ホーム » 作品一覧 » ( ^ω^)ヴィップワースのようです » 第1話 「名のあるゴブリン」

( ^ω^)ヴィップワースのようです 第1話 「名のあるゴブリン」

270以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:08:45 ID:qXDhOR0g0

   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

            第1話

         「名のあるゴブリン」

271以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:10:03 ID:qXDhOR0g0

ヴィップの街からおよそ2日を歩いた距離。
マスターによればそこに、”リュメ”の街はあるという話だった。

馬車を使えばわずか1日で辿り着ける道のりなのだが、
そんな贅沢な事は楽園亭のマスターに、朝晩と散々ツケで
飯を食わせてもらったブーンの懐具合では、出来ようはずもない。

己の見聞を広めるためにも、冒険者にとっては結局、自分の足で歩くのが一番なのだ。

この道は、リュメの街から交易都市ヴィップ、そこから更に北の城壁都市、バルグミュラーのある
ブルムシュタイン地方へと行商して歩く商人達が多く行き交う。

その為治安も悪くは無く、時折道すがらでは一般人の姿も目についた。

早朝に宿を出立してからというもの歩き続け、気づけば、
木々の合間からは漏れる陽光が、燦燦と頭上を照りつけていた。

( ^ω^)「暑くなってきたおね。もう、昼かお」

272以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:10:48 ID:qXDhOR0g0

これまで一度も休憩を挟むことなく、道のりにすれば、4分の1も踏破した所か。
ここらで少し休むとしようか、と近場の樹木にもたれて腰を下ろした。
身に着けていた腕甲や手甲の紐を緩め、熱の篭っていた身体に外気を取り入れる。

念の為、所持品なども再度点検しておいたが、問題無い。

毒にも薬にもなる”コカの葉”や、万一怪我をした時に塗りこむ薬草も常備している。
携帯する食料は、マスターからツケで貰い受けたわずかばかりの干し肉だけだが、
2日程度の道のりであればそれでも問題ないだろう。

何しろ、50spしか持たずに故郷の村を発ったはいいが、その後全財産の入った
銀貨袋を落として、ヴィップを目指して旅歩く3日もの間を、沢の水だけで飢えを
しのがざるを得なかったぐらいだ。

( ^ω^)(ありゃあキツかったお……もう御免だおね)

虫や鳥達の声を耳にしながら、そんなつい最近までの自分を振り返っていると、
向こうの方からどこか飄々とした長い銀髪の男がこちらへ歩いて来た。

273以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:11:43 ID:qXDhOR0g0

特に何も思わずその姿を見送ろうと思ったが、自分と目が合ったその男は、
「よう」と馴れ馴れしい口調で片手を軽く向けると、傍まで歩み寄って来た。

「ちょいと、隣に失礼していいかい?」

( ^ω^)「…………」

そう言って、突然自分の隣に座り込もうとするその男。

爪'ー`)「あぁ……その、なんだ」

ブーンの目には実際それほど危険そうな男には見えなかったのだが、
どんな時でも、多少の警戒心は持っておいた方が良い。

そして、自分でも気づかない内に彼に訝しげな視線を送っていたようだ。

爪'ー`)y-「まぁ、そう警戒しなさんなって」

「こいつで一服つこうと思っただけさ」と、一本の煙草を口にくわえると、
取り出した火打ち石を叩いて火を点け、上を向いて煙を吐き出した。

274以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:12:24 ID:qXDhOR0g0

爪'ー`)y-「あー……休憩してるとこ悪いね、邪魔だったか?」

( ^ω^)「いや───気にしないお」

どうやら、とても軽々しい口調ながら、悪い人柄の男では無さそうだ。
少しだけ強張っていた体の硬直を、片足を前に投げ出して、まただらりと解きほぐす。

爪'ー`)y-「お前さん、ヴィップから来たのか?」

( ^ω^)「そうだお。これから仕事の依頼を片付けに、リュメに行くんだお」

爪'ー`)y-「そいつぁ……俺と全く反対だなぁ」

( ^ω^)「ヴィップを、目指してるのかお?」

紙巻煙草の煙を深く吸い込みながら、その横顔を覗き込むブーンの視線に気づくと、
男はあどけない笑みを浮かべて、それをブーンに向ける。

爪'ー`)y-「ああ。実は、冒険者家業を始めようかと思ってね」

( ^ω^)「冒険者……それなら、僕も一緒だお!」

そういうと、銀髪の男は少しだけ幼さの残る笑顔に加えて、
一段と瞳を輝かせると、ブーンの元へと詰め寄ってきた。

爪'ー`)y-「へぇ……あんた、冒険者なのかい?」

275以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:12:51 ID:qXDhOR0g0

「それなら、武勇伝の一つでも聞かせてくれよ」
そう言いながら、彼はさらにブーンに向けてずいっと顔を近づけてきた。
瞳をどことなく煌かせるその姿は、冒険者という職業に対しての憧れが滲み出ている。

(;^ω^)「あ…いや……」

爪'ー`)y-「その鞘に納まった長物……見た所俺と歳も変わんなそうだけど、
     さぞかし危険な冒険の数々に挑んでるんだろうなぁ」

(;^ω^)「それが、違うんだお。実は僕もまだ駆け出しで、今は
       初めての依頼をこなそうとしている所……なんだお」

爪'ー`)y-「ありゃ……な~んだ、そういう事か」

呟いて元の位置へ腰を下ろすと、銀髪はまた上を向いて煙を吐き始める。

爪'ー`)y-「初の依頼ね。ま、成功を祈るよ」

( ^ω^)「頑張ってみるつもりだお」

「さてと……」と身体を伸ばしながら重そうに腰を上げると、
銀髪の男は葉巻を地面へと指で飛ばし、休憩を終えたようだ。

そこで、思い出したかのように、また質問が飛んできた。

爪'ー`)y-「そういやさ、ヴィップでおすすめの冒険者宿ってあるか?」

276以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:13:21 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)「”失われた楽園亭”だおね……料理も旨くて、最高だお」

爪'ー`)y-「なるほど……参考になったぜ。ありがとな」

「”フォックス”ってんだ」
煙草を靴の裏でにじり消しながら、ブーンに言葉を投げかける。

爪'ー`)「またどこかで会うことがあれば、そん時ゃよろしく頼むぜ」

( ^ω^)「”ブーン”だお。また、どこかで……」

こちらへ視線へ向けながら肩越しに一度親指を立てると、
来た時と同じように、自分が歩いてきた方へと去っていった。

その背中を見送り終えると、取り外していた装備品を、再び身に付ける。

あまりぐずぐずしてもばかりいられない。依頼人の心証を損ねて
報酬が減額されるなんて事になって、マスターへのツケの支払いが
滞ってしまったら目も当てられない。

( ^ω^)「さて……明日の分の道のりも、前倒してしまうかおね」

所々が縫い合わせられ、かなりの使用感が滲み出ている麻袋を
背中に背負うと、ブーンもまた再びリュメの街へと繋がる道を、歩き出した。

277以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:14:37 ID:qXDhOR0g0

────【リュメ】────


その後の道中では、一度の野宿と3度の休憩を挟みながら歩き続けると、
少し深くなってきていた森を抜けた先で、ようやくその光景は広がった。

リュメの街───山間部にある街で、かつては歓楽街とも呼ばれていた。
当時この小さな集落で集まり、今日のリュメへと開拓していった人々から、
多くの人々が移り住み、繁栄する事を嘱望されていたからだ。

だが、今となっては盗賊ギルドが幅を利かせており、
夕刻には宿の前で客を呼び込む、多数の娼婦達の姿が見られる。

富は一部の成金に集約され、多くの者は貧しい生活を強いられる為、非行へと走る若者も多い。

ヴィップのように煌びやかな建物はほとんど無く、
家々も小ぢんまりとした平屋ばかりが多く立ち並んでいる寂しげな景観。

やはりヴィップと比べては数段も寂れた印象を受ける町並みではあるが、
そこらへ腰を下ろして談笑している人々や、店に呼び込もうとする商店の
主らからは、爽やかな活気が生まれているのを感じる事が出来る。

( ^ω^)「さってと……依頼人を探すとするかおねぇ」

278以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:15:13 ID:qXDhOR0g0

冒険者として、手引きに沿った忠実な行動を取る事とする。
依頼を受ける為に依頼人にその仕事の内容を聞き、そこで受諾するかの判断だ。

さほど広くは無い街だが、名前しか聞かされていないその依頼人を、
まずは聞き込みによって探し出さなくてはならない。

そこらで走り回っていた少年達を呼びとめ、声を掛ける。

( ^ω^)「あー、フランクリンっていう人を知らないかお?」

ブーンの言葉に首を傾げる少年達だったが、一人が
ぱっと閃いたかのように、言葉を返した。

「ここいらの大人たちはみんなお酒が楽しみなんだ、酒場に行ったら分かるかもよ」

( ^ω^)「酒場……ちなみに、それはどこにあるかおね?」

「”烏合の酒徒亭”だったっけ……あれさ」

そう言って指差す先を見やると、目と鼻の先にあった酒場の看板を確認する。

( ^ω^)「おっ……ボク達、ありがとうだお!」

「ちぇっ、駄賃もくれないのかよ」

そうこぼした子供達に大きく手を振り、ブーンは颯爽と酒場の中へと入って行った。

279以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:16:00 ID:qXDhOR0g0

────【烏合の酒徒亭】────

冒険者宿では多くの街で見られる形態である酒場、兼、宿。
だが、どうやらこのこの酒場では依頼の受付などを兼ねてはいないようだ。
あくまで酒を飲ませる食事どころとして、商いをしている。

(;^ω^)「活気ある店だおね」

厨房ではマスターがせせこましく鉄鍋を振るい、炒め物をする姿。
その必死な姿には鬼気迫るものがあり、一見の客である自分などには
酒など頼みづらい雰囲気がビリビリと伝わってくる。

