゚)ξ「それなら、私の方から出て行ってやるわ」

自分が神の信徒として出来る事を、やれるだけやってみたかった。
その一心だけが、今のツンを支える活発な原動力の源だ。

131以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:16:35 ID:cEOPo.UM0

きっと自分にだって、本当に困った人々の力になれる事だってあるはずだ。
父が言っていた言葉を借りれば、愛情は全ての人に等しく注がれるべき。
自分が、父からそうしてもらっていたように。

なら、親を亡くした子供たちや、孤独に死に逝こうとしている人々は、
誰からその愛情を受け取れるというのか。誰が、彼らの為に祈りを捧げて
くれるというのか。教会で礼拝している自分達は、そんな事に気づく事も無く、
ただただ、誰の為でもなく形式ばった祈りを捧げているだけではないのか。

吹っ切れた今の彼女には、これまでうじうじとしていた過去の自分を
省みる時間すら惜しいほどに、旅立ちへの気持ちが溢れ出しそうな程だった

132以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:17:38 ID:cEOPo.UM0


   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

           第0話(4)

          「誰が為の祈り」

133以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:18:14 ID:cEOPo.UM0

───旅立ちを決めたあの日から、すでに一週間もの月日が流れていた───


ξ;゚⊿゚)ξ「ぜぇ…はぁ…」

登りの坂道、白を基調とした修道服の裾は、見る影もなく土ぼこりに塗れていた。
手ごろな木の枝を支えのステッキにしながら、険しい山道を登る、昇る、上る。

愚痴をこぼす余裕も無いほどに疲弊し、箱入り娘で培われた自身の体力不足を痛感する。

やがて、勾配のなだらかな頂上付近にまで辿りついた時、木々に囲われた
近くの原っぱを目にして、身体をどっかりと地面へと預けた。

どこまでへも続いている空を見上げて寝そべる。
身体の疲労は非常に深刻なものだが、それ以上に今は心地よい開放感が得られた。

ξ゚⊿゚)ξ「(あ~…いいわ)」

134以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:18:36 ID:cEOPo.UM0

目を瞑ると、何だか今まで住み暮らしてきた聖教都市での出来事が、遠い昔の
日々の事のように感じられた。

もちろん、周囲へは多少強引にだが説得を済ませてきた。
引き止める者や仰天する者など反応は様々だったが、口を差し挟ませる余地もなく、
最後には脱兎の如く逃げて来た。今頃、自分を探しているのだろうか。

街を出る前に、毎週礼拝に来ていた家族連れなどには一声を掛けてきた。
そちらの人たちは、旅に出る旨を告げると驚かれこそしたが、自分を激励してくれた。

その激励のおかげで、2日目以降の野宿を乗り切れたようなものだった。
日中であればまだいいが、獣道のような森の中を通り、人里へと通じる道を
外れてしまってうす暗闇に迷いこんでしまった時には、べそをかいて彷徨い歩いたものだ。
・・・・
旅慣れた今ならそんなヘマはしないぞと、少しだけ自信がついている。

ξ゚⊿゚)ξ「あ………」

135以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:18:58 ID:cEOPo.UM0

もうしばらくこの心地よさを味わっていたかったが、不意に、頬に落ちたのは
冷たい雨粒ひとつ。ふたつ、みっつと続くと、次第にますますその勢いは増した。

こんな山奥で夕立に見舞われるとは思わなかった。

ろくに冒険などしたことの無いツンにとって、明らかに不測の事態である。
ひとまずは雨が止むまで木陰にでも身を寄せるしかないとは思うが、それで
下山するのが明日の明朝以降になってしまっては、道中で野垂れ死ぬかも知れない
怖さがあった。来るまでに街で手に入れてきた食料もあるが、ほんの微々たる量なのだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「…どうしよう、かな」

いつになったら止むのか、そんな事は知る由も無い。

先ほどまでかいていた汗が嘘のように引くと、この雨が
周囲を冷やしてしまった。身体をぶるると震わせる。

ξ;-⊿-)ξ「…さむっ」

生憎と暖を取れるような準備など整えてはいない。
過ぎ去るまで、身を縮こまらせて待つしかないのか、と不運を嘆いた。

136以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:19:17 ID:cEOPo.UM0

が、周囲を見渡したある時、木々に紛れた岩陰にぽっかりと口を開いた
洞穴のようなものがある事に気がついた。

どれだけの奥行きがあるかは解らないが、この中に入れば風雨や
寒さはある程度凌げるだろう。不幸中の幸いに、思わず主の名を口にした。

ξ゚⊿゚)ξ「これぞ神の思し召し…ね」

ξ;゚⊿゚)ξ「(はっ…でも、もし熊とかいたらどうしよう!)」

ξ;゚⊿゚)ξ「(う~ん…羆に村を襲われた人の話とか聞く限り、
       私みたいにか弱い少女はイチコロだろうし…)」

あれこれと思案する内、木の葉から伝わり落ちる雨の雫が
首元から背中を伝わり落ちて、小さく悲鳴を漏らしてしまった。

ξ;゚⊿゚)ξ「しゃあない、この際背に腹は代えられないか…」

野生動物や、話にしか聞いた事のないゴブリンなどの妖魔が
中に居ないかを警戒しつつ、じりじりと洞窟の中へと歩みを進める。

思ったよりも奥深い。

137以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:19:37 ID:cEOPo.UM0

次第に入り口から聞こえる雨音は、しんしんと遠いものになっていく。
中は暗いが、獣臭がしたりはしない事に安堵した。

それどころか、かすかに薪を炊いた燃えかすなどがあった事に驚く。

ξ゚⊿゚)ξ「人が……居たの?」

そうとしか思えない痕跡が、少しずつ暗さに慣れてきた視界に次々と映り込む。
火を起こした場所のすぐ近くの壁面には、固い土壁を石か何かで削り文字を刻んだ跡。
どういう規則性になっているのかよくよく見てみると、暦を描いたもののようだった。

ξ゚⊿゚)ξ「(こんな場所に住んでる人なんているのかしら。
      もし帰って来ちゃったら、どうしよう…)」

こんな場所で山賊にでも襲ってこられたら、逃げようも無い。
今度は恐怖から来る寒気が、またツンの身を震わせた。

その折に、不意に人の声とも物音ともつかぬ何かが、奥から聞こえてきた。

ξ;゚⊿゚)ξ「…!!」

慌てて、2、3歩を後ずさり、壁を背にした。
聞こえてきたのは、やはり人の声だったようだ。
少しずつ、こちらにその人影が近づいて来る。

138以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:20:03 ID:cEOPo.UM0

だが、やがて姿を現したのは、想像よりもずっと危険のなさそうなものだ。
目をこすりながら、うわごとを唱えるかのように喋るそれは、子供だ───

(ノoヽ)「おあ…うああ?」

ξ;゚⊿゚)ξ「(なんで、子供がこんな所に…?)」

目やにだらけで、こちらの姿がおぼろげにしか見えていないのかも知れない。
衣服ともいえないようなぼろの布切れを身体にくくりつけている。

そして、ラウンジでよく見かける、元気に走り回る子供達とは対照的なその姿。

年の頃は同じくらいであろうが、その身体はあばらの骨が浮き出る程に痩せ細り、
顔は煤けていて、ろくに衛生的な暮らしなど出来ていないのだろう。

しかし、驚かされはしたが、山賊や熊なんかよりもずっと可愛らしい。
なぜこんな場所にいるのかを尋ねようとしたが、ある事に気づいた。

(ノoヽ)「うあ…う。おうあぁ」

139以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:20:25 ID:cEOPo.UM0

ξ;゚⊿゚)ξ「(そうか…聞こえないんだ、私の言葉)」

聾唖なのだ。耳が聞こえないばかりか、それに付随してものを喋る事も出来ない。
その子供が、こんな山深い場所で一体どうやって生きていたのかと、呆然とした。

ξ;゚⊿゚)ξ「……君は一人、なのかな?」

(ノoヽ)「ううんあ。あうおあ」

ξ゚⊿゚)ξ「違う…って?唇の動きで言葉が解るの?」

ツンの問いかけに、子供はツンの衣服の端あたりを掴み、奥へと連れて行こうと
しているようだ。白い衣服は触られた箇所がたちどころに真っ黒く汚れたが、
そんなことを気にかけることもせずに、子供に先導されるまま、ツンは奥へ奥へと歩いていく。