( `ハ´)「…らっしゃいアルーっ!!適当にそこらにかけてくれアルっ」

こちらの姿に気づいた店主が、大きな火力を御しながらこちらへ叫ぶ。

手持ちに一枚たりとも銀貨を持ち合わせていない自分は、
早々に用件を済ませて立ち去るのが得策だろう。

そそくさと卓を囲んで酒を飲んでいる数人に、聞き込む。

( ^ω^)「あの……」

( "ゞ)「ん?」

280以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:16:39 ID:qXDhOR0g0

ブーンの言葉に振り返った、一人の男。
目を病んでいるのか、少し白く濁った瞳のその男は、
しかししっかりとブーンの瞳を見つめながら、受け応える。

( ^ω^)「この街で、フランクリンって人を知らないかお?」

( "ゞ)「……お前さん、ここいらで見かけないツラだな」

( ^ω^)「仕事の依頼でこの街に来た、冒険者なんだお」

( "ゞ)「ふぅん……まぁ、いいけどな」

「さ、出しな」

そう言って手を上に向けて差し出し、わきわきと握っている。
ブーンには最初、その行動の意図する所が理解できなかった。

( ^ω^)「………おっ?」

男の手と、その顔を幾度か見比べた後、小首を傾げるブーンは、
それが握手を求めているものだと理解して、手を差し伸べようとする。

そのやり取りの最中苛立ちを募らせた男は、席に踏ん反り返って、椅子ごと向き直った。

281以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:17:40 ID:qXDhOR0g0

(;"ゞ)「だぁぁーっ!……わっかんねぇ奴だな、情報料だよ、情報料!」

卓を囲む男達の服装をよくよく見てみれば、胸元にナイフを忍ばせる者、
また腰元には様々な開錠鍵や、小道具をぶら下げている者などもいる。

皆一様に細身の身体つきだが、かと言って無駄な脂肪も感じさせない。
ぴっちりとした黒のベストに身を包み、様々な小道具を隠し持っているであろう
その雰囲気から、彼らがかの”盗賊”という人種か、という事にようやく思い至った。

( "ゞ)「見てわかんねーか?俺らは、盗賊ギルドのもんだ」

(;^ω^)「……盗賊ってのは、そんな事ぐらいでお金取るのかお?」

( "ゞ)「あぁ、慈善事業なんてやんねーぞ。こちとら情報は命なんだぜ?
    対価も払わない奴にゃあ、知ってる事も教えられんね」

確かに正論かも知れない、とブーンは思う。

ここまでの旅をしてくるにあたり、正しい情報というものの重要さは、
山道で幾度も道を間違え、極限状態に近い状態にまで追い込まれた自分にしてみれば、
やはり重要なものだという事が、骨身にしみて感じていた。

通常、盗賊ギルドのネットワークを生かした収入源の一つとして、
情報というものは冒険者達などに向けて売り買いされてもいるのだ。

282以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:18:21 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)「その……フランクリンの情報ってのは、いかほどだお?」

( "ゞ)「払う気があるのは結構な事だ。そんぐらいならまぁ……3spでいいぜ」

(;^ω^)「3sp……あいにくと、こちらは1spも持ち合わせていないお」

( "ゞ)「あー、だったら帰った帰った。自分で探し───」

( ^ω^)「だから、せめて───”これ”で勘弁して欲しいお」

そう言って、麻袋から取り出した干し肉を手づかみすると、
ひらひらと手を払う盗賊の手を取り、その中へ直に握らせた。

一瞬あんぐりと口を開け、ブーンと、自分の手の中の干し肉を見やる盗賊。

( "ゞ)「……なんだ?こりゃあ」

( ^ω^)「干し肉だお……僕が今晩夜食にするはずだった……大事な大事な……」

(;"ゞ)「お前……こんなもんで……」

あきれ返って言葉も出ない、といった彼の言葉を遮って、人目もはばからず
”こんなもの”と言われた干し肉を指差し、急に怒気を荒げるブーン。

283以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 01:19:01 ID:qXDhOR0g0

( #^ω^)「こんなもんとは何だお!マスターが作ってくれたこの干し肉は
       この上なく風味豊かで、外側はカリカリながらその実、中は───」

(;"ゞ)「あー………面倒くせ。もういい、分かった分かった!
    教えてやるから、とっとと俺の前から消えてくれ」

握らされた干し肉の旨みを熱弁し出したブーンに、完全に調子を崩したようだ。
盗賊は頭を掻きながら、渋々ながら指先で外の通りを描くと、道案内を始めた。

( "ゞ)「酒場を出たらそこの通りを突き当たって、左手の角から3軒目の裏手だ……」

( ^ω^)「おっおっ!そこがフランクリンさんの家かお?」

( "ゞ)「あぁ……面倒くせぇからとっとと行ってくれ。
    お前さんの顔見てたら、なんだか酒がまずくなりそうなんでな」

( ^ω^)「恩に着るおっ!」

(;`ハ´)「あっ、あんた注文もせずに帰るアルかーッ!」

”烏合の酒徒亭”のマスターの怒号をその背中に受けながら、必要なだけの
情報を受け取ったブーンは、来た時と同じように、颯爽と酒場を後にした─────

286以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:18:07 ID:qXDhOR0g0

───【フランクリン宅 前】───

あの男に教えられた通りの道順を辿ると、言っていた通りの場所に
外壁の表面が少しだけ剥がれ落ちた、寂しげな邸宅があった。

盗賊というのも、なかなか話せる人種ではないか、とブーンはその場で一度頷いた。

早速、話を伺うべくドアをノックしてみた。

見ず知らずの他人の家に上がりこむのだ、仕事を請け負う以上、
最低限の礼儀は欠かしてはならないだろう。

( '_/') 「はい?」

身だしなみを確認している内に、扉を開けて出てきたのは利発そうな一人の男性だ。
こちらと目が合うと、それだけでブーンが訪問してきた意図を察したらしい。

( '_/')「もしや、失われた楽園亭の冒険者の方ですか……?」

( ^ω^)「その通りですお。その件で、お話を聞かせて聞かせてもらえますかお?」

( '_/')「そうでしたか……!さぁ、中へお入り下さい」

家の中は、外からも想像できる通り殺風景な作り。
無駄な物は置かれておらず、切り詰めた生活をしているのか、生活臭は希薄だ。

287以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:18:48 ID:qXDhOR0g0

依頼人のフランクリンの案内に従うまま、応接用の小さなソファに腰掛ける。

( '_/')「ご挨拶がまだでした、私は依頼人のフランクリン。そして……」

ノ|| '_') 「妻のマディです」

( ^ω^)「冒険者の、ブーンですお」

依頼前にしっかりと依頼内容、また報酬の内容などを確認しておくのは重要な事だ。
一言一句聞き漏らさず、依頼が終了した際にトラブルなどを起こさぬためにも。

そう思ってか、ブーンは座り直してしっかり話を聞く体勢に入った。

( '_/')「依頼内容というのは、ゴブリン退治なのです」

( ^ω^)「あの……下級妖魔のですおね」

ゴブリンというのは、大陸全土の至るところに出没する妖魔だ。
基本的には非力で、体格も人間の子供ほどのものだが、武器を用いる頭脳はある。
また繁殖力が強く、常に群れを成して行動している事から、時に人間が襲われる事もある。

もっとも、ゴブリンがらみで一番多いのは、家畜や農作物への被害だが。

( '_/')「えぇ。このリュメの西側にある森、その奥にぽっかりと穴を開けた洞窟があるのです」

( ^ω^)「その洞窟の中のゴブリンを一掃する、それが、依頼内容ですかお?」

288以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:19:23 ID:qXDhOR0g0

( '_/')「ですが……その、生息しているゴブリンの数までは把握出来ていないのです」

ノ|| '_') 「5~6匹、いえ、もしかしたらそれ以上いるかも知れません」

( ^ω^)「………」

そこまで話を聞いてから、一度考えを整理する。

通常、村で生活している人間がゴブリンのような下級妖魔に襲われて命を落とすという話はあまり聞いた事がない。
クワや棒切れなどを持った農民などでも、十分に対抗できる程度の相手だからだ。

まして、冒険者として行動する上で自分の身を守る手段の一つに、剣を帯びるブーン。
なおさら、立ち向かう事の容易な相手だろう。

いかに武器を用いる知能があるところで、人間の子供程度の体格しかない妖魔だ。
しかし、いち早く解決してもらいたい依頼人としては、依頼が断られるような危険が潜んでいるとして、
それをわざわざ事前に冒険者へ伝えるような事は、よほど良心のある人間でなければしないだろう。

”依頼前の受け答えで、依頼における依頼人の本意を見抜く”
したたかさを持った熟練の冒険者は、危険の潜む依頼を避けるためにそうあるべきなのだ。
もちろん、使命感や誇りを持って、逆にそういった依頼を拒まない者も一部には居るが。

289以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:19:55 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)「それを……この街の領主には、訴え出たりはしなかったんですかお?」

( '_/')「以前から、私達は何度も訴え出ました。ですが、領主に謁見する事もままなりません」

ノ|| '_')「何度行っても門前払い……、領主は、このリュメなどどうなってもいいのです」

( '_/')「そう、富はあるべき所へ集められ、凋落の一途を辿るばかりの私達の生活など……」

( ^ω^)「………」

事情を聞いているうち、フランクリンの話に熱が入りかけたところで、
一歩引いて冷静に話を伺っていた自分の視線に気づき、彼はまた平静を取り戻した。

( '_/')「失礼しました……無関係のあなたに、お聞き苦しい事を……」

( ^ω^)「気にしてないですお。事情は大体理解できましたお───で、確か報酬は」

ノ|| '_') 「無事依頼を終えて戻られた際には200spを。私達の今持てる蓄えの、全てです」

290以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:20:20 ID:qXDhOR0g0

依頼の内容に不満は無かった、一人とは言え、たかだか下級妖魔のゴブリン。
5~6匹までなら、よほどの事が無ければ命を落とすほどの危険はないはずだ。
だが、話を聞いてる内にふと生まれた一つの疑問が、どうしても気になって止まない。