やがて、壁に背を持たれた人影の姿がその先にはあった。
それを指差し、ツンの顔を見ながら子供は飛び跳ねる。

(ノoヽ)「おあう!おあう!」

140以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:20:45 ID:cEOPo.UM0

ξ;゚⊿゚)ξ「………!」

思わず、悲鳴をあげてしまいそうになった。
子供が指差すそこには、眼を見開いている一人の男の姿。

明らかに、死んでいる。

ξ-⊿-)ξ「(………そうか)」

この子の親なのか、それはわからない。
だが一緒に暮らしていた同居人は、命を落としてしまった。
一人残されて、ずっと亡骸の傍で泣いていた子供の姿を一瞬想像する。

言葉も満足に喋れないこの子にとっては、あまりにも過酷な現実だ。
その無垢な表情を見ているこちらが、悲痛な面持ちを浮かべてしまう程に。

そんな自分が、この子の親にしてやれる事はたった一つしかなかった。

141以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:21:06 ID:cEOPo.UM0

ξ゚⊿゚)ξ「……主よ、聖ラウンジの神よ」

ξ-⊿-)ξ「その御許に、この魂をお導き下さい」

ξ-⊿-)ξ「道半ばで力尽きたかの者が、悔いを残して彷徨う事のない様に……」

ただ、それだけを願った。
あいも変わらず主は声を聞かせてなどくれないが、それでも
亡骸の前に膝まづくと、両手を合わせてただただ一心の祈りを捧げた。

様子が変わったツンを見て、子供はきょとんとしているばかりだ。

ただ純粋に、願った。

力ない幼子を残して、自分がこの世を去ってしまうという事。
それが親ならば、どれほど悔いを残す事なのか察するに余りある。

だから、せめて天上からこの子を見守ってくれているようにと───

142以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:21:35 ID:cEOPo.UM0

どれほどの間祈りを捧げていただろう。
やがて眼を開いた時、ツンの顔を恐る恐る覗きこむ、子供と目が合う。

(ノoヽ)「んん~……あう?」

事実を告げるのは、酷だろうか。
多少逡巡はしたが、いずれにしてもこれからこの子が生きていく上で、
どこかで必ず受け止めねばならない事実なのだ。

生命を失う事が、どういう事なのかを。

ξ゚⊿゚)ξ「…あなたのお父さんはね、お星様になったの」

伝わっているだろうか、出来るだけ大きく唇を動かす事を意識して
語りかけながら、空が閉ざされた洞窟の上空へと指差す。

子供は首を傾げながらも、一生懸命理解しようとツンの口の動きを読んでいる。

ξ゚⊿゚)ξ「これが…生命を失う、という事なの」

143以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:21:53 ID:cEOPo.UM0

ξ-⊿-)ξ「お父さんとは…もう二度と会うことは出来ないのかも知れない」

(ノoヽ)「んんん…うあう」

少しは伝わっているのかも知れない。
子供なりに理解しようと、先ほどよりは神妙な面持ちに感じさせる。
息を少し多めに吸い込んでから、励ますようにして、続けた。

ξ゚⊿゚)ξ「でも……安心するのよ」

ξ゚⊿゚)ξ「”お空からずっと君を見守っていてくれるように”って
     ……お姉さんが、君のお父さんにお願いしといたから」

ξ゚ー゚)ξ「……ねっ?」

(ノoヽ)「……うう、うん」

完全には理解できなくとも、これからの自分の置かれる境遇について、
なんとなく感じているのかも知れない。ツンが胸元に抱き寄せた時、
不安げな様子が、小さな肩の震えから見てとれた。

ξ ー )ξ「よしよし……大丈夫、だからね」

本当は父の死を知っていたのかも知れない、などと思う。
だが、天上の主との結べているかどうかも分からない約束を、
自分勝手に嘯いてしまった自分だ。

144以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:22:15 ID:cEOPo.UM0

勝手な約束をしてしまった以上、この子が人里で今後の面倒を見て
もらえるような場所までは連れて行く。

この時ツンは、そう決心を固めていた。

外に目をやると、どうやら先ほどまでの夕立もぱたと止んだようだった。
それならば、この子を連れて今の内に下山してしまおう。

だがその手を引こうとした時、何人かの人の声がした。
思わず動きを止めてしまった。

「あぁ~あ!ようやく雨宿り出来る場所を見つけたと思ったのによぉ!」

「ったく、ふざけやがって……今頃になって止みやがるたぁ」

「全く神様ってのはクソッタレだぜ。ま、ちょっとここで休んでいくとしようかい…」

数人の男達の声。
荒っぽい口調、野太い声。

知性の欠片も感じさせないその会話から、ツンは本能的に
危機感を察知した。すぐに子供を自分の後ろへと追いやる。

ξ;゚⊿゚)ξ「(喋っちゃ、だめ)」

145以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:22:45 ID:cEOPo.UM0

(ノoヽ)「(………あう)」

ξ;゚ー゚)ξ「(いい子ね……)」

子供がこくりと頷いたのを確認すると、自分の元へと抱き寄せながら
洞窟の奥の方へと、じりじりと音を立てないように下がっていく。

どうやら、全部で3人の男がこの中に入ってきた。
一際大柄な男と、中肉中背、そして小柄な三人。

先ほどの荒っぽい口調も頷けた。
その三人のいずれもが、鉈や剣をぶら下げているのが見えてしまったからだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「(本当に山賊なんかと出会っちゃうなんて……ツイてないわね)」

雰囲気で察する事が出来た。恐らく、こちらの存在に気づかれたら、
たちまちこの三人は自分達を襲ってくるだろう。

「ケッ、きったねぇとこだなぁオイ」

「やっぱ雨上がりは湿気がひでぇや」

「いやぁ…こうジメジメしてるとよぉ…スカーッと、女抱きたくならねえか?」

「オメェは年がら年中だろうがよ!ひゃひゃひゃ!」

146以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:23:09 ID:cEOPo.UM0

「おぉよ……こないだの上玉みてぇに、無茶苦茶に犯してやりてぇぜ」

「オイオイ、またケツに棍棒突っ込むのは無しだぜ?後から使う俺たちが困らぁ」

「ちげぇねぇ」

ぞっとしない会話が、少しだけ前方で飛び交っていた。

ξ;ー )ξ「(……大丈夫、大丈夫……)」

子供の頭をそっと撫でながら、そう言い聞かせる。
それは、気をしっかり保つ為に自分に対しての言葉だったが。

洞窟内の暗さが幸いしてか、山賊と思しき連中たちには
奥の方で身を縮こめる自分達の存在には、まだ気づかれていない。

しかし、少し目を凝らせば違和感に気づくだろう。
ましてや、自分が纏う白の衣服ならば、余計に目立ちやすい。

”早く出ていって”───そう願うも、一人は寝転がって
うだうだと一休みを始めている光景から、当分出ていく雰囲気はなさそうだ。
それならば、とツンは腹をくくった。

ξ;゚⊿゚)ξ「(いい……?合図をしたら、外まで走るの)」

(ノoヽ)「(……うん、あう)」

147以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:23:45 ID:cEOPo.UM0

ξ;゚⊿゚)ξ「(お姉さんの手を離したら駄目だからね)」

(ノoヽ)「(……うう?)」

ξ;゚⊿゚)ξ「(でも、もし手が離れたら…絶対に振り返らないで走るの)」

ξ;゚⊿゚)ξ「(そして、人のたくさんいる場所を目指すのよ?)」

(ノoヽ)「(うあ、ううん……)」

ツンの顔から滲み出る不安感が子供にも伝わってしまっているのか、
今にも泣き出しそうな顔をしながらも、ツンの小声一つ一つにしっかりと
首を縦に振ってくれた。どうやら、大丈夫そうだ。

ばきっ

ξ゚⊿゚)ξ「(───焚き……木……?───)」

ツンはその一瞬、足元から聞こえてきたその音に、
頭の中が全て真っ白になってしまった。

火を起こした後の燃えかすを踏んでしまったのだった。
それは、自分が思うよりもずっと大きな音を立てて、
しつこいくらいに洞窟内で反響してしまっていた。

正しく、痛恨の極みだった。

148以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:24:07 ID:cEOPo.UM0

「おぉ?」

「んぁあ?」

さすがに気づいた。完全には視認していなかったようだが、
やはり白い聖職服は目立つようだ。目元をしかめながら、違和感に首を傾げた。

確認しようと男が一人、こちらへとゆっくり近づいてきている。

とても作戦ともいえないものだが、今となっては先ほどの
考えを実行に移しても成功率は格段に下がってしまうだろう。

だが最悪、せめてこの子供だけでも逃げてくれれば良い。

ξ;゚⊿゚)ξ「………今よッ!!」

149以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:24:33 ID:cEOPo.UM0

しっかりと子供の手を離さぬように、衣服の裾をたくし上げて全力で出口を目指した。
突然聞こえた大声と走り来る人影の姿に、姿を確認しに来ていた男は低い呻き声を
上げてツン達の進路を飛びのいた。

「うぉッ!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「ハァッ……ハァッ……!」

無我夢中で、子供の手だけを離さぬように全力で走った。
今まで生きてきた中でも、これほどの緊張感に苛まれた事はあっただろうか。

体中から冷や汗が吹き出し、血が冷たく
凍りついたかのように、体温は瞬く間に下がっていた。

ほんの数フィートの距離。だがたったそれだけを進む間に、
まるで数十秒、数百秒もの間、秒針が時を刻んでいるかのように感じられる。

「おっ……女ァッ?!」

素っ頓狂な声を上げたその山賊は、通り過ぎる間際に腕を伸ばしてきた。
だが、走りながらその腕を振り払う事に成功する。

あともう少し、あと数秒でたどり着く距離に、
洞窟の出口がぽっかりと口を覗かせているのだ。

150以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:25:04 ID:cEOPo.UM0

ξ;゚⊿゚)ξ「(もう少しで……外に!どこかの草木で身を隠せば……!)」

だが、最後。

ξ゚⊿゚)ξ「(もう、少………ッ!!)」

「女」という単語に敏感に反応したのか、洞窟の出口前で寝転がっていた
その男に、脇から腕をがっしりと掴まれてしまった。

振り払う事も出来ないぐらいの、強い力で。

子供の手を掴んでいたその手が離れる、いや、離した。
一瞬子供がこちらを振り返った時、力の限りを振り絞ってツンは叫ぶ。

ξ#゚⊿゚)ξ「何してんの……行きなさい!!早くッ、走るのッ!!」

(;ノoヽ)「……う、うぅ……うあぁぁぁぁーっ!!」

そこに鬼面の如き表情を浮かべていた怒声混じりのツンの叫び。
子供はびくっと驚きながらも、ツンの身を案じてか一度二度振り返り、
やがて野山のいずこかへと、走り去っていった。

「うほぉぉっ!!極上の上玉だぜ、こいつぁよぉーッ!?」

「さぁさ、中に戻ってさ……楽しもうじゃねえか嬢ちゃん」

ξ;゚⊿゚)ξ「(無事に人里に辿り着けると……いいね……)」

151以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:25:31 ID:cEOPo.UM0

───

──────

─────────

一人の旅人は、たまたまそこへ通りがかっただけだった。
外套の下、僅かにはだけた胸元の下には、覆い隠すようにして
包帯がびっしりと巻かれている。

”ショボン=アーリータイムズ”

大陸全土の魔術師がその場所に籍を置く者を羨望の眼差しで見るという
かの魔術研究機関”賢者の塔”にその名を連ねていた男だ。

それも、つい最近までの話だが。

(´・ω・`)「(………何事だ?)」

ξ#゚⊿゚)ξ「…その汚い手を離しなさいよ!小悪党どもッ!」

そう叫びながら、洞窟内へと数人の男に押し込まれていく女性の姿に、
はた、とその歩みを止めた。明らかにただならぬ雰囲気を感じ取り、
洞窟内の様子を伺える木陰へと身を隠し、死角になるよう位置取りをした。

152以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:25:58 ID:cEOPo.UM0

(´・ω・`)「(襲われている……のか?)」

(´・ω・`)「(野盗だな……数は……3人)」

ショボン=アーリータイムズは、自分の手の平をじっと見つめた。
武器と言えるような一切を所持していない。だがいざとなれば
凶暴極まりない妖魔、オーガですらも撃退できる程の魔術を使えるのだ。

常々冴え渡った勘を見せる彼だが、この時ばかりは思案にあぐねていた。

(´・ω・`)「(……助け出そうというのか、この非力な身で……?)」

自分の心に芽生えた正義感の為とは言え、3人の野盗と渡り合えば
命の危険を伴うだろう。最悪、身包みを剥がされて亡骸を野に晒されるだけ。
本来強力な”魔術”を使う彼ならば、その限りではない筈なのだが───

153以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:26:16 ID:cEOPo.UM0

「離し……離してッ!!」

どうやら、けたたましく喚く彼女の様子から、事は一刻を争うようだ。

先ほどちらりと覗いた薄汚れた修道服を見る限り、教会の人間だろう。
穢れを知らぬ彼女らが、このままでは卑怯な野盗どもの慰みものとして、
いずれ抵抗する気力すらも根こそぎ奪われる程の憂き目に遭ってしまうのは、
苦々しくも想像に易かった。

(´・ω・`)「(……だが、見過ごせるはずもない)」

周囲に助けを求められる場所などないが、一度だけ見渡してみる。
そこで、手近な場所に落ちていた自然石の存在に気づいた。

両手にすっぽりと収まる程度のその石を手に取ると、一度頷く。

154以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:26:35 ID:cEOPo.UM0

(´・ω・`)「(使えるな)」

「いいの……!?それ、食いちぎってやるわよ!?」

(´・ω・`)「(やれやれ……威勢の良い事だ)」

「やッ!やめ…あんたらッ!死んだら絶対地獄に落ちるんだから!!」

(´・ω・`)「(ならそれに甘えて、もう少しだけ機を待たせてもらうとしよう)」

野盗どもに女が浴びせる罵倒の数々に、ショボンは思わず苦笑を覚えた。
だが、必ず助け出す。一度決めた事は必ずやり遂げる性分だからだ。

いずれ訪れるであろう好機だけを狙い済まして、
ショボンは洞窟の入り口へと、少しずつ近づいて行った。

155以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:27:09 ID:cEOPo.UM0

───

─────

───────

どうにか子供だけでも逃す事が出来た。
だが、この野山をぼろの布切れ一枚羽織って駆け回るというのは、
年端もいかぬ幼子だというのに、随分と辛い事を強いてしまったか。