それは、領主に直談判にまで行って、西の森のゴブリンを退治する”理由”だ。
冒険者としてのあるべき本分よりも、好奇心の方がやや勝り、それを尋ねてみた。

ノ|| '_')「それは、あなたから……」

( '_/')「ふむ……お聞かせします、なぜ私達がゴブリン退治に拘っているのかを───」


─────

──────────

───────────────

291以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:20:53 ID:qXDhOR0g0

───【リュメ 西の森】───

結局、あのフランクリン夫妻の依頼は引き受けた。

これまで安らぎながら旅歩いてきた時と違い、今はこれから達成しなければならない
依頼に向けて、身体中をほどよい緊張感が支配している。

旅の疲れはもちろんあるが、まだ日の出ている今日の内に依頼を終えてしまいたかった。

森の中ほどまで歩き続けたところだろうか、鬱蒼と生い茂る木々を掻き分けた先に、
少し開けた岩場が見えた。どうやら、これが夫妻の言っていた洞窟のようだ。

ブーンのすでに歩調は慎重になっている。
木々に背を持たれ、身を隠しながらゆっくりと洞窟へと近づいてゆく。

( ^ω^)(外側からじゃ……中の深さはうかがい知れないおね)

遠巻きにぽっかりと口を開けたその洞窟の入り口を覗き込んでいると、
そこから緩慢な動作で姿を表した存在を視認して、すぐさま頭を低くかがめる。

( ^ω^)(………!)

洞窟の入り口からその姿を現したのは、緑色の肌に、窪んだ眼窩の奥で赤く濁った瞳。

────1匹のゴブリンだ。

292以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:21:19 ID:qXDhOR0g0

歩哨としての役目を担っているのだろうか、洞窟の周辺へと目を配っているようだ。
集団で生活する習性を持つゴブリン達は、同じ種同士でこういった連携を取る習性がある。

(#℃_°#)「キキッ」

雑木林に囲われた場所だが、入り口までの距離には木々が少なく、洞窟側からは開けた視界。
それにより、洞窟内に篭って外敵から身を守る側としては有利だろう。

( ^ω^)(まだこちらには気づいてないようだお……)

茂みに身を隠しているブーンの姿は、今はまだ歩哨の一匹には視認されていない。
だが、気弱なゴブリン達の事だ。もしその姿が見つかれば、すぐに仲間達へ報せるだろう。

そうなれば、洞窟内で多数のゴブリンに迎え撃たれる可能性がある。

( ^ω^)(最善なのは、仲間の誰にも気づかせずに排除する事……だおね?)

背の鞘から抜きかけていた剣を一度しまうと、手近な石ころを掴み取った。
歩哨の動きに注視し、機を見計らいながらそれを手元で弄ぶ。

そして、洞窟側へと歩哨が背を向けた瞬間に、その石を少し離れた茂みの奥へと投げ込んだ。

293以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:21:51 ID:qXDhOR0g0

(#℃_°#)「キキッ……!」

がさがさと枝の何本かを揺らしながら、石ころはブーンの目論見どおり、
ゴブリンの注意を引く事に成功したようだ。

( ^ω^)(………よし)

音がした方の様子を見ようと、歩哨が洞窟の入り口から離れ、ブーンに背を向ける。
その隙を突いて、出来る限り音を立てずにその場から駆け出した。

(#℃_°#)「………キキィ?」

先ほど石ころが投げ込まれた茂みの方を眺めながら、ゴブリンは首を傾げている。
───その背後に立ち、鞘からゆっくりと長剣を抜き出すブーンの存在に気づくことも無く。

(# C_ ;#)「キ────グゲゴッ!」

そして、胴と首が分かたれる瞬間に一寸呻き、すぐにその身は倒れ伏した。

(;^ω^)「………まず、一匹」

294以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:22:18 ID:qXDhOR0g0

妖魔とは言え、剣で何かの生き物の命を奪うのは、やはり良心が咎める。
降りかかる危険から身を守る為に今までも幾度かあった事だが、今は依頼の達成だけを考えなければならない。

刃に付着した血を、剣を振るう事で地面へと払い落とした。
ここからは中に入ればすぐに戦闘が控えているかも知れない。

心に迫る鈍い感情を押し殺しながら、剣を片手に携えたまま、ブーンは洞窟内へと足を踏み入れた。


────【ゴブリン洞窟 内部】────

壁面沿いに身を隠しながら、ゆっくりと深部へと進んでゆく。
まだ外は日が出ている為、わずかながら日の光が洞窟内にも届き、差し込んでいる。

だが松明などの明かりを持って来ていない為、日が沈むまでにはカタをつけなければならない。

( ^ω^)(思った以上に、暗いお)

壁を手で伝いながら、逆の手で握る長剣の柄には力が入る。
いかに最下級の妖魔とは言えど、その巣の中にいるのだ。

295以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:22:46 ID:qXDhOR0g0

『ゴブリンといえど、油断はできんぞ』
ヴィップを発つ前に、そう自分に忠告してくれた楽園亭の冒険者宿のマスターの言葉が、不意に頭を過ぎる。

しかし、ここまでは順調。
誰にも気づかれずに住処の中へと侵入できたのなら、後は隙あらば一網打尽にする機会もある。

だが、洞窟深部への注意をし過ぎるあまり、足元への注意が散漫になっていたのだろう。
ぱきっと音を立てて、靴底でかすかに枯れ枝がへしゃげた感覚が伝わった。

気を取られる事なく歩き続けようとしていたブーンのすぐ近くから、それに反応が返ってきた。

「キキッ………?」

自分の腹下あたりだ。
声の方向に、すぐに視線を落とした。

(;^ω^)「………!?」

(#℃_°#)「────キッ!」

出会い頭だ、一匹のゴブリンに姿を見られてしまった。

なまじ体格が小さなものだから、すぐには気づく事ができなかった。
向こうもかなり驚いていたのか、自分の姿を見上げながら、目を剥いていた。

すぐにブーンに背を向けると、仲間を呼びに行こうと走り出している。

296以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:23:19 ID:qXDhOR0g0

(; ω )(させ………ないおッ!!)

ここで逃げられれば、後々大きな不利に働くだろう。
逃がす訳には、いかない。

大きく踏み込んで、がむしゃらな体勢から右腕一本で長く突きを繰り出した。

(# C_ ;#)「……ギ……ゴォ」

辛うじて刃が届くか届かないか、ぎりぎりの所だった。
首の後ろから差し込まれた長剣の刃は、そのままゴブリンの喉元を刺し貫く。

ばたばたと暴れさせていたその手足から、すぐに力は抜けていった。

(; ω )「ふぅ………これで、2匹」

夫妻の話ではあと3~4匹かも知れないが、ここは多く見積もっておくべきだろう。
中に入ってみて初めて分かったが、外から見るよりも、かなり広々とした洞窟だ。

これまでは一本道だったが、どうやらこの先は道が枝分かれしている。
その先が部屋のようになっているとしたら、どこかで複数のゴブリンに遭遇してもおかしくない。

一匹一匹の固体は弱いといえど、武器を扱う知能もあるだけに、やはり油断は出来ない。

297以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:23:44 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)(………東の、方からかお?)

次にどう動くべきかを思案している内に、ごそごそと聞こえる何かの物音に気づいた。
どうやら、複数のゴブリンが一部屋にまとまっていると考えて、相違なさそうだった。

( ^ω^)(上手く不意を突いてやれば……一網打尽に出来るかも知れないお)

ゆっくりと、音の聞こえた方へと歩を進めてゆく。
その先にあったのは、大人一人が通るのがやっとのような、一つの縦穴だ。

当然ながら、中の様子は伺えない。ここまでくれば日の光もほとんど届かず、
あとは暗くおぼろげな視界の中で剣を振るうしかない。

( ^ω^)(………初っ端から、打って出るかお?)

身を屈めながら、その縦穴へと身を潜り込ませてゆく。
ここにたどり着くまでに、自分という侵入者の存在には気づいていないはずだ。

事態を把握されるより前に、派手に暴れるもよし。
出来るだけ気づかれないように、一匹ずつ仕留めるのもよし。

そう考えている内に、縦穴の出口にたどり着いたようだ。

298以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:24:06 ID:qXDhOR0g0

────思った以上の静けさ。

中のゴブリンは寝てでもいるのだろうか、そうであればありがたいが。
一瞬気後れはしたが、思い切って部屋の中へと躍り出た。

ようやく動きやすい体勢になり、しっかりと両手で剣を握り締める。
まだ完全に洞窟の暗さに慣れていない眼を皿にして、辺りを見渡す。

( ^ω^)(………いない?)

おかしい、先ほどは確かに物音が聞こえたはずだ。
──ーなのに、一匹のゴブリンの姿も見えない。

とんっ

しばし呆然としていたブーン。
その足元へ、何か小さなものが当たった音が聞こえる。

(;^ω^)「………矢?」

地面に突き刺さっていたそれを見た時───すぐに、頭の中では警鐘がかき鳴らされる。

(#℃_°#)「キキッ!!キキーッ!」

299以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:24:30 ID:qXDhOR0g0

視線を再び上げた瞬間、ようやく今自分が置かれた状況に気づく。
あまりにも───遅すぎた。そう思う余裕すらもなかった。

暗闇の中自分を見下ろす、幾つもの赤い瞳。

それに紛れて輝きを放つのは、自分を目掛けて引き絞られる弓矢の、矢じりだった。

(;`ω´)「ッ───おおぉ!」

すぐさまその場を横っ飛びに飛びのいて、狙いを逸らす。避ける事が、出来た。

ほぼ同時に、先ほどまで自分が立っていた位置を次々と穿つ矢を見て、背中からは冷や汗が噴出した。
まさか、弓矢まで扱う種族だとは思わなかった。

だが、それよりも───

(; ω )(こっちの侵入が、感づかれていたのかお…?)