しかし、こちらも今はそれ以上に大変な状況だった。

結局自分だけ逃げ遅れてしまったツンは、一番の体格を誇る大男に、
軽々と片手で洞窟の中へと押し込められてしまっていた。

すぐに地面へと組み伏されると、子分格らしき二人が腕を伸ばして、
じたばたと抵抗し続けるツンの四肢を拘束する。

ξ#゚⊿゚)ξ「や、やめなさい! 本当にただじゃおかないんだからねッ!」

「えひゃひゃひゃ、随分と元気が有り余ってるじゃねぇか」

「こんなひらひらした服で俺たちから逃げようなんて、相当イキがいいぜぇ?」

156以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:27:30 ID:cEOPo.UM0

「ひゃひゃ……こいつぁいい。しかもこの女、どうやら修道女だぜ?」

ツンが纏うは修道服、所々に黄金色の装飾やワッペンが施されている。
その為、そこらの庶民と比べるとかなり特異ななりをしていた。

三人の山賊達は、それにようやく気づいたのだった。
物珍しそうに唸りながら、気丈に抗うツンの顔からその足先までもを
じろじろと舐めるようにして眺め始める。

その視線にさえ激しい嫌悪感を露にして、ツンは毅然と睨み返す。

「いやぁ……たまんねぇ、まさか神様の使途とヤレるなんてな」

「ってこたぁ勿論、初物なんだろうなぁ……うひゃひゃ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「(……下劣極まりない……本当に、同じ人間なの?)」

若さという目に見えぬもの、さながらそれ自体が光沢を放っているかのように
瑞々しさが溢れるツンの柔肌を、欲望のままに力づくで貪ろうとする山賊達。

食欲が性欲に置き換わっただけで、傍目から見るには低級妖魔の
オークらと、この山賊達には大きな相違はないだろう。

ツンの瞳に映されている男たちの下卑たニヤつきに、思わず、
救われるべき人間ばかりではないのか、という疑問が頭を過ぎた。

157以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:27:52 ID:cEOPo.UM0

薄汚い手が、ツンの衣服の裾を捲り上げようと次々に伸びる。
必死に手で押さえながら、足で何度も蹴り上げ、全力で抵抗した。
だが、自分の力ない攻撃では、怯ませる事すらも出来ない。

「へっへ……まさかこんな山奥に、こ、こんな良い女がいるたぁよぉ」

「そら、祈ってみなよ! 案外助けてくれるかも知れねえぜ?」

「そりゃあいい、ひゃっひゃひゃッ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「い、いやッ……」

───助けて、誰か。助けて、神様!───

その願いが聞き届けられる事はないのだろうと、心は既に挫けつつあった。

いよいよ気色の悪い感触が、ツンの白い太腿へとのたうちながら入り込んでくる。
身体全体をびくっと硬直させ、そうして抗う事も忘れてしまった。

何も考えられない、身体を這いずりまわる、恐怖だけが──

ξ ⊿ )ξ「い……」

ξ;⊿;)ξ「……いやぁッ……!」

158以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:28:11 ID:cEOPo.UM0

自身の身体が蹂躙され、穢されていく恐怖に震える。
短い悲鳴と共に、自然と瞳からは涙がこぼれていた。

「がぁっ」

ξ;⊿;)ξ「……?」

自分の太腿へ手を這わせていた一人の男が、突然素っ頓狂な声を上げた。
そして、白目を向いてゆっくりとこちら側へ倒れてきた為、怯えながら身をかわす。

その自分の元へごろごろと転がってきたのは、手の平大の大きさの岩だ。

「な、なんでぇ!?」

どこからからか飛んできた石が見事に男の頭部を直撃し、
そのまま一人は失神したようだった。

ツンの衣服を捲くりあげていた一人が大男に目で促されると、
周囲の様子を確認する為、恐る恐る入り口まで歩いていった。

そして外にまで出た時、突然叫び声を上げる山賊の一人。

159以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:28:29 ID:cEOPo.UM0

「な、なんでぇ! おまッ……!」

ごつん。

こちらまで響くほどの鈍い音の直後、そこで男の言葉は途切れた。
頭を抑えながら地面へと力なく倒れこむと、すぐに気を失ったようだ。

「チッ……なんだぁ、テメェ?」

残された一人の山賊、大男は思い切り顔をしかめながら舌打ちした。
同時に腰元にぶら下げた剣を、すらりと抜き出す。
そして睨みつける視線の先に、男は、居た。

(´・ω・`)「……もっと他愛無いと思ったけど、案外難しいものだね」

洞穴内に差し込む逆光を背に立っていたのは、外套に身を包む一人の旅人風の男。
両手に大きな石を抱えている。先ほどの男は、脳天にそれを振り下ろされたのだろう。

こんな人気の無い場所で助けが来るなど、そうある話ではない。
諦めかけていた折のこの事態に、ツン自身も驚きを隠せなかった。

「……何モンだッ、テメェ!!」

(´・ω・`)「ま、立場上は君達以上の悪党なんだけど……」

160以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:28:51 ID:cEOPo.UM0

(´・ω・`)「卑劣な真似を見過ごすことが出来ない、損な性分とだけ」

そう言って石を顔の近くで構えると、重心を少し落とした。
戦うつもりなのだ。そんな、武器と呼ぶにはあまりに可哀想な石ころ一つで。

一方の大男はろくに手入れもしていないであろうが、剣を持っている。
体格でも武器でも劣るその男がやられてしまうのは、火を見るより明らかだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「……無謀よ!……逃げてぇっ!」

「御託並べてんじゃねぇッ!」

ツンの叫び声と同時に、山賊は剣を手に突っ込んで行った。
上半身に向けて振るわれたそれから、旅人は辛くも身を逸らす。

(;´・ω・`)「ふッ!!」

続けざまに一振り、二振り。
もみ合うようになりながら、懐に潜り込んでそれらも避けた。
だが、その直後に膝で腹を蹴り上げられる。

(;´・ω-`)「…ぐぉッ」

低く呻き怯んだそこで、間髪入れず山賊の拳が顔面に振り下ろされた。
勢い良く吹き飛ばされると、そのまま地面にずざ、と引きずられる。

ξ;゚⊿゚)ξ「…危ないッ!」

(;´・ω・`)「!!」

161以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:29:13 ID:cEOPo.UM0

旅人はまだ立ち上がれない。だが、山賊はその顔に向けて
容赦の無い剣の一撃を、一直線に振り下ろしたのだ。

眼前で血の飛沫が舞うのを想像し、ツンは思わず目を背けてしまった。
直後に、金属が叩かれる破裂音。ややあって、恐る恐る瞼を開けた。

「……おぉ。しぶてぇなぁ」

(;´・ω・`)「ふぅッ……ふぅッ……」

だが、まだ聞こえる荒い息遣いの方を覗いたツンの瞳には、
顔の中心で石を構え、剣の打ち込みを辛うじて弾いた旅人の姿があった。

だが、たった一度凌げた所でここから巻き返す事など出来やしないだろう。
顔の前で掲げていた石を取り落とし、その両手を力なく垂れる旅人。
もはや、諦めてしまったのだろうか。