最下級妖魔と侮り甘く見ていた驕り、やはり、それが自分の中にあったと言わざるを得ない。
だがそれに関しての反省は、この場をどうにかして切り抜けてからだ。

300以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:25:00 ID:qXDhOR0g0

また次なる矢が降り注がれるかと思い身構えたが、それはなかった。
今度は、目の前から2~3匹のゴブリンが一度に駆け出して来ていた。

(#'℃_°'#)「グオオォッ!」

木製の棍棒を持つ一匹は、傍目からもわかる程に明らかに巨躯。
恐らくは、これがリーダー格のような存在だろう。

狙う相手は、既に決まった。

(#^ω^)「ふおおぉッ!!」

巨躯のゴブリンは、一直線に自分の元まで来るとすぐさま棍棒を振り下ろした。
だが、避けるともせず、その腕ごと両断するつもりで、ブーンもまた剣を振り上げる。

(#'℃_°'#)「グ……ゥッ!」

だが、ブーンの一刀は棍棒の中ほどまで刃が食い込み、止められた。

並みのゴブリンの打ち込み程度であれば棍棒ごと叩き斬る自信はあったが、
他の倍はあろうかという体格のこのゴブリンは、ブーンの膂力を耐え凌いだのだ。

(;^ω^)「………っ!」

301以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:25:31 ID:qXDhOR0g0

人並み以上の腕っ節の他に誇れるものはない、自分の打ち込み。
それがゴブリン風情に凌がれた事実が、ブーンの心の中に焦燥を産み落とした。

このまま剣が封じられてしまう事を恐れ、すぐに力を込めて剣を引く。
捻りを加えながら乱暴に引っ張ったが、棍棒を手放させる事は出来なかったようだ。

(#'℃_°'#)「……ガウゥ……!」

ゴブリンの群れに紛れ、怯んだリーダー格が後退していくのが見えた。

ゴブリンというのは極めて気弱な種族だ、拠り所となる存在がいなくなれば、
その下っ端たちは士気が下がり、混乱を与える事が出来たかも知れない。

だが、今の好機を仕損じてしまったのは、いかにも痛い。

舌打ちしていたブーンの両側面からは、すでに手斧をもったゴブリンどもが迫っていた。

(#^ω^)「来いお!」

弓矢による攻撃は怖かったが、味方がこれだけ近くに居れば撃てないだろう。
気迫を込めた言葉とは裏腹に、頭の中ではまだ冷静にこの場での立ち回りを整理出来ている。

302以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:26:01 ID:qXDhOR0g0

(#℃_°#)「キキッ!キーッ!」

もっとも近くの左方の一匹に向き直り、剣を構えてじりじりと距離を詰める。
数では勝っているものの、ブーンの気迫に気圧されてか、後退している。

小さな石斧と自分の持つ長剣では、一対一では端から勝負にならない。

それゆえ後退を余儀なくされる一匹へと距離を詰めるが、背後から迫っている
もう一匹の気配を、背中越しに肌で感じ取っていた。

二匹のゴブリンに前後を挟まれているのだ。一匹に隙を見せれば、もう一匹に付け込まれる。

だが、それに対抗する策はあった。
この自分の身の丈ほどの長さを有する、長剣だからこそ成せる業が。

挟撃を真っ向から受け入れ、機を伺っていたのはブーンの方だ。

( ^ω^)(前後────)

(#℃_°#)「ゥ……ギキキィッ!!」

前方の一匹へと踏み込む素振りを見せた瞬間、背中に浴びせられるもう一匹の声。
一匹に気を取られたブーンの背後へ向けて、石斧を振りかざさんと飛び出している。

だが、まるで気にもくれず、ブーンはただ目の前の一匹に向き合い、深く腰を落とした。

( ^ω^)(────同時ッ!)

303以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:26:45 ID:qXDhOR0g0

思い切ったように、そのまま眼前のゴブリン目掛け大振りの横薙ぎを繰り出す。
ぶおん、と耳にまで聞こえる風切り音が、刃から唸りを上げる。

あまりに間合いが遠すぎたのか、あご先すれすれという所で────それは空を切る。

しかし、振るわれた剣の軌道は、半月を描いてもまだ止められる事がなかった。
半月はそのまま満月へと軌道を描き、ブーンの体の真後ろまで、全力で振り切られたのだ。

当然、背後まで迫っていたゴブリンは、背中に石斧を振るおうとしたばかりに
ブーンの剣の届く位置にまで近づいていてしまったのだ。

予想もつかない方向から襲い掛かった刃は、抵抗も出来ないままのゴブリンの上半身を吹き飛ばした。

(#^ω^)「───ふぅッ!」

その短い断末魔を聞き捨てながら、剣を振り回した反動を利用して、
身ごと大きく駒のように回転すると、そのままもう一度前方のゴブリンへと大振りを見舞った。

(# C_ ;#)「アバッ」

どうやら顎から上を吹き飛ばしたようだが、その確認は柄から手元へと
伝わった感触だけで十分だ。それよりも、すぐに残りへと対処しなければならなかった。

304以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:27:09 ID:qXDhOR0g0

二度満月の剣閃を描いたあと、こんどは勢いよく背後へと振り返る。

(#'℃_°'#)「ギィィッ!ギィッ!」

広場の中央に立っていたのは、先ほどのリーダー格だ。
剣の打ち込みによって欠けた棍棒を掲げて、叫びを上げていた。

( ^ω^)「………?」

”弓を射て”という合図か───そう思ったが、違う。
先ほどまで弓を引き絞っていたゴブリン達が、広場の上層に位置する高台から続々と降りて来ている。


 「ギキキィッ!」 (#℃_°#)

   (#℃_°#)  「ギキッ」  (#℃_°#)

   「キャキィッ!」 (#℃_°#)


その数、4~5匹は居るだろうか。
リーダー格の一匹が、不利な今の状況を考えて、自分の身を守らせるつもりなのだろう。

305以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:27:41 ID:qXDhOR0g0

暗闇の中ではおぼろげにしか見えないそのシルエット。
その中に、これまでに倒してきたゴブリン達と比べて、違和感を覚える1匹の姿があった。

 /__\  
〈 (℃_) 〉「………」

腰みのを身に着けているだけの他のゴブリンとは違う。
僧侶などがよく着ているような、ローブを纏う一匹の亜種。

頭部が異様に肥大しているのか、頭に被っているフードも膨れ上がっている。

( ^ω^)「ッ…!」

そして、獣のように低く吼え声を上げる、他のゴブリンよりも細身なもう一匹の姿。

(ζ_/ )「うがううぅぅぅ……っ」

そして───広場の中心、自分の目の前には、総勢5匹ものゴブリンが集結した。

(;^ω^)(帰ったら……報酬の値上げ交渉、やってみるかお)

ため息をつく間も無く、それを生唾とともに飲み下した。
高台から降りて来たゴブリン達が、ブーンの前に散開してゆく。

306以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:28:06 ID:qXDhOR0g0

(#'℃_°'#)「ギィィィィィィッ………」

中央には、巨体の一匹。

 /___\  
〈 (℃_) 〉「………」

その後方には、ローブを纏った一匹。

やがて最後尾に控えたローブのゴブリンが、ブーンの方へを指を指し示す。
すると傍らに付き添っていた小型のゴブリン同様、リーダー格のゴブリンも動き始めた。

(#'℃_°'#)「ギィィィィィッ!!」

まず、リーダー格が襲いかかってきた。
大声で喚きたてながら、ただ闇雲に棍棒を自分の頭の上に振るい落とそうとしている。
仮にまともにもらってしまえば昏倒して、総出で袋叩きの肉塊にされるだろう。

だが、自分の剣のリーチの方が、遥か勝る。

(# ^ω^)「ふッ………!!」

今ばかりは、先ほどのように力比べをする余裕はない。
遠い間合いから浅い手傷を負わせるよりも、より確実に仕留めるための一撃が必要だ。

307以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:28:40 ID:qXDhOR0g0

腰を落とした状態で、ゴブリンの棍棒が届くぎりぎりの所まで、引き付ける。
寸前にまで迫ったその時を見計らって、後ろに引いていた剣を、横一文字に薙いだ。

(#'℃_°';#)「―――ギャッ、ブゥッ!」

ゴブリンの振るった棍棒は僅か届かず、耳元で唸りを上げるだけに留まった。
確認するまでも無いが、リーダー格のゴブリンの胴体には一本の赤い線が走っている。

傷口からぼたぼたと零れる血で地面を汚しながら、斬られた痛みに苦痛の呻きを漏らす。
その場でたたらを踏んではいる瀕死の状態ではあるが、手の中の棍棒はまだ離そうとしない。

(#'℃_°';#)「……ウ、ウゴォォォッ!」

(;^ω^)「!」

最後の力を振り絞ってか、もう一度棍棒を振りかざそうとしている。
剣を向けたまま、後方へ飛び跳ねて素早く距離を取た。

もう一度斬るべきか────そう逡巡しているわずかな間に、
低い断末魔を一度上げると、自分の血溜まりの中へ膝から崩れ落ちて、それきりだった。

(;^ω^)(よしッ、これで………!)

これで、残りのゴブリンの士気はガタ落ち───思惑では、そのはずだった。

308以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:29:20 ID:qXDhOR0g0

(#℃_°#)「ギキィーィッ!」

2匹のゴブリンに既に接近されていたにも関わらず、一瞬剣を下ろしたのがまずかった。

右翼から回り込んで来た一匹が振るった、石斧。
それを自分の右肩へ叩き込む程の隙を、許してしまっていた。

(; ω )「ッ……うぐッ!?」

鈍い痛みが電撃のように右肩より下へと迸り、たちどころに機能を麻痺させる。
剣の柄を力強く握り締めていたはずの右手が、思うように上がってくれないのだ。

肉を断ち切るような鋭利さは無いにせよ、肉と骨の調度継ぎ目──当たり所が、悪かった。
骨を震わした衝撃は、もはや力を込めて両手で剣を振るう事をさせてはくれない。

(; °ω°)「!……うぐッ、おぉぉぉッ!」

それでも、左手一本で剣を振り回した。
自分の右肩に石斧を穿ったゴブリンの肩口から、胸元までを切り裂く。

目の前に残るのは、あとたったの5匹─────

309以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:30:13 ID:qXDhOR0g0

右腕を使えなくなる前と後で、随分と冴えない太刀筋になってしまったと、また舌打ちした。
鈍重なゴブリンであっても数匹同時に襲って来られたら、今のように反撃できるかは分からない。

左手一本で持つには、この長剣は重過ぎるのだ。

(;^ω^)(リーダーを倒したはず……なのになんで、逃げないんだお?)

重い感覚しかもたらさない右腕を宙にだらりと投げ出しながら、長剣の切っ先を突きつける。
その相手────ローブのフードを深く頭に被るゴブリンの口は、驚くべき言葉を紡いでいた。

 /___\  
〈 (℃_) 〉【──カラ、ダヲ ハシル…マリョク ノ ホン…リュウ 】

たどたどしいが、よく聞き覚えのある言葉だ。
はっきりとした共通言語もあるのかどうか分からない妖魔の口が発しているのは、確かに───

(;^ω^)「じ……人語、かお!?」

あまりの驚きに思わず大声を上げたその時に、気づいた。
取り巻きの雑魚ゴブリン4匹がまだ威勢を失っていないのも、群れの長の存在からだ。

先ほどの巨躯のゴブリンが助けを求めていたのは、このゴブリンに対してだったのだ。

310以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:31:04 ID:qXDhOR0g0

(;^ω^)(完全に……さっきの奴がリーダーだと、思い込んでいたお)

見れば杖のようなものしか持っていないが、先ほどの巨体が群れを守る”力”だとすれば、
このゴブリンは人語を解する程の知恵を持ち合わせ、”頭脳”として機能しているのだろうか。

本当のリーダー格がこのローブのゴブリンだと、遅まきながら気づいた。

人語を発するだけで驚きだが、群れを纏め上げる以上、他に何かしらの力もあるはずだ。
肥大化した後頭部以外はさほど他のゴブリンと体格差はないが、更に警戒を強める。

石斧の攻撃を受けた右腕の痺れは、すぐには取れそうに無い。
危機的状況であるが、この場を左手一本で看破するしかないのだ。

(;^ω^)(落ち着くお……あと5匹。それだけ倒せば……)

自分を負傷させて調子付いたか、4匹のゴブリンは自分の周囲をぐるぐると旋回しながら、
少しずつその包囲を狭めつつある。完全に四方を囲まれた状況にあって、左腕一本では
満足な力が入らず、さっきのような回転斬りを繰り出しても掻い潜られる危険性がある。

(;^ω^)(なら……本当のリーダー格がこいつと分かった以上、狙うは──)

311以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:31:27 ID:qXDhOR0g0

(#℃_°;#)「キィッ!?」

完全に包囲の距離を詰められて袋叩きにされる前に、頭を抑える為、危険を承知で一直線に駆け出す。

進路を塞ぐゴブリンはそれに身構えたが、走りこみながら、横腹を思い切り蹴飛ばして脇に転がす。
後ろから慌ててブーンを追いかけるいくつもの足音が聞こえたが、構っている暇などない。

狙いはただ一匹、ローブの一匹だけだ。
だが、ブーンがその目の前にまで迫った時、その場に異変が起きた。

(;^ω^)「な………!?」

何が起こっているのか───分かるはずも無い。
動揺し、思わず剣を振るのを躊躇してしまった。

光もほとんど差し込まないこの暗い洞窟の小部屋を白く染め上げる、光。
それがローブのゴブリンの手から放たれているものだという事を理解するのに、しばしの時間を要した。

その口からはまるで呪詛のように、人のものではない奇妙な声で、言葉が紡がれる。

312以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:32:07 ID:qXDhOR0g0

 /___\  
〈 (℃_) 〉「【チカラ…カタチ ナシ…マヲモッテ ウチ、ツラヌケ】」

刹那、ゴブリンの手の中で収束してゆく光は、瞬く間に凝縮し、形を為した。
それがやがて一本の矢のような姿を形作ると、その先端は、ブーンへと向けられていた。

(;`ω´)「まッ………」

急速に時間の流れが遅く感ぜられ、様々な考えが頭を巡る。
実際に見たことはないが、これこそ”魔法”というものなのだろうという事に、合点がいった。

魔術師といえば悪の代名詞。幼馴染達と、役柄を決めてそんなごっこ遊びをしていた。
無から有を生み出し、武器を持った人間であろうとも、いとも簡単に倒せてしまう術。

その術を───まさか、ゴブリンのような下級妖魔が使いこなすというのか。

故郷での憧憬が一瞬頭の中に過ぎると、走馬灯のようにまとわりついてきそうになった。
だが、それごと振り払おうと、左方へと全身を投げ出した。

飛んだ先は岩場だが、光の矢の軌道上を逃れるためだ、一も二も無く飛び込む。

(; ω )「────だおぉぉっ!」

313以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:32:41 ID:qXDhOR0g0

ほぼ、同時だった。

飛び出す瞬間、自分の立っていた位置を通り過ぎた光から、背中越しに強い熱を感じた。
光弾は影を引き連れながら、洞窟内部の闇を突き抜けてゆく。

一瞬の後、ブーンはしたたかに身体を岩場へと打ちつけ、全身の痛みに顔を歪めていた。
ほぼ無意識に素早く身を起こすと、追撃に備えて再び剣を手に取り、立ち上がる。

(# C_ ;#)「……ゴブッ…ギ……」

ブーンが身をかわした事で、その背後に居たであろうゴブリンの一匹が、光の矢に穿たれたようだ。
抑えている胸板には風穴が開き、一寸の間を置いて、大量の出血。

傷口を押さえながら力なく倒れるその姿を見ながら、背筋には冷たい汗が伝った。
もしあれを食らっていたら、自分もああなっていたのか、と。

だが、これが魔法なのだとしたら、二の足を踏んでいる場合ではない。
魔法を唱えるためには、前もって何かしらの手順が必要なはず。

(;^ω^)(さっきぶつぶつ唱えていたのが、必要な前準備……なのかお?)

もしそうだとするならば、少しの時間も与えてはならない。

314以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:34:24 ID:qXDhOR0g0

 /____\  
〈 (℃_;) 〉「グ………!」

ローブのゴブリンもまた、自分が放った光の矢が避けられた事に動揺を見せていた。
運良く同士討ちとなってくれた事もあり、残るゴブリンは雑魚を含めても───4匹。

再びあの魔法が来るよりも早く攻め込めば、もう依頼の達成は目の前にぶら下がっている。

(#^ω^)「───おぉぉッ!!」

全身の痛みを庇うよりも、剣を手に再びローブのゴブリンの元を目指した。。
ごつごつとした岩場で挫いてしまいそうな足を、ただ前へ前へと走らせる。

(#℃_°#)「ギキッ!ギキッ!」

そのブーンの進路へ、また一匹が立ち塞がる。

(#^ω^)「邪魔だおッ!」

重心が損なわれ、剣を振るった左腕に全身が振り回されるようになりながらも、一息にその首を刎ねた。
まだその場に立ち尽くす首から下だけのゴブリンを肘で押しのけながら、突き進む。

 /___\  
〈 (℃_;) 〉「【ッ…チカラ カタチ ナシ マヲ……マヲモッテ】」

315以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:35:15 ID:qXDhOR0g0

また、先ほどと同じようにあの言葉を紡いでいる。

既に自分はローブのゴブリンの眼前───剣の届く距離にあるのだが、
一刻を争う際どい状況に、会心の一撃を繰り出すためには左腕の力だけで剣を振るうのでは、足りない。

ついに至近距離で相対し、互いに目と目があった。

仲間を次々と倒した人間が、ついに自分の目の前にまで現れ、戦慄しているのか。
だが、ゴブリンの手からは再びあの光が、発現し始めていた。

 /___\  
〈 (℃_;) 〉「【ウチツッ…ツラヌ…ケェェッ!】」

(; °ω°)「────ふぅ……ッ!」

自分もまた、左腕に握った剣を肩越しに背中へと回していた。
上体を弓のようにしならせて、振りかぶった勢いをそのまま剣を振り下ろす力に変える。

魔法が発動するのと、自分が斬りかかるのとは、ほぼ同時だった。

316以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:36:35 ID:qXDhOR0g0

 /___\  
〈 (℃_;) 〉「――――――!」

(;`ω´)「──────!」

身体を貫かれる恐怖に抗うようにして、何かを叫んだような気がした。
そして────白い閃光は視界を奪い、目の前の何もかもを純白に、ただ塗りつぶしてゆく。



──────



────────────


──────────────────

317以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:37:08 ID:qXDhOR0g0

(;^ω^)「はは、は………生きてるお」

やがて光が晴れた後、その場にへなへなと尻からへたり込んだ。
残っていた雑魚のゴブリンは、いつの間にやらリーダーが崩れ落ちるのを目にして逃げ去ったようだ。

打ち漏らしたとはいえ、今回の依頼の達成には、全てを倒す必要はないだろう。

傍らで、天を仰ぐローブのゴブリンの表情を、じっと覗き込んだ。
まだ息はあるが、自分に切り落とされた右腕から大量に出血させながら、瞳は空ろ。
死ぬのも、時間の問題だろう。