だが、仕方の無い事だ。たった一人で二人の山賊までをも
石ころだけで倒してのけた、その事実だけで賞賛に値する。

「さてと……喉か、心臓か、目か。どこをえぐられてぇんだぁ?」

そう言って山賊は旅人の肩を踏みつけながら、
剣の先端でぺたぺたとその頬を叩く。

(;´・ω・`)「………」

ξ;゚⊿゚)ξ「だ……駄目……!」

162以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:29:33 ID:cEOPo.UM0

今度こそ、自分を助けようとしてくれた旅人は殺されてしまうだろう。
光景を目の当たりにしたツンは立ち上がり、山賊の背中へと叫ぶ。

ξ#゚⊿゚)ξ「私なら、どうなってもいい……」

ξ#゚⊿゚)ξ「だから、その人をすぐに離しなさい!」

力一杯に怒気を孕んだツンの叫びも、山賊からしてみれば
まるでその場に漂う空気のようなものぐらいにしか感じていないだろう。
肩越しに冷たくツンを一瞥する、濁った瞳。

「駄目だな」

ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ、どうすればッ──!」

「こいつが死ぬまで大人しく待ってな、すぐに可愛がってやるからよ」

それだけ言うと、山賊はすぐに視線を戻してしまった。

この状況では旅人自身が逃げ出す事も不可能。
ましてや、ツンの柔腕では何一つ力になれる事など無い。

自分を助けてくれようとした人間が殺される、そんな場面に
あっても、ツンにはただ指を加えて見ている事しか出来ない。
そして、その後で自分は辱めを受け、身も心も汚されてしまうのだ。

俯いて肩を落とし、ぼそりとツンは呟いた。

163以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:29:52 ID:cEOPo.UM0

ξ;゚⊿゚)ξ「……何も出来ないじゃない……私なんて……」

そんな無力感が、今回の旅の出立を決意した自分自身への
自責の念となって、心を押しつぶしそうなほどの重圧で、圧し掛かっていた。

顔を両手で覆うと、感情が昂ぶり、こみ上げてくる。
指の隙間からは、またも涙の雫が地面へと伝い落ちた。

ξ ⊿ )ξ「(なーんだ……)」

ξ ⊿ )ξ「(結局自分なんか……誰の役にも立てないんだ)」

(´・ω・`)「………」

膝から地面へと崩れ込んだツンを、一瞬だけちらりと気にかける旅人。
剣を突きつける山賊の頭を通り越し、どこを見るでもなく天を仰ぎながら
淡々とした口調で、ツンにゆっくりと語りかける。

(´・ω・`)「……どうやら、君は優しい心の持ち主のようだね」

ξ ⊿ )ξ「………?」

(´・ω・`)「普通の人間ならば、まず自分が助かる事に血眼になる状況だ」

「うるせぇぞ」と、剣の切っ先を彼の喉へと向ける山賊だが、
極めて平静を保ったまま、彼はなおも語り続ける。

164以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:30:18 ID:cEOPo.UM0

(´・ω・`)「それを、自分が助かるなどどうでもいい、とばかりに君は言う」

(´・ω・`)「なればこそ命を投げ打つ……その覚悟を決める、価値もある」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

「お喋りの時間は終わったぜ?そろそろ、死んでもらおうかい」

山賊が、いよいよ頭の後ろまで剣を振り上げる。

だが、命を投げ打つと、そう口にした今の旅人の顔は、
これから死にゆく覚悟を決めた人間のそれには、思えなかった。

一頻りを語り終えた後、これまでよりも数段素早い口調で、
それでも一言一言をはっきりと口にしながら、何事かを捲くし立てた。

(´・ω・`)「……【我が身体を奔る魔力の奔流よ】」

そう唱えて、垂れていた手を胸の前でかざした。

(´・ω・`)「【力を容と為し 魔を以って撃ち貫け】」

指を形作り、自分に剣を突きつける山賊の方へと指した。

(´・ω・`)「……【魔法の矢】ッ」

ξ゚⊿゚)ξ「ッ!?」

165以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:30:43 ID:cEOPo.UM0

一瞬の閃光が、洞窟の内部を一瞬照らした。
その光の源───光の帯が束なったかのようなそれは、
まるで光で模られた、一本の矢のようなものだった。

「……!? うぎゃあぁッ!」

その矢は、男の肩口あたりを目掛けて文字通り貫いた。
質量を持たぬはずの光が、誰の目にも明らかな外傷を負わせたのだ。

ξ゚⊿゚)ξ「これは……」

肩を撃ち貫かれた痛みに喘ぎ、苦痛に顔を歪める山賊は、
すぐに剣をその場にからころと取り落とす。

「がッウぐぅッ……て、てめぇ……魔術師か!?」

(´・ω・`)「やれやれ……」

地面に片膝をつき、傷口を手で押さえながら、山賊は顔を歪める。
事もなげに、旅人は外套の土ぼこりを手で払いのけながら、立ち上がった。

(´・ω・`)「……さっき自分でも言ったが、僕は君達なんかより
      よっぽどタチの悪い悪党なんだ。手配書が出回る程にね」

(´・ω・`)「君の心臓を今のように射抜いた後……物言わぬ屍にした
      後でも、自分の意のままに君達の死体を操る事が出来る」

166以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:31:08 ID:cEOPo.UM0

その手から放った光の矢によって瞬く間に形勢を逆転させた男は、
途端に饒舌になって喋りだした。その内容は、随分と物騒なものだが。

(´・ω・`)「だが、今は君達なんかに興味は無いんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

そう言って、ちらりとツンの方へと視線を送る旅人。
片目をぱち、と一度だけ深く閉じこみ、合図を送っているのだ。
垂れ眉のこの旅人が、ツンの目にはそれほどの悪漢には見えなかった為に
すぐにその合図に気づく事が出来た。

(´・ω・`)「それよりも、そこにいる心の綺麗なお嬢さんが、
       僕の実験の、実に良い素体になってくれそうなんでね……」

(´・ω・`)「だが、どうしてもこの場を退けないというのなら、仕方ない」

(´・ω・`)「君達の身体の器官一つ一つを取り出して、実験材料にさせてもらうとするか」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

唖然としながらも、どこか台詞めいた言葉を語るその光景をただ見ていた。

先ほどのこの旅人の様子から見ても、どうにも嘘くさい話にしか聞こえない。
一応は自分も怯える素振りなど見せて、山賊達へのポーズを取った方が
良いのかとも思ったが、どうやらそれは杞憂だった。

「ひッ、や、やめてくれッ!」

167以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:31:27 ID:cEOPo.UM0

予想以上の反応だった。肩を穿たれた大男は、本気の怯えを見せる。
その豹変ぶりではなく、先ほどの力に対しての畏怖が芽生えたのだろう。
山賊の反応を見て、手の平を返したかのようになおも旅人は続けた。

(´・ω・`)「それなら、お仲間を連れてここから立ち去るといい」

(´・ω・`)「その出血量だと、下手をしたら3刻もすれば命に関わるよ」

(´・ω・`)「すぐに山を降りて、どこかで手当てをお勧めするなぁ……」

口元を手で隠しながら、小さく笑みをこぼした。
これが演技だとするならば、ツンの目にはいまいちなものだが。

しかし、その顔を見上げる山賊には、自分の目の前に立っている
不敵に笑うこの旅人が、よほどの大悪党に見えているのだろう。

「お、おい!お前らッ、起きねぇか!」

頭に石を叩きつけられて気を失っていた子分達は、意識も朦朧とした中
強引に引きずり起こされ、連れ出されて行く。

目が覚めたものの、リーダー格のただならぬ慌てふためきように、
一人、二人とたたき起こされると、混乱を抱きつつも、そのままこちらを
振り返る事も無く脱兎の如く洞窟を飛び出すと、山中へと消えていった。

168以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:31:51 ID:cEOPo.UM0

自分達が居る以外、からっぽとなってしまった洞窟の中で、
しばらくの間ぽかんと口を開け、呆然としていた。

(´・ω・`)「……大丈夫かい?」

その問いかけに、ツンはハッと現実へと意識を戻す。
先ほどまで抱いていた絶望感は、今や見事に打ち消されたのだ。

突然自分を助けに現れた、この一人の旅人によって。

ξ;゚⊿゚)ξ「は、はい!」

ξ゚⊿゚)ξ「危ない所を助けて頂いて、本当にありが──」

ぺこりと頭を垂れるツンの仕草は、手で遮られた。
窮地をたった一人で救ったというのに、見ればその表情は晴れやかなものではない。

(´・ω・`)「いいのさ、自分が好きでやったことだ」

(´・ω・`)「それより……よく聞いてくれ」

(´・ω・`)「これから、僕は死ぬかも知れない」

ξ゚⊿゚)ξ「は?」

169以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:32:10 ID:cEOPo.UM0

(´・ω・`)「正確には”死ぬ程の苦痛にのた打ち回る”だろう」

(´・ω・`)「だが、あいにくと君ではどうする事も出来ない。
       だから、僕の事は気にせず下山するといい」

ξ;゚⊿゚)ξ「へ?」

(´・ω・`)「……発症するまでの感覚がこれまでに無く長いな。
      これは、いよいよ覚悟が必要そうだ」

ξ;゚⊿゚)ξ「あ、あのそれはどういう……」

まるで事態の飲み込めていないツンを置き去りにして、
男は一人ごちる。胸元に手を置き、身体の節々を見て、
何かを確かめるように厳しい表情を崩す事はない。

完全に置き去りにされ、状況の理解が出来ぬツンを傍目に
旅人が再び口を開きかけた、その時に異変は起きた。

(´・ω・`)「さっき僕が、命を賭ける価値があると言ったのは、こういう……」

170以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:32:28 ID:cEOPo.UM0

(;´ ω `)「ッ!? ……ぐぅッ、ごほぉッ!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ」

突如として胸を押さえ、旅人の膝は地面へと崩れ落ちてゆく。
手足はぶるぶると痙攣し、手の平を一心に見つめて、正気を保とうとしているようだ。

(;´ ω `)「がはッ!ぐぶぅッ」

だが、すぐに地面へと横ばいになると、口からは夥しい量の血を吐き出した。
声にならない声を上げて、先ほど言っていたようにのたうち回り始めたのだ。

何が原因なのか、医学的な知識を持ち合わせていないツンには理解が出来ない。
だが、命が危機的状況に晒されているのだという事だけはすぐに分かった。

ξ;゚⊿゚)ξ「大丈夫ですか!?しっかり……しっかりしてッ!」

苦しそうに押さえている胸元の手を握り、その身体を
寄り起こして、背中をさする程度の事しか出来ない。

口からは血泡を吹き、胸を掻き毟るようにして苦痛に喘ぐ旅人。
一目に異常な状態だというのは分かったが、解決すべき策は見当たらない。

薬もなく、医者も居ない。
今ここに居るのは、自分の身一つだけ。

そう、今この旅人を救えるのは自分しかいないのだ。
祈ることしか出来ない、この自分だけしか。

171以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:32:51 ID:cEOPo.UM0

(;´ ω `)「ぅ……うぅッうぅ……ッ!」

獣のようにうなり声を上げ、目はもう白目を剥いている。
意識すらないのかも知れないその彼の手が、偶然なのかは分からないが
ツンの白く小さな手を、ぎゅっと握りしめた。

ξ;゚⊿゚)ξ「そっか……苦しいんだよね……死にたく、ないよね……」

強くツンの柔指を握り締めるその手からは、体温とともに、徐々に
力も抜けていっている。死の淵で、必死にもがいているのだ。
ツンの手がまるで生死の境目であるかのように、離さない。

ξ゚⊿゚)ξ「……そうよ」

ξ゚⊿゚)ξ「祈る事しか出来ない私でも、たった一つ可能性はあるじゃない」

力ない手を握り締めながら俯くツン、そう呟いた彼女が
再び顔を上げたそこに、まだ諦めの色はなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「ただただ来る日も来る日も一心に祈りを捧げて……?」

ξ゚⊿゚)ξ「やがて神に見初められた信徒だけが起こせる”聖ラウンジの奇跡”?」

ξ#゚⊿゚)ξ「……舐めんじゃないわよッ!」

172以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:33:11 ID:cEOPo.UM0

ξ#゚⊿゚)ξ「私はこの人に助けられたんだから……だから、絶対助ける」

ξ#゚⊿゚)ξ「普段からいいだけ沢山の人たちに祈らせてるんだから、たまにゃあ
      こっちの言い分を聞いてくれたって、罰は当たらないわよね!?」

この大陸で儚く消えていく命たちに対してしてやれる事はないのかと、
教会の窓から物憂げに外を見ながら浸っていたような、弱い想いではない。

自分の窮地を救ってくれた人間が自分の目の前で命の危機に瀕して
いるというのに、自己の力不足に脱力していたさっきの自分ではない。

今はただ、現実を変えたいと───

そう、”奇跡を起こす”という事を、己に課して祈った。

ξ゚⊿゚)ξ「(……私の声に、耳を傾けて下さい)」

ξ-⊿-)ξ「(そしてどうか、お聞き入れ下さい……)」

ξ-⊿-)ξ「(聖ラウンジの神よ、”ヤルオ・ダパート”よ……)」

ξ-⊿-)ξ「(この地に住まう、救いをもたらす我が主よ……)」

ξ゚⊿゚)ξ「(もうすぐ死にそうなこの人の命を……どうか、助けてあげて下さい)」

心の中で呟きながら、ツンの柔腕に力なく身体を預ける旅人の顔を見る。
呼吸も困難になってきたようだ。唇は震えて顔は青ざめ、その瞳は
もはや空ろで、意識も失っていた。

173以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:34:05 ID:cEOPo.UM0

懇願したそれは、自然と口に出ていた。
今、救いが必要なのは”みんな”じゃない。

危険を顧みずに必死に自分を救い出してくれた、ここにいる旅人なのだ。

ξ-⊿-)ξ「一生の……お願いです」

数十年に渡って従順な聖ラウンジの信徒であり続けた父ですら、
実際に主、ヤルオ・ダパートの声を聞けた事は無いというのにだ。

今、彼女は真に神の信徒として見初められた存在でなければ
獲得する事の出来ぬという聖ラウンジの奇蹟を起こすため、ただ祈った。

呟いた後、空虚な沈黙が支配する。
木霊する自分の祈りは、まだ届いていない。

ξ-⊿-)ξ「………(すぅぅぅぅぅ)………」

大きく息を吸い込んだあと、心を落ち着かせて、また一心に強く、強く祈った。
体温が冷たく引いていく旅人の手を両手で握りながら、その手ごと額に当てて祈った。

ξ ⊿ )ξ「奇跡を、起こして───」

今一度、願いを言葉にしたその瞬間、ツンの意識は───空を飛んだ。

174以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:34:24 ID:cEOPo.UM0

───

──────

─────────

気がつけば、真っ白な空間に自分が居る事に気づいた。
身体の感覚がないのか、それとも、この場には自分の身体自体がないのだろうか。

ただただ真っ白に、うすぼんやりと光がそこかしこを照らす場所。
まるで夢を見ているかのようだ。だが、そんな事すらも認識できない程に、
現実との境があやふやな、不可思議な場所だ。