(;^ω^)(たかが、ゴブリン……その認識を改める必要があるおね)

あの魔法が自分を貫くであろう一瞬、剣を振り下ろしながら半身になって、身をよじったのだ。

迸った閃光の矢が革鎧の腹を掠めて焦がしながらも、すんでの所で腕を両断した。
一撃で絶命させるには至らなかったが、それにより狙いも逸れた事が大きかった。

一人で洞窟に侵入し、待ち受けるゴブリンの殆どを撃破して、勝利を収めたのだ。
最後に控えていた、この魔法を使う一匹には心底驚かされたが。

318以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:37:43 ID:qXDhOR0g0

/ ___\  
〈( C_;) 〉「アァァ……ウヴグゥ」

( ^ω^)「………」

魔術を使うほどの妖魔の頭の出来ならば、もう自分の身に死が迫っているという事も分かるだろう。
苦痛の声を漏らしながら、時折もぞもぞと身体をよじって立ち上がろうとする姿に、複雑な感情を抱く。

絶対的な悪として、いつからか大陸各地で確認されてきた妖魔たちの存在。
決して相容れる事なく、共生の道を歩むことなど無い、人と妖魔。

だが、この大陸が人の統べる地として決めたのは、一体誰が最初なのか。

もしかすると、妖魔こそがこの大陸の先住民であり、その彼らの住まう土地を荒らし、
辺境へと追いやって繁栄を続けてゆく人間こそが────

( ^ω^)(───ま、僕もまた人間。同じ人間の悪口を言う資格は、ないおね)

そこまで考えて、思考を中断した。

319以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:38:30 ID:qXDhOR0g0

死に逝こうとしているゴブリンの姿を目にし、安っぽい感傷に浸りかけたのを、拭い去る。
誰の事であろうとも、つい深く首を突っ込んでしまいたくなってしまうのは、悪い癖だ。

彼らの境遇には同情を禁じえないが、妖魔とて人を襲うという事実を思い浮かべ、重い腰を上げる。
石斧で叩かれた右腕を軽く回してみると、どうやら感覚も戻りつつあるようだ。

( ^ω^)「……せめて、もう苦しまないようにしてやるお」

つかつかと目の前にまで歩み寄ると、両手でゆっくりと長剣を振りかぶる。

/ ___\  
〈( C_;) 〉「………」

もはや、抵抗する気力も無いらしい。
このゴブリンにとってはブーンは憎悪の対象でしかないだろうが、止めを刺してやるのは、
たとえ種が違えど、自分にとってのせめてもの情けだった。

(  ω )「………」

”どすっ”

320以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:39:17 ID:qXDhOR0g0

鈍い音を立てて、長剣はゴブリンの心臓を確実に貫いた。
最期には目を見開き、驚愕しきったような表情のまま、瞳は光を失い、完全に濁ってゆく。

これにて、ゴブリン退治の依頼は達成─────
仲間達も、もうこの洞窟へと帰ってくる事はないだろう。

死んだゴブリンに、そっと踵を返した。剣先に塗れた血を地面にふるい落とすと、肩へと担ぐ。
だが、どうやら最後にもう一つだけ、片付けなければならない仕事が残っているようだ。

( ^ω^)「さて………」

さっきも、一度だけちらりとその姿を目にした、最後の”一匹”。
それがブーンの目の前に立ち、獣のように唸っていた。

ζ°ゝ) 「うがううぅぅぅッ……!」

321以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:39:54 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)「────君が、”ロベルト”君だおね?」

ゴブリン達とブーンがやりあうのを、先ほどからずっと遠巻きに眺めていた、彼。
だが、金色がかった髪の生えたゴブリンなど、この大陸全土を探してもいる訳がない。

なぜなら彼は─────人間なのだから。

( ^ω^)(まさか……)


─────話は、フランクリン宅で依頼の理由を確認していた時にまで遡る。


──────



────────────


──────────────────

( ^ω^)「なぜ、あなたがたはそれほどゴブリン退治にこだわるんだお?」

322以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:40:17 ID:qXDhOR0g0

ノ|| '_')「……あなた」

( '_/')「それは、私の口から……」

( '_/')「私達には───息子がいました。やっとの思いで授かった、太陽のような存在が」

妻のマディはフランクリンが話し始めると少し伏目がちになり、どこか遠くを見ているようだ。
フランクリンの話に頷きながら、少しだけその様子を気にかけた。

( ^ω^)「その、息子さんは?」

( '_/')「2年前の……ある日の事です。妻と息子は、西の森を散歩していました」

( '_/')「まだ5歳だったあの子は、久しぶりの遠出にはしゃいでしまっていたのでしょう……」

ノ||;_;)「……ロベルト」

( ^ω^)「………」

妻、マディが目に涙を浮かべて顔を手で覆う。
その様子からある程度の察しはつくが、またフランクリンの目を見据えて、話に耳を傾ける。

323以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:40:50 ID:qXDhOR0g0

( '_/')「突然横手の茂みから現れたゴブリンに、妻は襲われました。
      連れ去ろうとしたんでしょうが、幸い必死の抵抗により、事無きを……」

ノ||;_;)「ですが……その私の代わりに、あの子が……ロベルトがさらわれたんです!」

( ^ω^)「───それから、2年も……?」

依頼に関して、大体の理由は分かった。
そこから黙り込んで、手を膝の腕硬く握り締めながら視線を落とす夫妻の様子から、
彼らの心情は、痛いほどに伝わってくる。

( '_/')「恥ずかしながら、私の仕事は人様の靴磨き……それしか出来ません」

( '_/')「他所の街からわざわざこの街へ遊びに来る人など、そうはいない」

( '_/')「だから日に3枚から、多くても5枚の銀貨を稼ぐのがせいぜいの私達にとって、
      やっとの思いで貯めた、あなたにご依頼する為の200spは、全てなのです」

お世辞にも繁栄を謳歌しているなどと居えない、リュメの街。
誰も助けてはくれず、日々を耐え凌ぎながら生活し続けている彼らにとって、
冒険者を雇って依頼を頼むという事がどれほど大変な事なのか、理解する事が出来た。

( '_/')「だから……お願いします、あの子を───」

夫妻は恐らく必死で息子を探し、誰かに頼ろうともしたのだろう。
祈りだけでは通じない息子の無事を、どれだけ願ったのだろうか。

324以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:41:16 ID:qXDhOR0g0

ノ|| '_')「あの子の形見になるだけでも……あの子を、生まれたこの家に帰してやりたいんです」

冷静さを取り戻した妻の瞳が、しっかりとブーンの瞳を見据えていた。

彼らの頼みごとは、よく分かった。
一介の冒険者などに、よくぞここまで自分達の心情を吐露してくれたものだ。

( ^ω^)「分かったお」

なら────後は、自分がその気持ちに応えてやるだけだ。

( '_/')「それでは……!」

( ^ω^)「えぇ、依頼はお引き受けいたしますお」

ノ|| '_')「───よろしく、お願い致します」

( ^ω^)「だけど……こっちにも言っておかなければならない事があるお」

( '_/')「それは、何でしょう?」

325以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:41:50 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)「僕は、今回が初の依頼。まだ、駆け出しの冒険者だという事……だお」

ノ||;'_')「え……そ、そうなんですか?」

( ^ω^)「だけど、必ず”ロベルト君を連れ帰り”、ゴブリンを殲滅してきますお」

( '_/')「………」

( ^ω^)「───こんな駆け出しの冒険者を、信じてくれますかお?」

わざわざ自分から、ずぶの素人だという事を露呈したのだ。

自分の依頼が”初依頼”などと言う事を聞けば、本当に難題を抱えた依頼人ならば、
受注する冒険者に怪訝な眼差しを向け、それを色眼鏡で見るのが普通だろう。

だがそんな事をわざわざ明かしたのは、ブーン自身、隠し事が苦手な性分の為。
それに、依頼人から本当の意味での信頼を得て────そこで初めて。

依頼を達成するために、自分の全力を傾ける事が出来ると思ったのだ。

326以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:42:22 ID:qXDhOR0g0

( '_/')「……勿論です。信じて、いますよ」

ノ|| '_')「私も、夫と同じ気持ちです」


─────


──────────



───────────────


( ^ω^)(まさか……生きていたとは驚きだお)

亡骸を見つけて、息子の形見だけでも手に入れるつもりだったフランクリン夫妻。

その夫妻の愛息子は、今自分の前に居る───
2年の空白の歳月を経て、確かに生きながらえていたのだ。

年の頃は7~8歳といったところだろうか、失踪した年齢とも重なる。
そして、獣のように吼え声で唸るその姿に、一目でピンと来た。

育てられたのだ───ゴブリンに。

327以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:42:59 ID:qXDhOR0g0

そうでなければ、今こうして生きていられる訳などない。
ゴブリン達の子育てなど聞いた事もないが、さっきの人語を話す固体のように
知恵を持ったゴブリン達ならば、存外あり得る話なのかも知れないと思った。

( ^ω^)「ロベルト! ……助けに来たんだお、君を」

ζ°ゝ) 「……がうう!」

( ^ω^)(正気を、失っているのかお?)

名前の呼びかけにも、応じる事はない。
その様子から、こちらに完全な敵意を向けているのが見て取れた。
育ての親を殺された事に、憎悪を燃やしているのだろうか。

だが、並のゴブリンと比べても体格のさほど変わらぬ、人間の子供。
もし襲い掛かってきても、相手にするのはたやすいだろう。

問題は、彼を大人しく連れて帰る事が出来るのだろうかという事だ。

ζ°ゝ)「ふぅぅッ!!」

( ^ω^)「………」

視界の端から一瞬で消えると、闇の中へと紛れ込んだ。
その気配を目で追うが、大した速さを身に着けているようだ。

328以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:43:38 ID:qXDhOR0g0

闇の中をジグザグに走りながら、手にした石斧で自分の首を狙いに来ている。
ゴブリンなどよりよほど素早い身のこなしだが、かといって彼を斬る訳にもいかない。

ζ°ゝ)「うがぁッ!」

(;^ω^)「くっ!」

飛び掛ってきたその手を、辛うじて払いのける。
そのまま上半身に纏ったぼろな布切れの胸倉を掴むと、多少乱暴に地面へと引き倒した。

ζ; ゝ)「あ……あうっ」

(#^ω^)「大人しく……するおッ!」

剣を傍らに投げ捨て、彼の腕ごと腹の上に乗りかかった。
子供の割りには大した腕力、それでも自分の体格には抗うべくもないが。

(#^ω^)「君自身がゴブリンにでも……なったつもりかお!?」

ζ#°ゝ)「フシィィイッ!」

瞳をじっと覗き込みながら、言い聞かせるようにして頬を何度も強く張る。
だが、その顔はますます憎しみに皺を刻んでいくばかりだ。

329以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:44:50 ID:qXDhOR0g0

(;^ω^)(これじゃ……こんな状態じゃ……連れ帰っても)

歯をガチガチと強く噛み合わせ、威嚇しているのか。
獣と寸分違わぬ姿の彼、ロベルトの顔を覗き込みながら、ブーンは肩を落とす。

”もう一度人の世界に放り込んだとして、それがこの子の幸せになるのか?”

息子はもう帰ってこない、そう覚悟を決めていたフランクリン夫妻。
その彼らに今のこの子を差し出して、果たして本当に喜ばしい事なのだろうかと、己に問うた。

募る疑問は、依頼達成への最後の障害となって、降りかかっていた。

(;^ω^)「………」

傍に転がっていた長剣を拾い上げると、その柄に手を伸ばしてみた。

ここで彼を、殺すべきなのだろうか─────そんな考えが過ぎる。

まるで人が変わってしまったであろうこの子を、本当に解放してやるべきなのか。
それでも、ゴブリンに育てられた彼が、また元の普通の子供に戻れる日が来るとは限らない。

もっとも、こんな考えも当の本人にとってはただ身勝手な、周囲による傲慢でしかないが。

330以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 02:45:49 ID:qXDhOR0g0

ζ#°ゝ)「ぎぃぃぃぃーッ!」

だが、あえて─────

ロベルトの上体を踏みつけながら、剣を手にその姿を見下ろす。
あいも変わらず拘束から逃れようと四肢を暴れさせるが、ブーンの持つ長剣を目にして、
若干その顔色が変わったようだった。

ζ;°ゝ)「………う、うぁあ?」

ゆっくりと振り上げられてゆく剣に、ロベルトの身が強張り、表情が曇ってゆくのが分かる。
やがて後頭部にまで高く剣を掲げると、その剣先をぴたりと止めた。

ブーンの無表情から何かを感じ取ったのか、ロベルトの表情もまた、完全に凍りつく。

( ω )「化け物ごっこは、もう終わりだお」

ζ;°ゝ)「あ、あぅ……い……あ」

────────そして、剣は唸りを上げて振り下ろされた。


──────────────────


────────────



──────

332以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:27:35 ID:qXDhOR0g0

一瞬の火花を伴って、轟音が少年の耳を劈いた。
振り下ろされる瞬間に横を向いて目を瞑ったロベルトの、その眼前へとつき立てられた剣。

ζ;ゝ) 「……あ……ひぐっ」

彼の目には、本気の殺意を持って振り下ろされたものに見えただろう。

ブーンの剣は、確かに力強く突き立てられた───だが、それは頭一つ分方向を外れた、地面にだ。
それでも、年端もゆかぬ少年の下半身を、只ならぬ恐怖が湿らせていた。

静寂の中で堰を切ったようにして響き渡るのは、ロベルトの嗚咽。

それは、確かに彼がまだ人間である事。
恐怖を覚える人としての感情が残っている事を、証明してくれた。

たとえ人里に彼の身がうつされようとも、妖魔に育てられた彼だ。
受け入れられるどころか、周囲の人間達からは迫害されるかも知れない。

しかしそんな心配事も、彼の泣き顔を見た瞬間にどこかへと飛んでいってしまった。
この子供らしい元気な泣き声を聞いている内、きっとすぐに元の生活に溶け込める、そう感じたのだ。

それに─────たとえ周囲が白い目で見ようとも、この子の帰りを待ち望んでいる、両親が居る。

333以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:28:10 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)「ロベルト……目を覚ますんだお」

泣き止まない少年の傍らにしゃがみ込み、その頭にぽんと手を置いて、言い聞かせる。
先ほどのように怒気を孕んだものとは対照的に、優しく、語りかけるように。

( ^ω^)「君は────”人”、なんだお?」

ζ;ゝ)「うぅ……うああぁぁぁぁぁんッ」

ぽんぽんと彼の頭の上で、手のひらを優しく上下させ続ける。
その作業は、やがて彼が泣き止み、大人しくブーンに手を引かれるようになるまで続けられた。

──────

────────────


──────────────────

彼の手を引き、洞窟の入り口を抜ける頃には、すっかり大人しくなっていた。

334以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:28:42 ID:qXDhOR0g0

外はもうとっぷりと日が暮れ始めており、今からリュメに帰れば夜だろう。
今晩は一晩ゆっくりとリュメで休息し、明日の朝ヴィップに発とう。

そう思い、洞窟へと何気なく振り返ってみた。

(#℃_°#)「………」

すると、洞窟の入り口の真上に位置する岩場のはるか高みに、一匹のゴブリンの姿があった。
敵意を向けるつもりはないのか、立ち尽くすブーン達を、ただ黙って見下ろしている。

さっきの戦闘から逃げおおせた、生き残りのゴブリンであろう。
沈みゆく夕日を背に、しばらく見詰め合っていたブーンとゴブリンを尻目に、ロベルトが言葉を発した。

ζ・ゝ)「────ばい、ばい」

彼もまた、その視線に気づいていたのだ。
手を振りながら、人間流の別れの挨拶を岩場のゴブリンへと送った事に驚いた。

( ^ω^)(お前たちが心配しなくても、この子はきっと幸せに育つお)

心の中で、自分もそう告げておいた。
ロベルトに対しての、親や兄弟としての感情というもの。

それは自分が知らないだけで、彼らの間には宿っていたのだろうか。

335以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:29:09 ID:qXDhOR0g0

それは自分が知らないだけで、彼らの間には宿っていたのだろうか。

(#℃_°#)「………っ」

口を動かし、何か呟いたようだが、それはここまでは聞こえてこなかった。
ゴブリンが自分達に背を向けて去っていったのを確認すると、自分もまた洞窟へ背を向ける。
依頼達成の報告をフランクリン夫妻へと届けるため、あざ道を帰路へと目指した────

ζ ゝ)「ばい、ばい」


─────

──────────


───────────────


────【リュメ】────

336以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:29:37 ID:qXDhOR0g0

街に入り、人の姿が目に入ると、ロベルトは急にブーンの手を振り払って暴れようとする。
だが、この子の両親の元へ連れていくまでは、決してこの手を離すつもりはない。

手甲に噛り付かれたりもしたが、痛そうに口を開けて泣きそうな顔をするのは、まだまだ子供の証だ。

( ^ω^)「さ……着いたお?」

ζ・ゝ)「………?」

どこか、懐かしいと感じているのかも知れない。
ドアの向こうで灯された明かりに、吸い寄せられるようにフラフラと歩いてゆく。

そこを、自分がノックしてやった。

「………はい!」

ブーンだと思ったのだろう、ドアの向こうで慌しく、こちらへと駆けてくるフランクリン。
がちゃ、とドアが開けられた時の彼の表情は、この時のブーンの脳裏に深く刻み込まれた。

( '_/')「! ブーンさ───」

337以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:30:13 ID:qXDhOR0g0

ζ・ゝ)「………あ」

(°_/°)「─────ん」

( ^ω^)「─────戻ったお、フランクリンさん。
       約束通り、”ロベルト君を連れて”」

その後のフランクリンの歓喜の様子は、凄まじいものだった。
夜分にも関わらず、近隣にも轟くほどの大声で、けたたましく妻を呼びつける。

( ;_/;)「マ……マディィィィーッ!!マディッ!」

ノ|| '_')「何ですか、あなたそんなに………!?」

玄関口に立つ、少しばかり背丈の大きくなった愛息子の姿を目の当たりにした瞬間、
彼女もまた口を手で押さえて、溢れ出す言葉をどうにか抑えとめていたようだ。

言葉をかける間も挟ませず走り出すと、ロベルトの前に膝をつき、その身体を力強く抱きしめた。

ζ>_ゝ)「あうっ!」

ノ|| ;_;)「あぁ……ロベルトッ!私達の、ロベルトなのね!?」

最初、暴れだすかとも思って待機していたが、以外にも母親に抱きとめられ、
その身をだらりと投げ出し、されるがままになっている。

338以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:31:03 ID:qXDhOR0g0

多少苦しそうではあるが、その表情にも次第に変化が見て取れる。

( ;_/;)「……まさか、まさか生きていてくれただなんてッ!」

目頭を押さえて、そこからも大粒の涙が伝うフランクリン。
その、両親ともが号泣している状況に釣られてか、あるいは───

ζ;_ゝ)「あ”ぁぁぁぁッ」

ついにはロベルトも泣き出し始めた、リュメの夜空。
フランクリン親子の泣き声の三重奏が─────響き渡っていった。

( ^ω^)(良かった……本当に、良かったお)