ややあって、頭の中に直接語りかける声が、近づいて来るように感じた。
耳を澄ますように意識してみれば、確かに声が聞こえるのだ。

175以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:34:45 ID:cEOPo.UM0



       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  /   (●)  (●)   \
  |      (__人__)    | ──我こそはヤルオ・ダパート──
  \     ` ⌒´     /

それは、煌びやかな白い光たちに引き連れられるようにして、
ぼんやりとその大きな顔を浮かび上がらせた。

この場に自分の身があるのであれば、あまりの驚きに大声を上げてしまうだろう。
限りなく非現実的なこの状況だが、一つだけ確信できていた事があった。

今自分は、聖ラウンジが崇める神、”ヤルオ・ダパート”の声を聞いているのだと。

176以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:35:08 ID:cEOPo.UM0


       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  /   (●)  (●)   \
  |      (__人__)    | ──そなたの、一点の曇りなき想いは届いた──
  \     ` ⌒´     /




       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  /   (●)  (●)   \
  |      (__人__)    | ──他者の誰かを助けたいと真摯に願うそなたにならば、施そう──
  \     ` ⌒´     /

語りかける声は、どこかやさしく自分の存在を包んでくれるような、
そんな暖かさすら感じる。心地よい安心感だが、すぐに現実へと
帰らなければならない、というような焦燥も、同時に抱いていた。

177以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:35:36 ID:cEOPo.UM0


       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  /   (●)  (●)   \
  |      (__人__)    | ──聖ラウンジの秘術、奇蹟を起こす術を、そなたは望むか──
  \     ` ⌒´     /

       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  /   (●)  (●)   \
  |      (__人__)    | ──そなたが願えば、切なる祈りは確かな力となる──
  \     ` ⌒´     /

”聖ラウンジの秘術”、”奇跡を起こせる力”
聖ラウンジの神、このヤルオ・ダパートを信仰するものならば、
きっと信徒以外にも誰もが欲する”力”となり得るだろう。

それを何と言ったか、この自分に授けると言ったのだ。
自分は”力”などいらない、だが、それで誰かを救えるというのなら──

”救い”をもたらす”力”ならば、欲すると、無意識でツンは願った。

178以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:36:03 ID:cEOPo.UM0
       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  /   (●)  (●)   \
  |      (__人__)    | ──そうか、確かに授けた………我が名はヤルオ・ダパート──
  \     ` ⌒´     /

そしてどうやら、ヤルオ・ダパートはその願いを聞き入れたようだった。

       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  /   (●)  (●)   \
  |      (__人__)    | ──かつてヴィップの地で生まれし、善なる神──
  \     ` ⌒´     /



       ____
     /⌒  ⌒\
   /( ●)  (●)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \  ──いずれまた会おうお 心きれいな娘さん?──
  |     |r┬-|     |
  \      `ー'´     /
           
最後に、その屈託ない笑みと、少しどころでなくくだけた神の言葉を耳にした。

身体全体が、真っ黒な渦に吸い込まれていく。
来た時と同じように、意識は暗闇の世界へと飛ばされる───

179以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:36:25 ID:cEOPo.UM0

───

──────

─────────

ξ ⊿ )ξ「………ん!」

ツンが意識を再び取り戻した時、そこはなんら変わらぬ景色だった。

(;´ ω `)

腕の中には、まだ旅人が辛うじて息をしている。
意識を失ってはいるが、なんとか呼吸だけはしているのだ。

今、自分は、一瞬だけ夢を見ていたのか──

今しがたの夢現の出来事と現状とが混ざり合い、記憶に
混乱が生じていた。一つ一つ紐解こうと思案を始めたところで、
視界に映った光景に更なる混乱を得る。

ξ;゚⊿゚)ξ「な……何?」

自身の身体から、きらきらと時折煌びやかな光がじんわりと
周囲に放射されている。やがて細い線となり消えていくそれだが、
あとからあとから、次々と泉のように湧き出てくるように。

ξ゚⊿゚)ξ「まさか、本当に……」

180以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:36:59 ID:cEOPo.UM0

これならば、いける。
この時、ツンは確信を得た。

迷うことなく、抱きかかえていた体を地面へとそっと横たえると、
彼の胸元を全面に渡って覆っていた包帯を取り払った。

ξ;゚⊿゚)ξ「!」

そこで彼女が見たのは、胸板を突き破ろうとするようにして
暴れるどす黒い発光体が、皮膚のすぐ下で縦横無尽に動き回っている光景。

だが、実際に体内に何かが入っている訳では無さそうで、
実体も無さそうで、まるで何らかの呪いをかけられたかのようだった。

ξ;゚⊿゚)ξ「生き物、なの?それとも……」

(;´ ω `)「………ッ……!」

あれこれと詮索を入れている時間は、もうほとんど無さそうだった。

胸の中で何かが暴れるたび、彼の身体はびくんびくんと上下している。
こんな状況では、たとえ医者であっても快癒させる事は不可能だろう。

だがもし仮に、”奇蹟”が起こり得るのならば───

ξ゚⊿゚)ξ「……どうみたって悪性の物よね、これは」

ξ゚⊿゚)ξ「なら、てっとり早くこの人の身体から出て行きなさい」

181以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:37:30 ID:cEOPo.UM0

ξ゚⊿゚)ξ「(……見てなさいよ)」

ξ-⊿-)ξ「(今の私になら……出来ると信じるのよ)」

黒の発光体が怪しく蠢くその胸部へと、そっと両手をかざした。
そして目を閉じ、心の中で祈りを捧げながら、数言を唱える。

ξ-⊿-)ξ「……【聖ラウンジの偉大なる名の下に 命ずる】」

ξ-⊿-)ξ「【消え去れ 聖者の命を脅かす 悪しき存在よ】」

ξ゚⊿゚)ξ「【そしてこの者の生命に 再びの光があらん事を】”ッ!!」

一点の曇りなき願いの塊を、心の中で一息に爆発させた。

─────そして、辺りは光に包まれる。

とても眩く激しい光が、暖かく優しい光が、満ちる。
手をかざしていたツン自身が驚いてしまうほどだったが、
怯む事なく、蠢く発光体を消し去る事だけを念じた。

ξ;゚⊿゚)ξ「苦しんでいるの……?」

ツンが創造した奇蹟の前に、今まで以上に暴力的に這い回る胸の影。
もう、すぐにでも胸を突き破って飛び出てきそうなほどに。

(;´ ω `)「………かはっ!」

旅人は呼吸を取り戻したのか、深く息を吐き出すように一度咳き込む。
それが、きっかけになったかのようだった。

182以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:37:50 ID:cEOPo.UM0

ついにその影は、奇蹟の光に吸い上げられるようにして、
ゆっくりとツンの目の前にまで姿を現した。

ξ;゚⊿゚)ξ「こんなものが……身体の中に……」

ピギョォッ ギョォーッ

浮かび上がった不定形が、蠢く。

やはりこの気色の悪い影は、ある種意思を持っているのか、
小さな声ともつかぬ奇怪な音を、どこかから発しているのだ。
聞いているだけで、肌に怖気が走ってしまう程に不快な、その声。

(;´ ω `)「………ハァ………ハァ……」

ξ ⊿ )ξ「(良かった……本当に)」

ふと旅人の様子を気に掛けると、胸から異物が取り除かれた為か
徐々に肌は赤みを取り戻しつつあり、呼吸も先ほどよりか落ち着いていた。

後は、”これ”を完全に消し去るだけだ。

ピギョォッ ピギャァッ

ξ゚⊿゚)ξ「さて……なんだか可哀想な気もするけど」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたは、きっと育っちゃいけない存在なの」

ξ-⊿-)ξ「だから───さよなら」

183以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:38:11 ID:cEOPo.UM0

眼前に浮かび上がったそれに向けて、両手を突き出す。
たったそれだけの事で、光の中で影は一層もがき苦しんだ。

光の粒に溶け込んでいくようにして、やがて───それは完全に消え失せた。

────

────────

────────────

(;´・ω・`)「こいつは、驚いたな」

それから程なくして意識を完全に取り戻した旅人は、
意識を失っていた間の事の顛末をツンから聞き、驚きに
自分の身体と、ツンのその表情を幾度も見比べていた。

ξ゚⊿゚)ξ「信じられ……ませんか?」

確かににわかには自分でも信じがたいと、ツンは思う。

父がそうであったように、幾年、幾歳月を信仰に使い果たした
名のある信徒であっても、かの聖ラウンジの秘術を用いる術を
得られる者など、ほんの一握りの人間だけなのだ。

184以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:38:33 ID:cEOPo.UM0

まだ齢にしてたった20の自分がその中の一人に選ばれた。
その事実に対して、未だ実感が沸いて来ていなかった。

(´・ω・`)「いや……勿論信じるよ。この胸にあったはずの
       烙印が、嘘のように無くなっているのが何よりの証拠さ」

(´・ω・`)「そして───本当にありがとう」

ξ゚ー゚)ξ「こちらこそ……お互い様です!」

そこで、二人に初めて笑みがこぼれた。
お互いがお互いを助け合い、誰も死なずに住んだ。

聖ラウンジの秘術を授けられた、ツン=デ=レイン。
笑みが浮かぶと共に、彼女の中でようやくその事への実感が、
それが誰かを救えるという事への喜びとして芽生えつつあった。

(´・ω・`)「(それにしても……封魔の法───そういう事だったか)」

185以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:38:52 ID:cEOPo.UM0

(´・ω・`)「(人の身に、魔力を食い物にする妖魔の類を封じ込める……)」

(´・ω・`)「(それにより、魔術を使う際の精神力を糧に成長し、
        やがては対象の術者を死に至らしめるという訳か……)」

(´・ω・`)「……やはり恐るべき才能だな、モララー・マクベイン」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

考え事をしていたかと思えば、ぼそりと何事かを呟いた
旅人の様子に、ツンが一瞬怪訝な表情を浮かべた。

(´・ω・`)「いや失礼、ただの独り言さ。それより──」

そう言って、すっくと立ち上がり外套の砂埃を払って、
ツンの正面へとしっかり向き直った。

(´・ω・`)「自己紹介がまだだったね……”ショボン=アーリータイムズ”、
       ご周知かとは思うが、これでも魔術師の端くれさ」

ξ゚ー゚)ξ「”ツン=デ=レイン”、聖ラウンジの信仰者です。
     大陸の各地を旅して、少しでも自分が力になれればな、って」

(´・ω・`)「そうか……きっとなれるさ。その力は、何物にも代え難い」

186以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:39:34 ID:cEOPo.UM0

ξ゚⊿゚)ξ「あなたも……旅を?」

(´・ω・`)「まぁ、今の所はね。同じ屋根の下で研究していた同僚に
      一杯食わされて、貴重な研究時間を取り上げられてしまったのさ」

ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん……よくわからないけど、大変ですね」

(´・ω・`)「君も、ね」

うん、と頷き、ショボン=アーリータイムズは洞窟の外を眺めた。
天候が既に落ち着いているのを見て、下山の準備をしようと外へ
投げ出してきた自らの手荷物を取りに行きかけた所で、出口に立ち止まる。

(;ノoヽ)「あう……?」

(´・ω・`)「……おっと」

おずおずと洞窟の入り口から覗き込んできた子供の目が、ショボンのものと合った。
少しうろたえ気味に、背後のツンの表情を伺った。

ξ゚ー゚)ξ「……心配して、見に来てくれたんだ?」

(´・ω・`)「……なるほど、こやつめ」

そう言って子供の頭に手を置こうとしたショボンの脇を素早く通り抜け、
奥に立つツンの傍へと駆け寄ると、その背後に隠れた。

ξ゚ー゚)ξノoヽ)「おあう~」

187以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:39:59 ID:cEOPo.UM0

ξ゚ー゚)ξ「大丈夫、怖い人はもう居ないから」

(´・ω・`)「ふふ、懐かれているようだね……どうやら、耳が聞こえないようだが──」

ξ゚⊿゚)ξ「──私、この子を連れて街に行きたいと思います。
     聖ラウンジ教会なら、きっと預かってくれると思うから」

恐らくはやり遂げるだろうという、強い精神力の篭ったツンの一言。
それにショボンは、一度だけ大きく頷いた。

(´・ω・`)「承知した……それなら、ここからだとヴィップの街が近い。
       早ければ一日、遅くとも、まぁそれに加えて数刻だろう」

ξ゚⊿゚)ξ「ヴィップの街ですか……一度、行ってみたかったんです。
     ヤルオ・ダパートはかつてその地で生まれたって話だし」

(´・ω・`)「うん。少し休みたい所だろうが、山の天候は崩れやすいと聞く。
      途中で山小屋の一つくらいはあるだろうから、そこで休もう」

(´・ω・`)「もしさっきの野盗共と出くわしたら、本来の力を取り戻した
       この僕が、より華麗に撃退してお目にかけるとしよう」

ξ゚⊿゚)ξ「…えっと?ショボンさんは……」

188以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:40:21 ID:cEOPo.UM0

(´・ω・`)「僕の胸の烙印、”封魔の法”を打ち消してくれたお礼とでも
      考えてくれればいい。女性と子供の二人では、危険過ぎる」

ξ゚⊿゚)ξ「……ありがとう、ございます!」

(´・ω・`)「さて、出立しよう」

ショボンが支度を整え終わるのを待って、ツンの後ろで
隠れていた子供は、一瞬だけショボンの前に立って、一言。

(ノoヽ)「あ……”あうがおうっ”」

(´・ω・`)「………?」

ξ゚ー゚)ξ「………!」

耳が聞こえないために、正しく声を発音する事ができない子供の
その一言は、どうやらツンの方にだけは伝わったらしかった───

189以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:40:45 ID:cEOPo.UM0

─────

──────────

───────────────

こうして、奇妙な取り合わせの三人は山を降りるために、
”交易都市ヴィップ”を目指すために、ゆっくりと歩き始めた。

疲労感が、なぜだか心地よい。
充足感が、澄んだ風と共に頬を撫ぜる。

(´・ω・`)「あまり走り回って、滑落するなよ?」

少し砂埃で黄色みがかった修道服の裾をぎゅっと結び、
あちこちへと興味津々に駆け回り、ショボンとツンの後を
あとからついて来る聾唖の子供の姿を目で追いながら、想う。

ξ゚ー゚)ξ「(そうよ……救いを求めるばかりが信仰じゃない)」

ξ-ー-)ξ「(私は救われるよりも……こうやって、誰かを救いたい)」

───彼女の胸の中を今、鮮やかに彩られた清風が駆け抜けていた───

190以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 03:42:19 ID:cEOPo.UM0
   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

            第0話(4)

          「誰が為の祈り」


             ─了─


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