寄り添う三人に踵を返し、邪魔者は消える事としよう。
今夜は2年越しの親子水入らずを、ゆっくりと楽しんで欲しいものだ。

冷たい夜風が、火照った頬を撫で付ける。
心地よい涼しに、はたと星空を見上げてみる。

( ^ω^)(どこへでも繋がってるんだおね……この、空は)

339以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:31:47 ID:qXDhOR0g0

空で光り輝く星たちに、一抹の思いを馳せる。
柄にもなく詩的なフレーズが口から出てくるのは、依頼を無事達成した事に
舞い上がっている自分が、どこかにいるからだろうか。

( ^ω^)(ならブーンも、どこへでも行けるお………どこへでも)

そして彼の足は、今も背後で聞こえる泣き声に振り返る事も無く、再びヴィップへの帰路へと踏み出した。

──────


────────────


──────────────────

(;  ω )「………ッ!!」

(; °ω°)「いっけね!!」

340以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:32:13 ID:qXDhOR0g0

(; °ω°)「成功報酬!!」

(; °ω°)「もらってねぇおぉぉぉぉぉぉッ!!」


そして、すぐにばつの悪そうに引き返す事となった────

──────────────────


────────────


──────

それから、宿泊を促すフランクリンから成功報酬だけを受け取ると、泊めてもらう事は遠慮しておいた。
代わりに夫妻から、幾度もの感謝の言葉と、力強い握手を何度も交わし、この胸はそれだけで満足だ。

( ^ω^)「親子水入らずを、楽しんで欲しいお」

それだけ告げ、最後に泣き疲れて眠ったロベルトの寝顔を見て、安心して再び帰路へと発った。

341以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:33:02 ID:qXDhOR0g0

夜分にも関わらず、街を後にするブーンの姿が見えなくなるまで
手を振ってくれていた、フランクリン夫妻の姿が─────印象的であった。


そして、二日後。


────【交易都市ヴィップ 失われた楽園亭】────


(’e’)「───人の言葉を喋るゴブリン、ねぇ」

マスターは知っていたらしい。さすがは、様々な冒険者が集まる宿を切り盛りする店主だ。

ゴブリンの中にも様々な種類が居て、自分が相対したのは、数百匹に一匹の割合で
人間並みの知能を兼ね備えた、”ゴブリンシャーマン”というものらしい。
それならば、ロベルトを育てて仲間へ引き入れようとしていた行動にも、納得がいく。

( ^ω^)「いやぁ、もうびっくりしたお!ま、ブーンの敵じゃあなかったけどお、ね」

(’e’)「ま、所詮ゴブリンだしな」

342以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:33:43 ID:qXDhOR0g0

(;^ω^)「いやいや、それが10匹ものゴブリンに囲まれて……聞くも苦労、
       語るも苦労のドラマがそこにはあったんだお!」

(’e’)「おーおー、そりゃすごい。ま……俺の店の顔馴染みにゃあ、オーガ3匹に
     囲まれて、剣一本で全部倒しちまった奴もいるみたいだけどな」

(;^ω^)「オーガって、あの……人鬼オーガかお!?そりゃ、バケモンだお?」

(’e’)「こないだ俺の店に来てた……あのジョルジュって奴知ってるだろ。あいつさ」

(;^ω^)「あの人……そんなに凄い剣士だったのかお」

(’e’)「ま……勝てない相手に喧嘩を売るのが、あいつの生き方だからな」

ヴィップに帰ってくるなり、世話になったマスターに冒険談を聞かせたくて、
いの一番にカウンター席へと座り込んだ。淡々とあしらわれるような返し方をされ続けているが、
時折、少しだけマスターも嬉しそうな笑みを浮かべてくれるのが、ありがたかった。

(’e’)「ま、そんな事よりも……」

( ^ω^)「?」

343以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:34:08 ID:qXDhOR0g0

エールグラスを磨く手を止め、じっと顔を覗き込んできたマスター。

(’e’)「お前さん……こないだよりも、いい顔になったな」

(*^ω^)「止すお、マスター」

(’e’)「本心さ。一皮向けた、いい顔になったぜ?お前さん」

そう言って、背を向けたマスターは樽からエールをグラスへと注ぐ。
注ぎ終わったあと、再びブーンの方へと振り返ると、目の前へと置いた。

(’e’)「オゴリだ。こいつは俺からの、門出の祝いさ」

( ^ω^)「! ………ありがたく、頂きますだお!」

そのやりとりを見ていた一人の酔っ払いが、ブーンの首元へと手を回して、後ろから組み付いてきた。
まだ昼間だというのに赤ら顔で、何献酒を平らげたのか、吐く息は思わず顔を背けたくなるほどだ。

爪*'ー`)「よぉぉぉぉッ!奇跡の再会だなッ、友よぉぉぉぉッ!」

(;^ω^)「な……なッ」

(’e’)「うるせーぞ、フォックス!」

344以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:35:39 ID:qXDhOR0g0

爪*'ー`)「んぅぅ、おカタい事言いなさんなよぉマスターぁん」

(;^ω^)「……フォックス。楽園亭に、来てたのかお?」

(’e’)「ん?お前さん、こいつと知り合いか?」

(;^ω^)「ん、まぁ……知り合いには違いないけどお」

(’e’)「お前さんが出立してから、入れ違いでリュメに来たんだよ、こいつは。
     店の客の迷惑も考えねぇで女は引っ掛けようとするし、酒は底なしだし、全くかなわんよ」

爪*'ー`)「んむむ………デレちゅわ~ん!」

ζ(゚ー゚*;ζ「あの……フォックスさん……他のお客さんの迷惑になるんで……」

(’e’#)「てめぇッ!ウチの看板娘に手ぇ出しやがったら、叩き出すぞ!」

爪*'ー`)「……ちぇっ、分かったよ」

爪*'ー`)(今度あのハゲ親父に内緒でデートしようぜ、デレちゃん)

ζ(゚ー゚*;ζ「いや……あの……あはは」

(’e’#)「聞こえてんだぞ……」

345以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:36:11 ID:qXDhOR0g0

苦笑いで何を逃れた店娘は、客に呼ばれたのを良いきっかけに、卓へと駆けていった。
その後ろ姿に鼻の下を伸ばしていたフォックスが、またブーンのもとへと歩み寄る。

爪*'ー`)「依頼さ、達成したんだってな。おめでとさん」

( ^ω^)「大変だったけど、何とかこなせたお」

爪*'ー`)「……実はさ、冒険者になる!とは思ったけど、俺そういうのぜーんぜんわかんねぇんだわ」

( ^ω^)「ブーンも、昔見た手引き書を曖昧に覚えている程度だお?」

爪*'ー`)「注意力とか洞察力、あとは手先の器用さには自信があるんだけどさぁ」

爪*'ー`)「どうにも、俺みたいなタイプが一人で一匹狼気取るのは、ちっとキツイんだわ」

( ^ω^)「確かに……ブーンもゴブリン相手とは言え、一人っきりは辛かったお」

爪*'ー`)「そこで、だ……パーティー組まないか?この、俺とだ」

( ^ω^)「パーティー?」

爪*'ー`)「あぁ、損はさせねぇさ。ブーン&フォックス!あいつらがあの伝説の───!」

爪*'ー`)「……なーんつって言われるようになるかも、知んねーだろ?」

フォックスからの突然の申し出、頭に手を置いて、ブーンはじっくりと考えてみた。

346以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:36:42 ID:qXDhOR0g0

危険な旅は、人数が多いほうが良い。それも、信用できる人間ならなおさら有難い。
フォックスの人間性については、ここまでで数度しか会話を交わしていないが、
ある程度自分に近い感じを受け、受け入れやすい人柄だと思っていた。

依頼の報酬は減るが、背中を任せられる相棒が出来るのは、頼もしい事だった。

( ^ω^)(ずっと一人って訳にも行かないし、良い機会……かも知れないお)

爪*'ー`)「……どうだ?」

( ^ω^)「その申し出、喜んで引き受けるお」

爪*'ー`)「……よっしゃ!今日から俺とお前は仲間だ、ブーン!」

(’e’)「おーおー、こんな奴と組んじまっていいのか?」

( ^ω^)「ブーンの目に、狂いはない!……と信じたいお」

爪*'ー`)「まーまー、損はさせねぇってば。あ、改めて自己紹介しとくぜ」

爪*'ー`)「”グレイ=フォックス”、生まれはどこだか忘れちまった。
     が、当分はヴィップを根城にする。楽園亭に骨を埋める覚悟だ、よろしくな」

(’e’)(おいおい……勘弁してくれ)

347以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:37:09 ID:qXDhOR0g0

( ^ω^)「”ブーン=フリオニール”、生まれはサルダの村だお。
       まだまだ駆け出しだけど、こっちこそよろしくだお!」

無事依頼を達成したブーンの元へ現れた、フォックス。
偶然にも再会した二人は、旅を共にする事となった。

酒を酌み交わし始める二人の姿を見ながら、これまでよりも煩い店内になってしまった
失われた楽園亭のマスターは、頬杖をついて厄介そうにため息をついていた。

だがこの翌日、さらにこの店を騒がしくしてしまう来訪者が訪れる事を、マスターはまだ知らない。

─────


──────────

───────────────

(´・ω・`)「───見えてきたね、ヴィップが」

ξ;゚⊿゚)ξ「や、やっと……柔らかいベッドの上で寝られるんだわ……」

348以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 04:38:55 ID:qXDhOR0g0

   ( ^ω^)ヴィップワースのようです

             第1話

         「名のあるゴブリン」


             ─了─


戻る  <第0話(5) 「行く手の空は、灰色で」 第2話 「栄枯と盛衰」>